54話 奴隷を大量購入
オークションが終わると会場から次々と人がいなくなっていく。
皆落札した物や出品して売れた金などを受け取りに行っているのだ。
少し人がいなくなってから櫓達も控え室に移動する。
「アリーネさん、こちらです。」
「はい番号札ね。」
「ありがとうございます。それにしてもかなりの額で売れましたね。特にあの杖は金貨二百五十枚までいくとは。」
「私も驚いたわ、使う人からするとそれだけの価値があるんでしょうね。」
「その様ですね。ではこちらが出品された品物が落札されたお金とアリーネさんが落札された品物になります。事前に言われた通りアリーネさんが落札された品物の代金と主催者側に払われる一%分のお金は引いてありますので、お確かめくださいませ。」
「そこは信用してるから大丈夫よ。また機会があったらお願いね。」
「はい、ではお疲れ様でした。」
アリーネに渡されたお金と落札した品物をボックスリングにしまって、オークション会場を後にする。
打ち上げも兼ねて食事していこうという話になり、この前ほどではないが高級なお店に入り食事を楽しむ。
「沢山落札にも参加したけど結局どれくらいお金残ってるの?」
「まだ確認してなかったな、一緒に金や品物に関する詳細が書かれた紙貰ったからこれ見てから。」
ボックスリングから取り出してアリーネに手渡す。
横からネオンも覗き込んで見ている。
櫓はまだ完璧に読み書きを習得したわけではないので、貰った紙の内容も分からないところが少しあった。
「もろもろ引かれて金貨が二百ちょっとね。かなり売れたけど恩恵の宝玉がやっぱり高かったわね。」
「あんなに買ってどうするのですか櫓様?」
「あれは買った子供達に使う様なやつだ。」
「使ってどうするの?」
「何か商売みたいなことが出来ればと思ってな。ずっと面倒見ることもできないし、自分達の生活費を稼いで暮らしていける様にな。」
「優しいわね、そんな風に恩恵の宝玉を使う人初めて見るわ。」
「櫓様、そこまでしていただけるなんて、ありがとうございます。」
「気にするな、乗り掛かった船だからな。」
食事が終わってから、アリーネに今日のお礼だと金貨を数枚渡してやる。
アリーネは「流石櫓君大好き〜!」と言って抱きついてきた。
アリーネもそこそこの物を持っているので抱きつかれて悪い気はしなかったが、ネオンから圧を感じたため早々に引き剥がす。
オークションが終わるともう夜も遅くなってきていたので、明日に備えて宿で休む。
翌日、二人はいつもの日課としている馬車の改造や依頼などをこなして奴隷商人との約束の夕方まで時間を潰して過ごした。
櫓は馬車の改造が終わると子供達の拠点用にと、アリーネに知り合いの不動産を紹介してもらい、良さげな土地と既に建っていた大きな建物を購入した。
アリーネが子供達の為の建物であると分かっていたため、口利きをしてくれたので土地と建物含めて金貨百五十枚と言う櫓には相場が分からないが破格の値段で売ってくれたらしい。
「櫓様そろそろいい時間ではないでしょうか?」
「そうだな、じゃあ向かうとするか。」
ネオンに案内してもらい奴隷商人のオルトの店を目指す。
櫓は自分達がロジックに入った南門の周辺でしかほとんど行動していなかったので、オルトの店のある北門側に行くのは初めてである。
普段とは違う街並みを楽しんでいると、まだ来たことのないこの街の二つ目のギルドが見えてくる。
こちらのギルドでは、いつも使っているギルドではあまり見かけない奴隷を連れた冒険者がいくらか見える。
ギルドの近くに奴隷商店が幾らかあり、冒険者に奴隷のレンタルをさせている為である。
あちらのギルドの近くには奴隷商店はなく、武器防具の店が多いので、周りの環境でこの様になっているのである。
「櫓様、そこのギルドの裏手です。」
「名前はオルトだったか?」
「はい、ええっと・・・あっ、あの店みたいですね。」
ネオンの指差した方には、人に首輪が掛けられた看板を下げた店があった。
(うわ、分かりやすいけど趣味わるいな〜。)
ネオンが扉を開けてくれたので入ると、恰幅の良い身体に高そうな装飾品を沢山身につけた男がカウンターの席に座っていた。
「いらっしゃいませ、お?先日のお嬢さんですな?今日は先日の取り引きと言うことでよろしいのですかな?」
こちらを見てにやにやと嫌らしい笑みを浮かべながら話しかけてくるオルト。
「はい、約束した件で今日は来ました。そしてこちらが私のご主人様である東城櫓様です。」
「お初にお目にかかります、奴隷商人のオルトと申します。」
「ネオンから話は聞いている、こちらは金は用意してきたがそちらは用意できているのか?」
「問題ありません、先日約束した奴隷の子供三十人直ぐに連れて帰られる様にしております。」
「そうか、では今日全員引き取って行くので連れてきてくれ。これが代金だ。」
「確認させていただきます。」
オルトは櫓から受け取った袋の中身が金貨三十枚ある事を確認してから、店の奥に行き子供達を三十人連れてきた。
これからはオルトではなく櫓が主人となる為、主人変更の為奴隷契約を行なっていく。
オルトが子供達に向けて手をかざして詠唱すると、子供達の足元に魔法陣が浮かび上がり、光って消えた。
「これで奴隷の書き換えは終了いたしました。」
オルトが嫌らしい笑みを浮かべながら言ってくる。
奴隷商人としては厄介な子供の奴隷を売り払えて、しかも金貨三十枚にもなったので、喜んでいるのだろうと思いながら、子供の一人に自分が主人にちゃんとなっているか確認する為に調査の魔眼を使用する。
そこで見えた内容で状態の項目に(主人 東城 櫓)となっていたが、もう一つ状態の欄に変な言葉が書かれていた。
他の子供達を見てみても同じで、三十人全員の状態の欄に書かれている。
「では取り引き成立ですな。また奴隷が必要になりましたらお越し・・・。」
オルトは驚きでその後の言葉が続かなかった。
今オルトは急に近づいてきた櫓に首元の服を掴まれ、持ち上げられていた。
「や、櫓様!?どうなされたのですか?」
ネオンはやっと目的を達成できたと喜んでいたが、突然の櫓の行動に驚いていた。
「おい、子供達に掛けられている呪いってのはなんだ?」
櫓はオルトを睨みながら首元を掴んで離さない。
子供達の状態の欄には、(主人 東城 櫓)(呪い オルト)の二つの言葉が並んでいたのである。
閲覧ありがとうございます。
ブックマークやポイント評価よろしければお願いいたします。




