68話 同じ使命を抱く者
精霊から放たれた斬撃はかなり早い。
櫓は突然の攻撃に驚いたがなんとか躱し、その斬撃はそのまま遠く離れた場所にあった大岩を真っ二つにした。
「驚いた・・・。人間に躱されるとは思わなかった・・・。」
「おいおい、いきなり攻撃は酷いんじゃないか?こっちに戦う意思はないぞ?」
「そっちになくてもこっちにある・・・。精霊がただの人間に隷属とか前代未聞・・・。」
精霊が次々と腕を振い、その度に水の斬撃が櫓に向けて飛んでくる。
躱すのがキツくなってきたので、雷帝のスキルで足に雷を纏い一気に精霊の後ろを取る。
「少し大人しくさせてから話させてもらうぞ。」
精霊は櫓を攻撃した方を向いているので、背中はガラ空きだ。
「吹底!」
「水城壁・・・!」
櫓に背を向けた状態で精霊が呟いた瞬間、地面から水の壁が噴き出す。
櫓の掌底は水の壁に当たり、パシャンという音がしただけで、表面で止められてしまった。
「目で追えないけど、護りは自信ある・・・。水鉄砲・・・!」
右手の人差し指を突き出し親指を立てピストルの様にして、人差し指から水滴を物凄い速さで打ち出している。
雷帝のスキルで足に雷を纏わせて躱しているが、かなりギリギリである。
「極雷砲!」
隙を見て雷を纏わせた両手を突き出し、極太の雷のレーザーを放つ。
精霊の打ち出す水滴がレーザーに当たるが、当たってすぐ消し飛んでいくため、レーザーの威力は衰えない。
「水城壁・・・!」
精霊の前に水の壁が現れ、櫓のレーザーを受け止める。
水の壁に当たった雷は上下左右に分散してしまい、打ち破ることはできない。
「まじかよ、その壁硬すぎるだろ。」
「一つ質問する・・・。」
今まで櫓の話を一切聞かず、問答無用で攻撃してきた精霊の手が止まる。
櫓も話し合いで解決したかったので、戦う手を止めて応答する。
「なんだ?」
「その雷を使うスキルの名前を教える・・・?」
「雷帝だけど?」
「・・・。」
精霊は櫓の答えを聞いて目を閉じて、何やら考え込んでいる様だ。
「・・・。」
「俺のスキルがどうかしたのか?」
「・・・ス・・・。」
「ス?」
「スースー・・・。」
何を言うのかと待っていると、スースーと立ちながら寝息をたてている。
「何寝てんだ起きろ。」
「ハッ・・・!寝てない、考え事していただけ・・・。」
「まあいいけど、それで何を考えてたんだよ。」
突っ込んでいては話が進まないと思い、スルーして話の先を促す。
「なんで人間がそんなスキル持ってる・・・?」
「なんでって言われてもな。持ってたらおかしいのか?」
「神のスキルに進化する可能性があるスキルを人間が持っているのおかしい・・・。」
「神のスキルに進化?」
スキルは条件は分からないが上位のスキルに様々な状況下で進化する。
その事は櫓も知っていたが、神のスキルと言う単語は初耳だった。
「面倒だから説明はしない・・・。それでどこで手に入れた・・・?」
「うーん。」
櫓の持っているスキルは全部、女神カタリナから貰ったものだ。
しかし神の話などこの世界で気軽に話してもいいのか櫓には分からない。
ネオンやシルヴィーにも自分の生い立ちは、女神から頼まれた件を含めた作り話として話しているだけで、女神については話していない。
「ん・・・?」
櫓がどう答えようかと迷っていると、ずっと櫓を見ていた精霊が近づいてくる。
最初と違い特に敵意も感じなかったので、構えたりはしていない。
「これは・・・。ふむふむ・・・。なるほど・・・。」
近づいてきた精霊は、櫓の身体をジッと見て何かを納得している。
「何がなるほどなんだ?」
「自分では気付いてない・・・?ほんとのほんとに少しだけど、魔力が神気を帯びている・・・。」
「神気?」
「人間が神気を宿しているなんて、絶対にあり得ない・・・。正直に言う、神様に会ったことある・・・?」
出会ってから一番強い口調で問いかけてくる。
神様の存在を知っているなら、話しても問題ないだろう。
「ああ、会ったことはある。」
「名前は・・・?」
「カタリナって言ってたな。」
「カタリナ様・・・。懐かしい響き・・・。」
精霊はその名前を聞いた途端、出会ってからずっと眠そうだった顔が微笑んだ。
懐かしむ様に何度もその名前を繰り返し呟いている。
「知っているのか?」
「知っている・・・。この世界の秩序を守るために私を召喚して下さり、さらに私に力を与えてくださった・・・。」
「そうなのか、俺と同じだな。」
「同じ・・・?」
それから櫓はカタリナに頼まれた邪神討伐の話を精霊に話聞かせる。
「って言うことだ。これが俺の召喚された理由だな。」
「カタリナ様がそんな事を・・・。私が召喚された時はただ世界の秩序を守ってとしか言われなかった・・・。」
「なら今まで通りでいいんじゃないか?隷属が嫌なら解除しても俺は構わないし。」
櫓が提案すると精霊は少し考えてから首を横に振った。
「その邪神とか言うのも秩序を乱す原因になる・・・。カタリナ様に遣わされた人間なら文句ない・・・。共に戦いたいから仲間にする・・・。」
精霊は言い終えると同時に櫓に小さな手を差し出してきた。
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