69話 従者ミズナ
「俺としては強い仲間が増えるのはありがたいけど、俺以外にも人間の仲間がいるんだがそれでも良いのか?」
「問題ない・・・。同じ使命を背負う仲間とする・・・。」
「そうか、ならよろしくな。」
櫓も差し出された手を握り返す。
水の精霊と言うだけあって、手はひんやりしている。
「仲間になるけど隷属って奴隷みたいでヤダから消してもいい・・・?」
「消す?そんなことできるのか?」
「できる・・・。」
精霊が何かぶつぶつと呪文の様なものを唱えると、状態の欄にあった隷属の文字が消えた。
「おお、本当に消えてるな。」
「何で分かる・・・?」
「調査の魔眼ってスキルの能力だな。」
説明を受け精霊は櫓の目を見て可愛らしく首を傾げている。
「両目の色が同じなのに魔眼持ってる・・・?」
「正確には神眼ってスキルだけどな。」
「神眼・・・。それ神のスキル・・・。」
神眼と言う言葉を聞いて精霊は目を見開いて、驚いている。
「さっきも言ってたけど神のスキルってなんだ?」
「説明面倒くさい・・・。でも仲間だから仕方ない、特別・・・。」
条件や方法などは知られていないが、スキルとは特定の条件を満たす事により上位のスキルに進化することがある。
スキルによって進化する回数やどのスキルに進化するかなども違ってくる。
同じスキルを持っている者同士でも、お互いに違うスキルに進化することもあれば、違うスキルを持っている者同士で、進化先のスキルが同じになることもある。
そして神のスキルと言うのは、ある特定のスキルの最終進化先の、これ以上進化することのないスキルの名称である。
特徴はスキル名に神の表記があり、能力が普通のスキルとは段違いの性能を誇っている。
櫓の持っている神眼はその神のスキルにあたり、雷帝や、精霊が持っている水帝は神のスキルに進化する可能性があるスキルらしい。
「神のスキルについてはこんな感じ・・・。説明疲れた・・・。」
「へぇ、ってことは既に俺はその神のスキルを持っているわけか。」
「最初から神のスキルを貰えるなんて、カタリナ様に感謝する・・・。」
あのうっかり女神の事だから、神のスキルなどと言う事を忘れていたのではないかと思ってしまう。
そして櫓もそんな凄いスキルとは思わず、単純に使い勝手が良さそうだなくらいで選んだので、ラッキーくらいに思っておく。
「これ受け取る・・・。」
唐突に精霊の手が光りだし、水色の腕輪が現れる。
それを櫓に手渡してきた。
「なんだこの腕輪?」
「それは精霊を従えた証、精霊の腕輪・・・。」
「隷属ではなくなったぞ?」
「言いなりとは違う・・・。助け合う友達みたいな感じ・・・。」
「へぇ、まあありがたく貰っておくか。」
右腕にはボックスリングを付けているので、左腕に取り付ける。
「それは証以外にも色々機能が備わっている・・・。その説明をするからよく聞く・・・。」
・精霊は実体を保つのに魔力を使う。
・実体を保てなくなった時、強制的にその腕輪の中に戻る。
・魔力は自然回復もするが、腕輪の中に入れば櫓から魔力を受け取ることが出来る。
・精霊は魔力の供給さえあれば死ぬことはないので、腕輪の魔力譲渡がある限り何度でも実体で蘇れる。
と言う説明を精霊から受けた。
この腕輪があり、櫓が魔力を与え続ければ、精霊は何度でも復活して戦い続けることが出来るらしい。
「つまりかなり重要な魔法道具ってことか。」
「誰でも使えるわけではないし、複製も面倒だから大事にする・・・。」
「了解。さて、ここでの要はもう終わったし街に戻るか。」
「ここには何しにきた・・・?」
「精霊を召喚するためだ。その精霊とも無事仲間になれたしな。て言うか精霊ってずっと読んでるけど、名前とか無いのか?」
「名前・・・?私は水の精霊・・・。カタリナ様も水の精霊って呼んでた・・・。」
「そういうのじゃなくてもっとこう名前らしいやつ、って言っても分からないか。」
「なら名前つける・・・。」
「俺が?」
精霊はこくこくと頷いている。
こう言う名付けと言うのは経験がないため、パッと良いものが思い浮かばない。
なので元の世界にいた時の漫画やゲームのお気に入りキャラクターの名前を借りようと思いついた。
「ミズナなんてどうだ?」
「ミズナ・・・?」
「ああ、俺の好きなゲームに登場した水魔法が得意なキャラクターなんだけど。」
「ゲーム・・・?キャラクター・・・?よく分からない・・・。でもミズナってのは良い響き、気に入った・・・。」
櫓の提案した名前は気に入ってもらえた様だ。
何度も呟いてはこくこくと頷いている。
「私はなんて呼べば良い・・・?」
「別になんでも良いけど?櫓でいいんじゃないか?」
「一応私は仲間だけど、従者みたいな感じ・・・。だから呼び捨てはやめておく・・・。」
その後呼び名をあれこれ呟いて一番しっくりくるものを探す。
「決めた、ご主人にする・・・。」
「まあなんでも好きなように呼んでくれ。」
「分かった、ご主人改めてよろしく・・・。」
「こちらこそ、じゃあ街に行くか。」
「うん・・・。」
二人はの拠点に帰るためにロジックに向かった。
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