91話 爺言葉は強者
マーマンが次々と湖から飛び出してきて襲いかかってくる。
櫓達の実力には劣るCランクの魔物であるが、四人は苦戦を強いられていた。
「ちっ、数が多すぎるな。」
倒しても倒しても次々と湖から新しいマーマンが出てくるのでキリがない。
櫓達の周りは倒したマーマンで地面が埋まってきて足の踏み場も無くなってきた。
「各自広範囲の技を使って一気に片付けろ、マーマンの数だって有限のはずだ、放電!」
櫓の周りにいるマーマンが生死関係なく高電圧の雷によって消し炭になっていく。
「炎舞!」
ネオンがその場で踊る様に手を動かすと、その手の軌跡に次々と拳大の炎が現れる。
炎はネオンの周りをふわふわと漂っている。
「いけっ!」
ネオンが軽く炎を指で押してやると、その方向に漂っていただけの炎が打ち出されていく。
打ち出された炎は次々とマーマンに命中して、全身黒焦げにしていく。
「我が魔力を糧とし、全てを断ち切る風の一撃を。神断の刃!」
シルヴィーが魔法を唱え終えると槍の先端部分が風に包まれる。
槍を振りかぶって横薙ぎに振るうと風の斬撃が飛んでいき、斬撃の軌道上にいたマーマンは皆等しく身体を真っ二つにされて絶命していった。
「気持ち悪い・・・。」
ミズナのスキル水帝により腕に水を纏っている。
その腕を振るうたびに水の斬撃が飛んでいきマーマン達を切り裂いていく。
シルヴィーほどの威力はなく数体切り裂く程度ではあるが、何回も打っているので数は相当数倒している。
「これで結構減ったか。」
湖から出てくるマーマンはまだいるが最初と比べて明らかに数が減ってきている。
「マーマンハ、フメツナリ!」
魔人である巨大マーマンが叫ぶと、身体の鱗が次々と剥がれ落ちていく。
そしてその剥がれた鱗が次々とマーマンへと変わっていく。
剥がれた部分はゆっくりではあるが元に戻ってきている。
「異常な数のマーマンはそう言う理由か。」
「本体を叩かないと幾らでも増やされてしまいますよ櫓様。」
「分かってる、俺が奴を殺るから雑魚は任せたぞ。」
櫓の今いる場所から巨大マーマンまで、地上はマーマンで埋め尽くされている。
なので上から攻めようと足に力を入れて思い切りジャンプする。
「トブコトモデキナイニンゲンガ、クウチュウデタタカウトハ、オロカナコトダ。」
巨大マーマンは湖の水を操り、渦巻いた水を二つ空中にいる櫓目掛けて攻撃を仕掛けてくる。
「身動きは取れなくても攻撃手段はあるから問題ない、拡散雷撃弾!」
櫓が両手を突き出して放った雷の球体が幾筋もの雷へと分かれて飛んでいく。
向かってきていた水の攻撃は分かれた雷によって打ち破られ、他の雷も巨大マーマン目掛けて飛んでいく。
「グウウウッ!?」
その巨体に次々と命中してダメージを与えてはいるが、仕留め切れるほどではない。
それでもかなりのダメージなのか身動きがかなり鈍った。
「一気に決めるぞ、ミズナ援護を頼む。」
櫓はボックスリングから霊刀を取り出す。
空中で居合の構えを取り、霊刀は雷を纏っていく。
「サセルカアアア!!!」
それを見てヤバい攻撃が来ると悟ったのか、巨大マーマンは操水のスキルを使い湖の水で壁を形成しようとする。
しかしそれをマーマンと戦闘をこなしながら、ミズナの操った水に上から押さえ込まれ邪魔をされている。
「天剣十一式・霜月!」
櫓の刀が鞘から抜き放たれる。
刀から放たれた雷の斬撃が巨大マーマンを真っ二つに切り裂き断末魔が響く。
そのはずだったのだが、櫓は居合いをしただけで斬撃が出なかった。
刀が纏っていた雷も消えてしまっている。
「は?何で攻撃が出ないんだ?」
櫓は居合いを抜き放った状態で何が起きたか分からず固まっている。
「横からすまんのお人間、そいつを殺されるわけにはいかんのだ。」
声は櫓の後ろから聞こえた。
「放電!」
空中では咄嗟の回避行動は難しい。
なので振り向くよりも全方位攻撃をすれば後ろの敵の迎撃になるだろうと攻撃を選択する。
しかし櫓の身体からは雷が出ない。
「無駄なことじゃて。」
「がはっ!?」
櫓の背中に重い痛みが走り、空中から地面に叩きつけられる。
ドゴオオオンと言う音を響かせて地面に激突する。
「一番厄介そうなのはワシが抑えといてやる、残りの三人は任せられるかのお?」
「モンダイナイ、コイツラヲコロシタラ、ツギハソイツヲコロス、コノイタミヲバイニシテカエシテヤル。」
巨大マーマンはネオン達三人の方を向き、新たにマーマンを作り出して戦力を増やしていく。
「櫓様大丈夫ですか!?」
櫓が叩きつけられた地面に向かってネオンが問いかける。
土煙が盛大に舞っていて安否が分からないのだ。
「なんとか無事だが、マーマンの方は加勢出来そうもない、そっちは任せるぞ。」
櫓が地面から起き上がりながら言う。
叩きつけられる寸前に身体を魔装して防御力を高めたので、少し身体が痛む程度で済んでいる。
「ほっほっほ、頑丈な人間じゃて。」
空中で奇襲を仕掛けてきた相手を砂煙が晴れたことにより視認できたが、その姿に驚き思わず叫んでしまった。
「タコ!?」
櫓の前には背丈が二メートルほどのタコが、六本の足で立ち二本の足で腕組みをして立っていた。
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