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うっかり女神に邪神討伐頼まれた  作者: 神楽坂 佑
1章 異世界転生
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64話 後片付け

「ふぅ、お前ら大丈夫だったか?」


ユーハを倒し敵対する者がいなくなったのを確認して、後ろに庇っていた女の子二人に話しかける。


「櫓お兄ちゃああぁん、怖かったよおおおぉ!」

「おっと、よしよしもう大丈夫だから泣くなって。」

「うわああああああん!」


マヤは我慢していた感情を解き放ち、櫓に飛び込んで泣きついていた。

マヤは子供の奴隷の中では、しっかり者で纏め役の様な立ち位置であったが、まだ十歳の女の子なのだ。

いきなり拐われて監禁され、首に剣を突きつけられたりと沢山怖い想いをしたので、抱いたまま泣き止むのを待ってあげる。


「よく分からないのですが、あなたに助けていただいたのでしょうか?」


もう一人の女の子は自分の身に何が起きたのか分かっていなかった。

剣を突きつけられ、いつ殺されてもおかしくない状態だったのに、一瞬でその者が倒れて新たに櫓が近くに立っていたのだ。

シルヴィーや団長ですらも櫓が転移した様にしか見えなかったので、他の者達に分かるはずもない。


「まあそう言うことだな。ついでだから気にするな。」

「いえ、あのままでは私は殺されていました。ありがとうございます。」

「サリー!」


遠くから団長が近づいてくる。

呼ばれたサリーは嬉しそうな顔を浮かべるが、団長の傷を見て心配そうな顔になる。

そして櫓に抱きついて泣いていたマヤは、自分を拐った男が近づいて来たのを見て、泣き止んだが櫓に強く抱きついている。


「団長、ご心配をおかけしました。それよりもその傷大丈夫ですか!?」

「ああ心配無用さ、命に危険はない。そちらのお嬢さん、先刻は本当に申し訳ない。」


団長は怯えているマヤに対して頭を下げて来た。

団員を人質に脅されていて、本意ではなかったとは言え小さな女の子に怖い想いをさせてしまい、団長は心の底から謝罪していた。


「ううう。」

「謝ってるし今回は許してやれマヤ。おしおきはしておいてやったから。」

「うん、分かった。もうしないでね?」

「命に誓って。」


大仰(おおぎょう)な事を言っている様に聞こえるが、団長は至って真面目であった。


「取り敢えず降伏したんだ、少し手伝って欲しいことがあるんだがいいか?」

「勿論ですとも、何でも言っていただきたい。」

「その前に回復だな。サリーって言ったか?これあんたのお仲間に使ってやれ。」


櫓はボックスリングから上級ポーションを取り出して渡してあげる。

二人はお礼を言って、倒れている仲間達のもとに向かった。


「何とかなりましたわね。」

「よう、お疲れ。」

「ありがとうございます。」


シルヴィーが櫓から受け取ったポーションを傷口に振りかけている。

ポーションは飲んだ方が効率がいいがあまり美味しくはない。

なので深傷でもない限りは、振りかける程度でも充分である。


「俺の魔法で閉じ込めているうちに、犯罪者は全員捕まえようと思うんだが、何処に連れてけばいいんだ?」

「人数が多いので衛兵を呼んだほうがいいと思いますわ。」

「こんな時間でも来てくれるのか?」

「休んでいる方もいるとは思いますが、大問題ですから我慢してもらうしかありませんわね。」


二人でこれからについて話していると、回復を終わらせた傭兵団十一人が来た。


「改めて仲間を救ってもらい感謝いたします。」

「その話はもう良いぞ。それで頼み事だが二人くらいで衛兵を呼びに行って欲しい。この屋敷にいる犯罪者共を纏めて引き渡すからなるべく大勢な。残ったやつは、縄で縛って一ヶ所に纏めておいてくれ。」


櫓の指示を受けて素早く行動する傭兵団。

敷地にいる騎士や冒険者の中には、犯罪だと知らずに今回から参加した様な者もいるかも知れないが、分からないので全員縛っておくように指示する。

今回の事件の張本人であるユーハは、櫓の攻撃を受けて吹き飛ばされ、完全に伸びていた。

鎧は前面全てにヒビが入りボロボロであるが、特に血などは流れていない。

櫓の吹底はただ吹き飛ばすだけの技なので、傷などは出来にくい。

それでも何十メートルも吹き飛ばされ、頑丈な壁に叩きつけられれば意識くらいは失う。


「こいつこれからどうなるんだ?」

「本来なら事を起こした本人であるユーハを裁き、事に関わらなかったアーノルド伯爵家は爵位降格くらいで済みます。しかし現在アーノルド伯爵家の当主はユーハとなっていますし、さらにこの街を収めるフレンディア家の娘である私に剣を向けましたからね、爵位剥奪は免れないでしょう。」

「ふーん、まあ自業自得だしどうでも良いか。」

「ユーハも犯罪者達の場所に連れて行ってもらってもよろしいですか?私は屋敷の中にいる非戦闘員の方々とお話ししておきたいので。」

「了解、あれ?」


二人で難しい話をしていると、マヤが櫓にもたれかかってうとうとしている。

もう夜も遅くなって来ていて、いつもなら子供達は寝る時間帯だ。

それに今日は色々あって疲れたのだろう。

優しく背負ってやり、マヤは気持ちよさそうに櫓の背中で眠っている。


「ふふっ、可愛らしい光景ですわね。とてもあんなに激しく戦っていた人には見えませんわよ?」

「からかってないでさっさといけ。」

「怖い怖いですわ!」


櫓に睨まれシルヴィーは微笑みながら屋敷の中に入って行った。

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