82話 盗賊の強者達
ネオンとシルヴィーは洞窟の上に陣取っているが、その高さを遥かに超える炎の竜巻が目の前で荒れ狂っている。
しかし突然炎の竜巻の上のみに滝の様な雨が降ってきて、炎の竜巻は徐々に小さくなり消えてしまった。
「魔法かスキルみたいですね。」
「流石にこれで終わってはもらえない様ですわね。」
「どうしますか?」
「魔法で戦力は幾らか削れたと思いますので、接近戦に移行してはいかがです?」
「了解です、いきましょう。」
二人は洞窟の上から降りて、炎の竜巻が消えた場所に向かう。
炎の竜巻が消えたからか、滝の様な雨は止んでいる。
「手前らか、いきなり魔法ぶっ放してくるとは、随分とご挨拶じゃねーか。」
「危なく火ダルマになる所だったわね。」
「ほう、中々の上者だな。!?」
「高く売れそうっすねボス!!!」
ネオンとシルヴィーの魔法を食らい、盗賊団の殆どの者は火傷や切り傷などの重症で地面に横たわっているが、その中で四人だけ平然と立っている盗賊達がいる。
見たところダメージも対して受けていない様で、二人を品定めする様な視線まで向けてきている。
「あらあら、既に勝ったおつもりですの?お仲間の殆どがやられてしまいましたわよ?」
「こいつらはただの荷物持ちみたいなもんっすよ。雑魚が何人やられようと痛くも痒くもないっす。」
シルヴィーの挑発に対して、本当に何も思っていない様に盗賊の男が話す。
話し方は軽そうだが全く隙がない。
炎の竜巻を食らって無事だっただけあり、他の三人もただならぬ気配といった感じだ。
「それでしたら貴方を倒せば痛手になるでしょうか?」
シルヴィーは腕輪から槍を一つ取り出し、構えながら言う。
「面白い事言うっすね、でも状況見えてるっすか?そっちは二人でこっちは四人っす。正々堂々一人で戦うつもりなんてないっすよ。」
そう言うと後ろから盗賊の女が横に並び武器を構える。
「ネオンさん、貴方には少々荷が重い相手かもしれませんから、下がっていても大丈夫ですわよ?」
「いえ、私も一緒に戦って二対二にしましょう。」
「数の有利を取られる訳ないじゃないっすか。ボス達も含めて全員で潰すっすよ。」
「そちらの二人は参加できないですよ。」
「その様ですわね、私達の仲間が来てくれたみたいですわ。」
盗賊達は辺りを見回しても、ここにいる六人以外誰もいないので、二人が何を言っているのか分かっていない。
しかし二人は、炎の竜巻が巻き起こって焼け野原になったこの場所に、不自然に水溜りができていることに気づいた。
そしてその水溜りから水がボコボコと噴水の様に噴き出し、人の高さほどまでなると、噴き出すのが止まりバシャーンと水が地面に落ちて、そこには一人の女の子が立っていた。
「助っ人参上・・・。」
ミズナは手を突き出しピースサインをしながら言った。
「なんすか、このふざけた登場をしてきた人。」
「お前達はそこの二人を相手していろ。」
「ボス、お供します。」
ネオンとシルヴィーの二人と相対している男女は気付かなかった様だが、後ろで見ていた盗賊団のボスともう一人の男はミズナの危険性に気付いた様である。
「ミズナさん、正直助かりましたわ。」
「ご主人が一人で大丈夫だから行ってこいって言った・・・。」
「櫓様にも感謝ですね。」
「ネオンとシルヴィーはそっちの二人の相手する・・・。こっちは気にしなくていい・・・。」
盗賊団のトップと対峙しているにも関わらず、いつもと変わらず眠そうに欠伸をしているミズナ。
しかし盗賊の二人は油断なく構えている。
「まさか精霊と戦うことになろうとはな。」
「っ!?ただの人間ではないと思いましたが、精霊なのですか?」
「間違いない、昔一度だけ精霊を見たことがあったが、雰囲気が似ている。」
「その通り、ミズナは水の精霊・・・。人の身で精霊に勝てるとは思わない方がいい・・・。」
ミズナは負けるとは微塵も思っていない。
唯一人間でサシの勝負をして自分に勝てるのは、櫓か神のスキルを所有している者だけだと思っている。
精霊は人間と比べて身体能力の差はそれほどないが、魔力量と魔法適性がずば抜けている。
精霊が契約する対象のエルフと比べても圧倒的であり、魔法で勝負したとしてもエルフ側に勝ち筋はほぼ無いのである。
精霊は魔法の適性が高いと言う理由で契約しているだけで、ただの気まぐれなのだ。
「勝てるのですかボス?」
「分からん、だが昔みた精霊より力は劣っている様だ。」
「聞き捨てならない、ご主人と契約したミズナはどの精霊よりも強い・・・。」
ムッとした様に答えるミズナ。
契約した精霊は主人に魔力を貰うことができるのと、主人のスキルの中で自分に適性がある物の権能を得る事ができるため、普通の者よりも多く魔力を所持し、貴重なスキルを所持している櫓と組んだミズナは、どの契約した精霊にも負けないと思っているのだ。
ミズナはまだ契約して間もないので、雷帝、神眼、錬金術の名人のスキルが自分に適性があるかどうか分かっていなかった。
本来自分の持っていないスキルなので使い方もわからない。
なので使えないかどうか暇さえあれば感覚で色々と試しており、先程偶然使えるようになったのである。
「怒った、本気で行く・・・。」
「こちらも全力で行くぞ。」
「分かりましたボス。」
ミズナ達は一触即発の状態だが、ネオンとシルヴィーの方もそろそろ戦いが始まろうとしていた。
「精霊なんて初めて見たっすよ、さっさと片付けてあっちに合流するっす。」
「そうね、幾らで売れるのか考えただけでワクワクするわね。」
盗賊の男女はミズナの事で夢中である。
「舐められててムカつきます。」
「同感ですわ、身の程を教えて差し上げましょう。」
ネオンとシルヴィーは相手の態度が気に入らず、より一層気合いが入った。
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