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うっかり女神に邪神討伐頼まれた  作者: 神楽坂 佑
1章 異世界転生
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76話 無償依頼は御法度

毒などの警戒をしていたのだろうが、女の子が既に食べてしまったのと、空腹には勝てなかったのか、親も櫓から串焼きを受け取り女の子と同じくその美味しさに夢中になる。

他の家から幾つも視線を感じるが、まだ様子見をしている様だ。


「美味かったか?」

「うん、お兄ちゃんありがとう!」


女の子の頭を撫でてやると満面の笑みでお礼を言ってくる。


「ご馳走様でした。あの、お肉を頂いた後につかぬ事をお伺いしますが、あなた方は?」

「自己紹介がまだだったな。俺は櫓、冒険者をしている、後ろの三人も俺の仲間だ。」


親指で後ろを指して説明しながら、ギルドカードを見せておく。

後ろではネオンとシルヴィーが櫓の代わりに串焼きを焼いて、女の子に食べさせてあげている。

ミズナはその横で摘み食いをしていた。


「冒険者の方でしたか。」


あからさまにホッとしている様だ。


「何をそんなに警戒しているんだ?」

「すみません、また盗賊が来たのかと皆怯えてしまっていたのです。」

「この辺りには盗賊が出るのか?」

「はい、二日前にも村に入ってきて好き放題されてしまいまして。」


櫓が女の子の親から聞き込みをすると、始めて盗賊がやって来たのは四日前。

いきなり村の中に武器を持って入ってきて、畑を荒らしたり食料や水を脅して奪い去ったりされてしまった。

そして二日前にも盗賊は現れ、今度は金目な物や村の若い女を奪い取られたらしい。

奪われない様に立ち向かった者も何人かいたが、返り討ちにあい、死んだ者はいなかったが重症らしいのでポーションを幾つか渡しておく。

櫓が女の子の親から事情を聞いている間に、警戒を解くため三人は女の子と一緒に空腹の村人達に串焼きや飲み水を配って回っていた。

飲み水は水の精霊であるミズナが魔法により出した物であり、空中に大きな水玉として浮かせている。

盗賊ではないと分かった村人達は家から出てきて、有り難そうに串焼きや水を受け取っている。


「事情は分かった、そして対処する方法もないのだろう?」

「はい、近くの街である城塞都市に救助を要請しようにも、馬で片道三日はかかってしまいます。それに盗賊達は城塞都市の方角から来たので、行く途中で見つかって殺されてしまうでしょう。」

「わざわざロジックに近い場所に居を構えているのか。」

「本来であれば近くに城塞都市がある事から、盗賊なども住みついたことがなかったのですが、かなりの手練れの様でして、城塞都市から来る商人などを逆に待ち受けているのかもしれません。」

「なるほど、護衛などいても倒せる自信があるか。」


女の子の親と話していると杖をつきながら、白髪の老人が櫓のもとに向かってくる。


「紹介します、こちらはルクトの村長です。村長、こちらは冒険者の櫓さんです。」

「お主がこのパーティのリーダーじゃな?ワシはこのルクトの村で村長をしておる。盗賊のせいで村人皆空腹で苦しんでおったんじゃが、おかげで助かった礼を言う。」


櫓に向けて頭を下げてくる村長。

村人達は皆等しくやつれていたので、もう少しで餓死などもあり得たのだろう、村長だけでなく村人達も口々に感謝の言葉を述べている。


「気にしなくて良い、それより助かる手立てが無いんだろう?手を貸そうか?」

「有難い申し出じゃが、我々には君達を雇う余裕がないのじゃ。既に金品は盗まれてしまったからのう。」

「ふむ。」


ここで無償で手を貸してやると言うのは簡単だ。

しかし仲間内でなら構わないが、見ず知らずの者に対して冒険者が無償で手助けするのは同業者からはあまり良い目で見られない。

無償で手を貸してしまうと、助けられた側がその次からも無償で他の冒険者に対して助けを求めたり、無償で助けてくれる冒険者と認識され、様々な者に無償で依頼をされたりしてしまうためだ。

あの人は無償で助けたのに何故私は無償で助けてくれないのか、などのトラブルが過去にも起こったりもしていた。

なので無償ではなく、尚且つ村側から報酬を出せる案を提示する。


「依頼料は後払いで構わない。それも金ではなくポーションの材料となる薬草を育てて貰えればそれでいい。」

「薬草?本当にそんなことで良いのか?」


ポーションの材料となる薬草だが、ポーションへの加工方法が大変なだけであって、薬草の栽培自体はそう難しいことではない。

そして拠点には様々な魔法道具を用意してあるので、ポーションへの加工自体はそこまで大変ではなかった。

櫓は薬草を作らせ、拠点に提供してもらおうと考えていた。

もちろん拠点の地下にも薬草を栽培出来るように畑を作ったが、広くはないので沢山育てられなくて、さらに地下で陽の光が当たらないため成長が遅い。

ルクトの村ならば畑を増やすことも出来るだろうから、ここで作って貰えれば材料費がかなり浮いて儲けれるのだ。


「ああ、どうだ?悪い話ではないだろう?」

「盗賊はかなり腕が立つ様じゃ、それでも引き受けてくれるのか?」


櫓達のパーティは全員見た目は若い子供のパーティである。

唯一の男である櫓も、武器など身に付けておらず、身長も平均的で筋骨隆々と言うわけでもなく、見た目からはとても強そうには見えないため、村長が心配しても仕方がない。


「盗賊程度なら問題ないだろう。」


櫓も一般人からは見た目で強そうなどとは思われないことは承知の上なので、安心させる様に尊大な態度をとりながら言う。


「ならば頼む、連れ去られた村人を助け、盗賊を倒してくれ。薬草などで済むのなら幾らでも払う。」


村長が再び頭を下げてくる。


「交渉成立だな。」


櫓は任せろとばかりに右手を差し出す。

村長も頭を下げながらその手を取るのだった。

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