53話 入札してみる
魔法道具自体は高価な物みたいだが中の魔物が弱いためか入札はあまりされない。
「あまり入札されないな。」
「スライムだからね、手に入れても使い道があまり無いんじゃない?」
「鑑定使ったらブルースライムに見えるんだよな?」
「ん?そうだけど?」
アリーネの反応から嘘をついている様にも見えない。
司会もブルースライムと言っていたし、鑑定持ちにはその程度の情報しかないのかもしれない。
「アリーネ、売れたやつから払うから入札してくれ。」
「これに?ブルースライムよ?」
「ああ、構わない。」
「わかった。コール、金貨一枚と銀貨五十枚!」
既に金貨一枚と銀貨十枚のコールが出ていたので、アリーネがそれより上の金額をコールした。
オークションが始まる前にアリーネが言っていたが、ちまちまと値段を上げるより少し多めに離した金額をコールする事で、財力の差を見せつけ早めに相手にコールさせなくしたりすることも重要と言っていた。
「コール、金貨一枚と銀貨六十枚。」
「コール、金貨二枚!」
別の場所からコールの声が上がるがすかさず被せてアリーネはコールする。
コールした相手は降りた様で、他にも声は上がらない。
「三十番から金貨二枚が出ました、他におりませんか?いないですね?では隷属のクリスタルは三十番の方に落札されました。」
三十番とはアリーネのオークション番号である。
参加者は全て番号札を配られており、オークションが終わり次第その番号札を持って行き、取引が行われるという仕組みである。
「あのスライムに価値がある様には見えないけどいいの?」
「価値観は人それぞれってことだ、あの魔法道具も改造とかすれば使えるかもしれないしな。」
「なるほど、それなら元も取れるか。」
精霊の件については一旦黙っておく。
櫓にしか分からない様なので、わざわざ面倒ごとになりそうなことはしない。
それからも様々な品物が出されて時々気になった物は、三人で話し合い入札したり、自分の出品した物の値段がどんどん高くなっていくのを見て楽しんでいたりしていた。
「さあここからは恩恵の宝玉の出品が続きます。まずは鑑定が五つ、金貨十枚から。」
今までで一番かというくらい色々な場所からコールが飛び交う。
金貨十枚スタートだったのに既に金貨十八枚まで来ている。
「すごい入札の数だな。」
「そりゃあ恩恵の宝玉だからね、オークションの目玉商品の一つよ知らないの?」
「どんな効果なんだ?」
「鑑定で調べなさいよね、まあいいけど。あの魔法道具は手に持って魔力を注ぎ込む事によって、宝玉ごとのスキルを得られるのよ、今のだったら鑑定よスキルが手に入るわね。」
「そんな簡単にスキルが手に入るのか!?」
櫓は素で驚いていた。
スキルと言うのは持っていない者も多く、持っている者でも大半が一つか二つ。三つ以上ともなれば各分野の手練れやお金持ちなどと事前に女神に聞いていたためである。
こんなアイテムがあるのならスキルが手に入り放題じゃないかと思ってしまったため驚いてしまった。
「もちろん恩恵の宝玉は、人の手で作ることは難しくて貴重だし、ダンジョンでも中々手に入らなくて危険だし、どんなスキルの宝玉か分からないから自分が欲しい物を狙うなんて無理だから、オークションで高く買うしかないから、お金があるならばスキルは手に入れれるわね。」
「なるほど、金でスキルが買えるのか。」
「それでも良いスキルほど高いわよ?鑑定みたいなありふれた商業関係、生産関係の仕事に向いてるスキルは安いけどね。」
「ふむ。」
櫓は鑑定の恩恵の宝玉を欲しいと考えていた。
元々今回のオークションはネオンが買うと約束してしまった奴隷の子供達を買うお金を稼ぐためのものである。
しかしその資金はまだ自分の出品物が全部出ていないのにも関わらず、既に十分集まっている。
そして奴隷の子供達を買った後のことも考えていた。
拠点や食べ物その他にも多くの日用品が必要になってくる。
櫓達は邪神討伐の為に各地を旅して探さなくてはならない。
このロジックに留まることはできないので、子供達には商売をさせてその金で暮らしていってもらおうと考えていた。
何をするか具体的にはまだ決めてないが、子供達の商売が成功すれば櫓達にもメリットがある。
ロジックに拠点ができ、物資や資金の援助も期待できる。
商売とは様々な者との取引が成されるので、櫓達が必要としている情報が手に入るかもしれない。
そう言う考えもあってある程度子供達が商売をする上で必要になりそうな物を揃えようとは思っていたのだ。
そして鑑定のスキルはありふれているが、偽物を掴まされたりしないように、商売をする上では持っていなくてはならないスキルである。
「アリーネ、入札に参加してくれ。」
「既に金貨二十三枚ちょっとだよ?いつものオークションより少し高いくらいだけどいいの?」
「大丈夫だ。」
「コール、金貨二十五枚!」
そこからは子供達の商売に必要そうな恩恵の宝玉を片っ端から落としていく。
鑑定、農家、算術、錬金術の見習い、調合師の見習いの恩恵の宝玉を手に入れた。
しかしスキルとはただ持っているだけではあまり意味がないものも多い。
魔眼の類や、雷帝などのスキルはあまり関係ないが、剣術や武術、料理、農業などの努力すればスキルが無くても力が身につく分野のスキルは、ある程度そのスキルに応じた補正がかかり、その分野において少し良い成果が出ると言う位のものなので、料理のスキルを持っていないがベテランの料理人と、料理のスキルを持っているが素人の料理人では、前者の方が美味しい料理になったりする。
なので櫓がいくらスキルを子供達に与えても努力しなければ、ただの宝の持ち腐れ状態になってしまうので、そうならないようにある程度指導はするつもりであった。
恩恵の宝玉が全て捌け、次に司会が目玉商品と言って出してきたのは櫓の出品した杖である。
付加が三つも付いている、人の手によって作られた物にしては破格の武器であった。
司会が説明を終えコール宣言をすると間違いなく今日一の入札の嵐が飛び交う。
「コール、金貨百十枚!」
「コール、金貨百二十枚です!」
「コール、金貨百五十枚だ!」
金貨五十枚スタートだったがどんどん上がっていく。
「すごい上がり方だな、思わずにやけそうだ。」
「凄いです櫓様!」
「高くなりそうだとは思ったけど、凄まじい上がり方ね。オークションの後のご飯期待しちゃおっと。」
三人で雑談している最中も更に上がっていき、最終的に金貨二百五十枚で落札され、ネオンとハイタッチして喜びあった。
その後もオークションは続いたが特に櫓達の気を引くものは無くオークションは終了した。
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