70話 櫓商会開店
「新しい仲間のミズナだ、仲良くしてやってくれ。」
「水の精霊のミズナ・・・。ご主人に仕える事になった、よろしく・・・。」
拠点に戻った二人は全員を集め、ミズナのことを紹介する。
精霊を連れて戻ってきたので大人達には驚かれ、どう言った経緯なのか質問攻めにあった。
子供達はミズナに興味津々で、話しかけたり触ったり飛びついたりと大騒ぎである。
流石に櫓の仲間である子供達に手をあげたりはしなかったが、相手をするのは面倒らしく、櫓の左腕に付けられている腕輪に逃げた。
子供達は残念がっていたが、本来精霊は人間とあまり親しくすることは無いようなので、無理強いせずそのままにしておく事にした。
「話し合いとかは済んだか?」
「はい、ですので後は出発する日を待つだけですわね。」
櫓達が旅立つのは拠点の商会がある程度機能したらと言う事になっていた。
商品は既に順調に出来上がってきており、在庫も少しずつだが溜まってきているので、そろそろ始めてもいいかと言ったところである。
「なら今日の午後から始めるとするか。問題ないか支配人?」
「ううう、櫓様その呼び方やめて下さい〜。」
「と言っても俺達は旅に出て、商会は預けるんだから、纏め役は必要だろ?」
「私よりも適任がいるかもしれないですけどね。」
「元々皆の纏め役なんだから丁度いいだろう。それにサリアなら安心して任せられる、頼んだぞ。」
「が、頑張ります。」
事前に拠点となる櫓商会は、旅に出て運営できないため、サリアに全権限を委ねている。
頼んだ時には私には無理ですと拒まれたが、奴隷達の纏め役だった彼女ならしっかりと運営していってくれるだろうと思えた。
それにサリアはスキルを一つも所持していないにもかかわらず、かなり頭が良く、算術スキルを取った奴隷達に指導などもしていた。
「何かあったらサポートしてやってくれ看板娘。」
そう言ってマヤの頭を撫でる。
マヤは正に看板娘と言っても良いくらい愛くるしい。
買い物などに一緒に連れて行くと、店の人がマヤによくおまけしてくれたりもするくらいだ。
「うん、マヤもいっぱい手伝うから頑張ろうねサリアお姉ちゃん!」
マヤは子供達の纏め役と言った存在であり、子供ながらにしっかりしている。
櫓達が元々旅立つ予定だったと言う話をした時、離れたくない連れて行ってと一番駄々をこねたのがマヤだったが、危険な旅に連れて行くことはできない。
たまには帰ってくると言う約束をする事でなんとか納得してもらった。
「それで?午後からいけるのか?」
「問題ないと思います。」
サリアの了承を得て、全員に午後から商会を始める事を言い渡す。
接客や会計などをする店員達は皆制服に着替えに行った。
店員は女性陣で揃え、商会の店員用の服装はメイド服の様な可愛い感じにした。
取り敢えず商品がいくら良くても、店に入ってもらえなければ意味がないので、見た目を良くした結果だ。
拠点に残る傭兵団や戦い方を教えてもらい拠点や店員の護衛をする奴隷達には、午後から商会を開く事を知り合いなどに宣伝してもらう。
旅立つ面々は手伝わず観察するのみだ。
各々準備しているとあっという間に午後になり、お客さんが何人か商会に入ってくる。
「「「いらっしゃいませ!」」」
店員の女性達が元気に挨拶をしている。
挨拶はサリアが徹底して叩き込んでいたので、文句なしである。
客は商人、冒険者、一般人と様々である。
冒険者はポーションを、一般人は日用品の魔法道具などを購入していく。
商品作りの設備投資にかなり金をかけたので、代わりに商品は普通よりも安く作れていた。
なので同じ商品でも他の商会などよりも安く販売出来ていたので、売れ行きも悪くない。
商品が順調に捌かれたいくので、裏では奴隷達が在庫を増やそうと頑張ってくれていた。
そして商人も何人か足を運んでいたが、ポーションや日用品の魔法道具などが目当てではない。
実はそれらに混じって櫓の制作した魔法道具も店頭に並んでいた。
サリアに作り置きしておいた様々な魔法道具を渡し、たまに掘り出し物として店頭に置いてくれと言っておいたのだ。
その情報をグランツを通して商人達に流してもらったため、その魔法道具目当てである。
情報を流してもらった当の本人であるグランツも店に来て、櫓の魔法道具を買っていた。
グランツの事だから後でもっと高く売るのだろう。
「中々順調の様だな。」
「客の入りも売れ行きも悪くないですね。」
「店員の皆さんもうまくやれている様ですわね。」
その後も特に問題はなく、売り上げもかなりあった。
サリアに売り上げは皆の給料、商品の素材、増員、店舗の拡大、情報などの為に使ってくれと頼んでおいた。
給料なんて貰えません、毎日の食事だけで充分ですとサリアは言っていたが、奴隷とはいえ働かせて金が貰えないなどと言うブラック企業にするつもりはないので、売り上げの使用方法最優先事項を給料としておいた。
「これなら商会も上手く回していけるだろう。」
「サリアさんなら何かトラブルが起きても、うまく解決するでしょうし、問題なさそうですわね。」
「では櫓様いよいよ出発ですか?」
「ああ、こんなにロジックに長居する予定じゃなかったからな。明日午後にロジックを出発する事にしよう。」
櫓はネオンの言葉に頷きながら旅立ちの宣言をした。
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