26話 魔物と人の融合
発見した冒険者の死体に向けて進んでいたが、その途中異常な光景を目にしていた。
「これは・・・魔物の死体ですよね?あっちにもそっちにも、すごい量ですね。」
「しかもその全てが干からびているか。冒険者達と同じ原因だろうな。」
どこに目をやっても視界に入ってくるほど色々な場所に魔物の死体が横たわっている。
それを目にしながら冒険者達のもとに着く。
櫓は既に見ていたからわかっていたが、魔物の死体から察していてもネオンは、その異常な状態に戸惑っていた。
(俺はこんなにグロ耐性があった方だったか?薄々気づいていたが感覚的な部分も多少は弄られてるみたいだな。まあ元の世界での感覚だったならこちらの世界でやっていくのは中々厳しいだろうけどな。常に死と隣り合わせのこの世界では。)
冒険者の死体を見ながら考え事をしているとネオンが辺りを見回していた。
「どうした敵か?」
「いえ、Eランクが三人ずつ、Dランクが五人、Cランクが四人と聞いていましたので、近くにいないのかなと思いまして。」
「近くに見当たらないとするとこことは別の場所にいる可能性が高いな。しかしここの人数を見ると生きてはいないだろう。」
ここにある冒険者の死体は四つ。
Dランクが四人もしくはEランクパーティ同士合わせて四人の可能性もあったが、今回のパーティの中で魔法使いはCランクパーティ所属の者のみ。
そしてここには杖が落ちていた。
「別の場所の探索をしますか?」
「原因を見つけないことには話にならんからな。だがCランクパーティがやられるほどだ気を抜くなよ。」
「はい。」
再び気合いを入れ直して探索を開始する。
一時間ほどして最初の場所から少し離れたところに六人分の死体が、そして岩場の中腹あたりまで登ったところで五人の死体を見つけた。
「やはり無事な者は一人もいなかったか。」
「人どころか魔物も死体以外見ていませんね、どうしましょう。」
「うーん、原因が分からないからなんともしようが・・・。」
「・・・ァァァア・・・。」
「今の声聞こえたか?」
「はい、あっちの方です。」
「行くぞ。」
話していると離れた場所から小さいが断末魔のようなものが聞こえてきた。
声を聞いた瞬間その方向に二人は走り出していた。
その声のした場所にたどり着くと、ドサッと言う地面に魔物が落ちる音が聞こえる。
そしてその近くには後ろ姿だが人の様な者が立っていた。
「そこに落ちている干からびた魔物の死体、お前が冒険者達を殺したやつだな。」
櫓の声が聞こえて振り向く。
その姿は人の様だったが、振り向いた顔や所々破けた服から覗く身体は今まで見てきた死体同様に干からびていた。
「アアア、ノドガカワイタ。カワイテカワイテカワイテカワイテ、ショウガネエ。スイブンヲスイトッテモ、ウルオワネエ。」
「櫓様こいつは一体。」
「人でも魔物でもない、こいつは魔人だ。」
「っ!?」
櫓は調査の魔眼により相手の情報を見ていた。
名前 ???
種族 魔人
年齢 ???
スキル 操砂 再生
状態 融合
魔人のスキルを把握してネオンにもそれを伝える。
櫓は魔人に出会うのは初めてだがその存在は知っていた。
この二週間ただ魔物を討伐することだけをして過ごしてきたわけではなかった。
櫓はこちらの世界の字を書けないならまだしも、読むこともできないのではこれから不便だろうと考え、櫓の持つ三つのスキルの一つ錬金術の名人を使い翻訳眼鏡を作っていた。
これはかけているだけで知らない文字が自分のわかる文字に見えるという物であった。
これをつけたことによりロジックにあった図書館や購入した本などを櫓も読むことができた。
その読んだ本の中には魔物に関するものもあって、女神カタリナから聞いた話と合わせると以下の様になる。
・邪神は魔王を生み出すことができる。
・魔王は魔物を生み出すことができる。
・魔物は魔力の多い場所で自然発生する。
・長く生きた魔物や魔王は、上位の個体に進化したりスキルを得ることがある。
・長く生きた魔物や魔王は、知恵を得て人の言葉を話すことができることがある。
・一部の魔物は融合というスキルを所持していて、このスキルは自らの身体を放棄し、人の死体に精神を移し、魔人と言う種族になることができる。
・魔人は元の魔物のスキルや見た目などの特徴を受け継ぐが、元の魔物の強さに関係なく最低Bランクの強さを持つ。
上記のことで既に魔人については知っていた。
そして敵が魔人であるならばネオンは実力的に厳しい。
「櫓様どういたしますか?私では戦力になれそうにありません。」
「放置してギルドに報告に行っている間に移動されたらまた被害が出ちまう。攻撃が通じるか少しやってみるから下がっていてくれ。」
「わかりました、気をつけてください。」
「ドチラモ、ニガサナイヨ。スイブンヲヨコセェ。」
魔人が手を地面につくと三メートルほどの砂の巨人がネオンの後方に現れる。
退路が塞がれネオンも剣を抜く。
「ちっ、ネオン悪いが後ろの巨人の足止めを頼む。」
「お任せください。」
櫓はボックスリングから刀を出し魔人に向けて、ネオンは砂の巨人に向けて瞬時に距離を詰める。
「天剣一式・睦月!」
「天剣二式・如月!」
櫓の放った睦月により魔人はから竹割りに真っ二つに、ネオンの如月により巨人は両足を切断され身体を支えられず前のめりに倒れる。
「・・・やりましたか?」
「ネオンその言葉は・・っ!?真横に飛べ!」
櫓がいい終わる前にネオンに回避行動を叫んで促しつつ、自分も回避する。
二人が少し前までいた場所に砂の塊の様な物がものすごい勢いで飛んできて、地面に穴を穿っていく。
飛んできた方向を見ると櫓が切ったはずの魔人が元の姿に戻っており、砂の巨人も足があり立っていた。
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