67話 精霊さんこんにちは
傭兵団が仲間に加わり今後の話し合いをしたが、傭兵団は全員櫓達に付いてこず、拠点の防衛にも人数を割くことに決まった。
櫓達の旅について来るのは、団長のクロード、副団長のフレア、そして人質として捕まっていたサリーの三人と言う事になった。
残った八人は商会の手伝いや用心棒、奴隷達に戦い方を教えるなどしてくれるらしい。
そして絆誓にも邪神について話したが、名前を聞いたこともないらしい。
魔王より強い存在だと教えると、皆萎縮するどころかますますやる気を出してくれた。
今後の旅についての話し合いをするらしいが、櫓は一つ片付けておきたい用事があったので、ネオンとシルヴィーに任せて、一人ロジックから離れた場所に来ていた。
「さて、このくらい離れたら何か起きても大丈夫だろう。」
櫓のいる場所は見晴らしの良い場所で、近くには人も魔物いない。
そのことを確認するとボックスリングからキラキラとしたクリスタルを取り出す。
オークションにて落札した隷属のクリスタルである。
櫓以外の鑑定のスキルを持っている者にはただのブルースライムとしか見えなかったようだが、調査の魔眼ではブルースライムに擬態した精霊だと見えた。
この世界に来てから精霊と言う存在とは会ったことはなく、この世界の事を学ぶため本をよく読んでいるが、物語などにたまに出てくる程度である。
ネオンやシルヴィーにそれとなく聞くと、人の前にはあまり姿を現さないとか、精霊と契約すると精霊魔法と言う特別な魔法が使えるようになるとか、精霊は魔法の適性が高いエルフを好いているとか教えてくれた。
櫓も興味本位で買ってみただけだったのだが、最近色々と忙しくて一人の時間があまり作れていなかったのだ。
「鬼が出るか蛇が出るか。」
櫓は隷属のクリスタルに魔力を注ぎ、召喚と呟く。
すると櫓のいる少し前にぽよぽよと動く青いスライムが現れた。
「普通のブルースライムみたいだな。本でみた通りだ。」
ジィーッと観察していてもぽよぽよ揺れてゆっくり動いているだけである。
改めて調査の魔眼で見てみる。
名前 ブルースライム
種族 精霊
年齢 ?
スキル ?
状態 擬態 隷属(東城 櫓)
魔法道具を使用した事により、年齢とスキルも分からないが見えており、状態の欄に新しく隷属の項目が増えている。
「お前スライムじゃなくて精霊なんだろ?」
「ぽよぽよ。」
「それがお前の本当の姿なのか?」
「ぽよぽよ。」
「話すことはできないのか?」
「ぽよぽよ。」
櫓の問いにスライムは喋らないのでぽよぽよと動くだけ。
側から見たらスライムに話しかけるヤバいやつである。
「うーん・・・、てか隷属してるから命令してみたらいいじゃねーか。ブルースライム元の姿に戻れ!」
櫓の言葉に対して初めてブルースライムが反応した。
ぽよぽよと動いていただけだったブルースライムの身体が光に包まれ、人型の形状を作り上げていく。
光が治るとそこにはスライムの面影など全くなく、一人の美少女ならぬ美精霊が立っていた。
青い髪をストレートに伸ばし、身体はスレンダーだが女の子らしい部分もしっかり見て取れる。
着ている服は青系の色で纏められているが、布面積が少なく肌の露出がすごい。
顔は美少女と言って問題ないがとても眠そうにしている。
ここでも調査の魔眼を使用してみる。
名前 水の精霊
種族 精霊
年齢 三百一歳
スキル 水帝 水の護り 全攻撃耐性Lv一
状態 隷属(東城 櫓)
精霊と言うことは元々分かっていたので、目を引くのはやはりスキル欄であろう。
調査の魔眼はスキルの詳細も見ることが出来るので、どのスキルがどの様な効果を持っているか知ることができるが、間違いなく今までこの世界で見てきた奴の中では破格のスキル欄であろう。
水帝と言うのは見なくてもわかるが、櫓の雷帝のスキルの水版である。
水の護りは危機的攻撃に襲われた時、近くに水があれば自動で盾になって守ってくれると言ったパッシブスキルである。
全攻撃耐性のスキルは、斬撃でも魔法でもどんな攻撃でも一割のダメージをカットしてくれると言う同じくパッシブスキルである。
「やっと元に戻れた・・・。眠い・・・。」
櫓が精霊のスキル欄をじっくり観察していると、精霊はふわぁ〜っと欠伸をして目を擦っている。
取り敢えず話しかけてみる事にする。
「精霊で良いんだよな?俺の言葉が通じるか?」
櫓の声に反応して精霊がこちらを向く。
「そう・・・。通じる・・・。」
「今の状況わかるか?」
精霊は頬に手を当てる様な仕草をして思い出そうとしている。
「・・・。確か私はスライムに擬態してスライムの群れに飛び込み、揉みくちゃマッサージごっこをして遊んでいた・・・。そしたら人属に魔法道具を使われた・・・。普段なら通じないのに魔物に擬態してたから、魔法道具に囚われた・・・。そして意識はあっても閉じ込められてたから何も出来ずにいた・・・。そしてついに魔法道具から解き放たれたけど、スライムの状態で隷属させられているから元の姿にも自力で戻れなかった・・・。」
思い出した内容をポツリポツリと語り出した。
突っ込みたい事もあったが一旦スルーして話を進める。
「なるほど、随分大変だったみたいだな。」
「うん大変だった・・・。そしてそれは現在進行形でもある・・・。人間に隷属されている・・・。隷属なんて私にはあまり意味ないけど、こんなの付いているの恥ずかしい・・・。お前を殺せば隷属は解かれる・・・。」
一人で話を完結させ精霊が腕を上げ横薙ぎに振るうと、櫓目掛けて水の斬撃が飛んできた。
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