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うっかり女神に邪神討伐頼まれた  作者: 神楽坂 佑
1章 異世界転生
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86話 日本人なら米が食いたい

三人は盗賊との戦いを終えたので、洞窟に戻ってきていた。


「なんか良い匂いが洞窟の中から漂ってきてますね。」


ネオンがクンクンと鼻を動かして匂いを嗅いでいる。

シルヴィーやミズナも嗅いでみるが匂いはしない。

まだ匂いの元まで遠いため、優れた五感を持つ獣人のネオンだからこそ気づけたのだ。


「櫓さんが料理していらっしゃるのでしょうか?」

「ご飯・・・!」


ミズナは目をキラキラとさせ、足取りが軽くなった。

その分ミズナに乱暴に引きずられる盗賊達。

ミズナは自分が倒した二人の盗賊以外にも、ネオンとシルヴィーの合体魔法である炎の竜巻によって倒された盗賊達も纏めて引きずっている。

縄で全員を繋いでいるため、早足になると前後の人同士がぶつかりあって、気絶していなかったら大騒ぎだっただろう。


「ミズナ様、どうやら牢屋とは逆の場所みたいですよ?」


Y字路に来てからネオンが匂いを嗅ぐと、右の牢屋のある方からではなく、盗賊達が騒いでいた左の大部屋から匂いが漂ってきていた。

ネオンの言葉を聞き即座に左の道を進んでいくミズナ。


「帰ってきたか、おつかれ。」


三人に気づいた櫓が声をかけてくる。


「良い匂いのご飯・・・。」


ミズナは櫓が作業している手元から漂う匂いに夢中である。

引きずっていた盗賊達をポイっと捨てて、駆け寄って鍋を覗き込んでいる。

ミズナの捨てた大量の盗賊達を見て、周りの女性達から少し悲鳴が上がった。


「おいミズナ、飯は食わしてやるから牢屋に入れてこい。」

「ご飯ご飯・・・。」


至近距離にも関わらず櫓の声が聞こえないのか、鍋を覗き込んで動かないミズナ。


「櫓様、私達で入れてきますよ。」

「私達の分も用意していただけると助かりますわ。」

「了解、悪いな。」


ネオンとシルヴィーはミズナの捨てた盗賊を一人ずつ拾って、牢屋のある部屋に向かった。

既に倒した盗賊達の武装解除は済ませてあり、縄で縛ってある。

牢屋は捕まえた者の脱走を防ぐためか、中に入っている者の魔力を乱し、魔法やスキルを使えなくする仕掛けがしてあった。

見張りは冒険者の女性パーティーが引き受けてくれたが、その機能があれば脱走は難しいだろう。


「ミズナ、早く食べたければ少し手伝え。そっちで追加の野菜を洗ってるから、水を頼む。」


今度は声が聞こえたらしく、野菜を洗うための水球を空中にいくつも浮かせている。

それを使い捕まっていた女性達が野菜を洗っていく。

なぜ女性達が櫓の料理を手伝っているかと言うと、助けられてばかりで何か自分達にもさせて欲しいと言われ、戦ってる三人の晩ご飯作りをする予定だったのを伝えると、皆率先して手伝ってくれたのだ。


「櫓様、牢屋に入れてきました。」

「知らない了解の様ですが良い匂いですわね。」

「もう少し待ってくれ、本当は時間をかけるともっと美味くなるんだけどな。」


櫓は大きな鍋を掻き混ぜながら言う。

今作っているのはカレーである。

この世界にはない料理の様で、皆どんな料理が出来上がるのかと楽しみにしている。


「本当は米があると良いんだけどな〜。」

「櫓様の作る料理にはよく名前があがりますね。」

「その米と言うのは聞いたこともありませんわね、旅をする中で見つけられると良いですわね。」

「ボックスリングに入れておけば時間経過はしないから、見つけたら一生分買うんだけどな。」

「ご主人まだ・・・?」


ミズナは待ちきれない様に聞いてくる。


「そろそろいいかな、じゃあ各自皿を貰って並んでくれ、カレーを配るから。」


既に麦ご飯が入った皿を大量に用意してある。

それをネオン達三人や手伝いをしていた者達が持って櫓の前に並んでいく。

捕まっていた者達にはパンを与えたが足りなかった様だ。

並んだ者達の皿に順番に具沢山のカレールーをかけていき、全員分配り終えたのを確認して皆で食べる。


「んんん!美味しいですね!」

「少々スパイシーですが、さらに食欲をそそられますわね。」

「パクパクモグモグパクパクモグモグ・・・。」


ネオンとシルヴィーにはいつもの事ながら好評で、ミズナに至っては一言も話さず黙々と食べ続けている。


「お、美味しい!」

「産まれて初めてこんな美味しい料理食べたよ。」

「幸せ〜。」


手伝いをしてくれた者達もかなりの好評の様だ。

作り方を教えて欲しいと言われたので、後で村に帰ったらと言っておいた。

貴重品である調味料類の材料も、育てれば作ることは出来るだろうとスキルで分かっていた。

村でカレーを作ることができれば、拠点の連中にも食べさせてあげることができるし、ちょうど良いと思えた。


「美味いことは美味いが、やはり米がいるな。」


櫓は自分の作ったカレーを食べながら呟いた。

元の世界の料理を再現しようとすると、主食である米がどうしても必要となってくる。

旅の目的は邪神に迫るための魔王についての情報収集だが、また一つ探すことが増えた。

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