81話 合体魔法炸裂
「シルヴィー様、作戦とかどうしますか?」
ネオンとシルヴィーの二人は、リーダー格の盗賊達を迎え撃つために洞窟の外に出てきていた。
「まずは洞窟近くに来るまで気づかれない様に隠れていましょう。盗賊達が近くにきてからお互いに大規模な魔法で奇襲すると言いのはいかがですか?」
「魔法ですか、どんなのがいいですかね〜。」
「コロシアムで使った魔法はどうですの?」
「火柱ですか?範囲が狭いのであまり倒せないと思いますよ?それに威力だけはあるので殺してしまうかもしれません。」
ネオンがコロシアムのトーナメント決勝戦で使用した火柱は、火が地面から空に向けて噴出する様な魔法である。
高さはかなりの範囲があるが、横幅は数人入る程度なので、あまり広範囲の敵を倒すのに向いてはいない。
「問題ありませんわ。私の魔法で威力を分散させ、尚且つ広範囲攻撃になる様にいたしますから。」
魔法は他の魔法と組み合わせることによって、威力が格段に向上したりする。
またその逆で組み合わせが悪かったり、どちらかの魔法が弱く相乗効果を発揮しなければ、威力が変わらなかったり下がったりと言ったこともある。
シルヴィーはネオンの魔法を自分の魔法と組み合わせて、広範囲攻撃魔法にしようとしているのだ。
無論ぶっつけ本番で成功させることは難しいことだが、シルヴィーは櫓やネオンより長く戦闘に携わっているため経験で分かるのだ。
「それなら気負わずに打ってみます!」
「それがいいですわ、それに失敗してしまい洞窟に逃げられましても、櫓さんやミズナさんがいますから。」
「たしかにあの二人が盗賊に負ける姿は想像出来ないですね。」
ハハハと乾いた笑いをもらすネオン。
出会った当時こそ戦闘の経験がなく、素人同然だったネオンだが、櫓やシルヴィーと出会ってから超絶ハードな訓練を付けてもらった結果、今ではBランク冒険者と渡り合えるほどの力を身につけてきている。
そんな訓練を受けてきたネオンだからこそ、櫓やシルヴィー、ミズナが自分とは違う次元の強さを持っていると感じてしまう。
「身を潜める位置を決めますか。」
「洞窟の上の位置を抑えたいですわね。」
「ならあの辺はどうですか?木や茂みで見つかりづらいですよ。それにどの方角から来ても確認出来そうです。」
「ではそちらで待つと致しましょう。」
ネオンとシルヴィーは洞窟の入り口から上に移動する。
降りるのは簡単だが、登るのは時間がかかる様な構造なので、たとえ見つかったとしても接近されにくいだろう。
二人で後退して見張り、日が段々と落ちてきて辺りが暗くなってきた頃、遠くから笑い声が聞こえ、松明の明かりが見える。
「来ましたかね?」
「まだ分かりませんわ、確証を得られるまで攻撃は無しですわ。」
「でも商人を殺して金や魔法道具が大量に手に入ったって言ってますよ?手にも盗品らしき物を持ってますし。それにしても許せませんね。」
ネオンが聞こえたままの事を話すとシルヴィーが驚いた顔をする。
「こんなに離れていますのに分かりますの?」
現在ネオンとシルヴィーがいる位置から、こちらに向けて歩いてきている集団の位置まで一キロ近くある。
シルヴィーには笑い声と言っても本当に微かに聞こえる程度で、内容は全く分からない。
そして明かりが見えると言っても、豆粒の様な大きさである。
それをネオンは話の内容を聞き取り、何をしているかまで見えると言うのだ。
「はい、って普通は見えないですよね。」
ネオンは自分が見えているのだからシルヴィーも見えていると思っていた。
しかし獣人と人間では五感の鋭さがまるで違う。
「この距離で情報を得られるなんて、やはり獣人は素晴らしいですわ。」
貴族には獣人を差別している者が多い。
そんな中でシルヴィーは差別どころか、獣人を好んでいる珍しい部類だ。
「お役に立てたなら良かったです!」
「相手にも獣人はおりますの?」
「いえ、人間ばかりですね。特に捕まってしまった人とかもいないみたいですよ。」
「でしたら奇襲攻撃を致しましょう、ネオンさんの攻撃射程内に入ったら教えてくださいませ。」
「分かりました、あと少しです。」
盗賊達は攻撃されるとは思ってもおらず戦利品を見せ合い、笑い合って洞窟に向けて歩いてきている。
「間合いに入りました。」
「分かりましたわ、直接当てず近くに魔法を打っていただけますか?」
「了解です。」
ネオンは現象をイメージしながら詠唱し始め、シルヴィーも合わせる様に共に詠唱する。
「我が魔力を糧とし、空を衝き、敵を焼き尽くせ。火柱!」
「我が魔力を糧とし、全てを薙ぎ払い吹き飛ばす、大いなる自然の力を顕現す。暴嵐・大竜巻!」
ネオンの魔法が発動し、盗賊達の近くに地面から噴き出す火の柱が出来上がる。
盗賊達は突如近くに現れた火柱に驚き固まっている。
そしてシルヴィーの魔法により、その火柱の近くに大きな竜巻が巻き起こる。
その竜巻は近くにある火柱を巻き込み、昼間と見紛うほどの灯りで辺りを照らす赤き炎の竜巻となり、近くにある木や茂みなどを燃やし切り裂き荒れ狂っている。
当然炎の竜巻が発生した近くにいる盗賊が無事で済むはずもなく、悲鳴が幾つもあがり炎の竜巻に巻き込まれて行っている。
「紅炎・大竜巻と言った所でしょうか。」
「凄まじい魔法が出来ちゃいましたね。」
シルヴィーは魔法の出来上がりに満足げであるが、ネオンは目の前に広がる自然破壊現象に苦笑いを浮かべていた。
閲覧ありがとうございます。
ブックマークやポイント評価よろしければお願いいたします。




