61話 Aランク冒険者の実力
屋敷から出てきたのは冒険者や騎士だ。
非戦闘員のメイドや執事などは壊された玄関付近で慌てている。
「ユーハ様が言ってたやつらだな?」
「さっさと終わらせるか。」
「なんだたった二人だけか拍子抜けだな。」
出てきた冒険者や騎士達は合計で五十人近くいたため、櫓とシルヴィーの二人だけだと知り明らかに舐めていた。
冒険者と騎士達はシルヴィーの事を知らなかった。
シルヴィーはこの街を納めているフレンディア公爵家の娘で貴族であるが、一般市民に対しての認知度は高くない。
一般市民と絡むことが少なかったため、シルヴィーの事をよく知っている者と言えば、同じ貴族や冒険者ギルドに勤めている者達などだ。
「殺しの依頼なんて冒険者が受けていいのか?」
「いいはずありませんわ。盗賊や犯罪者などならそう言った依頼もありますけど、今回私達に非なんてありませんもの。」
「なら終わったらギルドに報告か。」
「冒険者資格剥奪と牢屋行きは間違いありませんわね。」
冒険者や騎士達は自分の得物を構え少しずつ距離を縮めてくる。
「お前達はここで死ぬんだから、そんな報告できるわけねーだろ。」
「今までにも何回か侵入者がいたけど全員生きて出られてないからな。」
「たった二人殺すだけであんなに報酬くれるなんて良い依頼主だぜ。」
冒険者達はユーハに雇われて、過去にも同じ様なことをしていた。
騎士達は貴族ではなく平民からなった者達であり、アーノルド伯爵家の専属である。
シルヴィーの家の騎士団とは関係はないため、こちらも黒だ。
「全員捕まえるにしても逃げられると面倒だな。シルヴィー、魔法使うから少し相手しといてくれるか?」
「任されましたわ。」
シルヴィーは腕輪から槍を二本取り出して、櫓を護るように前に出る。
「毎日事務仕事ばかりだったので、久しぶりの運動ですわね。さあさあ始めましょうか。」
シルヴィーは武器を構えた者達が五十人も目の前にいるのに自然体である。
人数は多いが一人一人の実力はシルヴィーに遠く及ばない。
櫓に負けはしたがシルヴィーはAランクの冒険者である。
冒険者ランクの中では上から二番目だが、Sランクは世界に数人しかいなく、常人とは異次元の強さを持っている化物なので、実質Aランクが冒険者の中でトップと言ってもいい。
「中々いい女じゃねーか、男の方は殺して女の方は後で楽しむか。」
「いいねぇ、まずは大人しくさせちまおうぜ。」
倒した後のことを考えている男二人が、下卑た笑みを浮かべながらシルヴィーに襲いかかってきた。
「下品ですわね、まああなた方の実力ではそのような事は出来ないでしょうけど。」
シルヴィーは長物の利点を活かし自分の間合いに二人が入った途端、横薙ぎに槍を振るう。
風切り音を出しながら二人にぶつかり、女の腕力とは思えないほど遠くに吹き飛ばす。
「口ほどにもないですわね。次の方はどなたですか?なんなら全員纏めてでもいいですわよ?」
シルヴィーは余裕のある態度のままだが、さっきまで余裕の態度だった冒険者や騎士達は、自分達が舐めていた女に呆気なく二人がやられてしまい、軽く動揺していた。
それでも何人かはシルヴィーに対して斬りかかったが、全員一撃で吹き飛ばされ気絶させられている。
シルヴィーは強すぎて無理だと諦め、魔法の詠唱で隙が出来ている櫓に攻撃を仕掛けようとしている者もいたが、シルヴィーは槍で戦いながらも障壁の魔眼や風魔法などでそれを妨害していたので、櫓に危害を加えられた者はいない。
明らかにレベルが違うと知り、戦意を失っていく者もいる。
逃げ出そうとしている者達もいたが、そこで櫓の魔法が発動する。
アーノルド伯爵家の敷地全てを含むほどの巨大な魔法陣が地面に現れ、敷地を覆うように電気の格子が出来上がり人間の出入りが出来なくなった。
「悪い悪い待たせたな。」
「問題ありませんわ、これなら全員逃さずに済みますわね。」
「ああ、これで逃す事を考えずに戦いに集中できるな。取り敢えず出て来てる奴等全員倒すか。」
「この者達は明らかに犯罪者ですわ。殺しても問題ないですわよ?」
「まあ殺さなくてもいいだろう。犯罪奴隷として売れば金になるしな。」
「わかりましたわ、では早めに片付けますか。」
二人は集団の中に突っ込み、叩き伏せ吹き飛ばし次々と立っている者が少なくなっていく。
既に戦意喪失してる者もいたため、二人が全員を倒すのに時間は掛からなかった。
二人は被弾どころか息切れもしておらず、全く疲れていない。
「さて次は屋敷の中か?わざわざ入らなくても外からぶっ壊すか?」
「マヤちゃんの場所がわかりますの?当たってしまっては大変ですわよ?」
「任せておけ。」
櫓は神眼のスキルで透視の魔眼を選択して使う。
名前の通り障害物があってもその先を透かして見ることができる能力である。
魔眼は名前と能力を知れれば神眼のスキルで、何個でも使えるようになるので、スキル一覧などが書かれている本などを読み漁り、積極的に探していた。
その時に見つけたのが透視の魔眼である。
しかし覗きなどの犯罪に仕えてしまうため、気をつけて使おうと決めていた。
「屋敷にはいないな。えーっと、いたいた地下か。」
「場所が分かりますの?何をしたか分かりませんが便利ですわね。」
「まあその件はまた今度な。マヤの近くに人はいないな、屋敷にはまだかなりの人がいるみたいだ。」
「乗り込みますか?」
「いや、なんか団体さんがこっちに向かって来ている。」
透視の魔眼には屋敷の奥から外に向けて歩いて来ている集団の姿が見えていた。
全員が同じ革鎧を身につけていて、先程の冒険者や騎士とは違いかなり統率が取れていた。
閲覧ありがとうございます。
ブックマークやポイント評価よろしければお願いいたします。




