344話 岩ガチャ開始
赫き森を突き進んでいた櫓達は、中心付近に辿り着いていた。
此の場所は暑い事には変わりないが、道中と違って気温が少し低い。
「成る程、理由はこれか。」
櫓は調査の魔眼を使い、ある植物を見つけた。
吸熱草と言って周囲の熱を取り込む力がある様だ。
群生していたので、付近一帯の気温がある程度下がっている。
「お!当たりですね、収集収集。」
ルリーフも気温が下がって幾らか余裕が出来たのか、嬉しそうに吸熱草を摘み取っている。
少量で効果がどれ程あるかは分からないが、暑い季節には便利そうなので、売り物にはなるだろう。
「櫓は鑑定系統のスキルを持ってるの?」
「そんなとこだな。」
ルリーフとフレアーナは護衛依頼で一緒に行動しているだけなので、スキルや魔法については話していない。
なのでオッドアイでも無い櫓が、神眼のスキルで複数の魔眼を使用出来る事は知らないのだ。
「だったらこっちにある岩を見てほしいわ。」
フレアーナが指差す方には直径二メートル超えの岩がある。
「岩を見てどうするんだ?」
見た目は至って普通の岩にしか見えない。
「炎熱鉱石かどうかの判断よ。」
「炎熱鉱石は火山地帯等にある岩の中に完全に埋まっているらしく、慎重に削って取り出す必要があるのですわ。そして岩の中に埋まっている場合、鑑定系統のスキルで調べる事が出来ますのよ。」
フレアーナの言葉に捕捉する様にシルヴィーが教えてくれる。
ミスリル鉱石を採掘した時は、一部が剥き出しとなっていて一目で分かったが、炎熱鉱石の採掘には鑑定系統のスキルが必須の様である。
「ほう、事前に分かるのは有り難いな。」
「でも取り出すのが一苦労なのよね。力任せに砕いちゃうと、炎熱鉱石にも被害が及んじゃうから。」
取り出す為には時間を掛けて慎重に岩を削っていく必要がある。
うっかりしてしまうと、炎熱鉱石が砕けたりヒビが入ったりして、元々の大きさよりも小さくなってしまう。
ある程度の大きさがなければ武器の加工材料としては厳しいのだ。
そして慎重に取り出す必要があるのに、炎熱鉱石がある場所は危険地帯ばかりであり、しかも岩の中にあるので持ち運びも難しい。
故に希少価値の高い鉱石として取り引きされるのだ。
因みにフレアーナは、少し勿体無いが岩を破壊して炎熱鉱石を確認してから、岩ごと持って帰る予定だったらしい。
小さな身体ではあるが、魔装すれば岩くらい軽く持ち運ぶ事は出来るだろう。
「普通の岩の様だな。特に炎熱鉱石についての情報は無い。」
調査の魔眼で視たが普通の岩であった。
「外れね、そう簡単には手に入らないか。」
「でも岩は沢山ありますから、当たりもきっとありますよ。」
周囲にも同じ様な岩は幾つもある。
道中には一つも見かけなかったので、採掘出来る場所は限られている様だ。
「全部視たが全て普通の岩の様だな。」
櫓は周囲にある全ての岩を視たが、炎熱鉱石は見つからなかった。
貴重な鉱石というだけあって簡単には手に入らない様だ。
「ガセ情報だったって事?もう!」
フレアーナは怒って火球を遠くにある岩に放つ。
岩は火球によって爆発四散し、地面も抉れている。
「おいおい、そんなに派手な攻撃をしなくても・・。」
「見て下さい、地面の中に岩の一部が見えますよ!」
フレアーナの火球によって抉られた地面から岩が見える。
地面の上だけで無く、埋まっている岩もある様だ。
「希望は潰えてなかったわ!流石は私ね。」
怪我の功名と言うべきか、運良く炎熱鉱石の希望が繋がった。
しかし残念ながら炎熱鉱石はまたしても入っていない。
「地面を多少掘るだけで岩が見つかるのならば、少し試してみるのも良さそうだな。」
リュンの言う通り少し埋まっている程度であれば、掘り起こして調べられそうである。
「そうだな、ちょっと待っててくれ。」
櫓は錬金術の名人のスキルを使い、人数分のスコップを作り上げる。
そして透視の魔眼を使い地面の中を視る事で、岩の位置を把握する。
透視の魔眼の事も当然ルリーフとフレアーナは知らないので、さり気なくスコップを岩の上部近くに置いておく。
(魔眼を同時に使用出来れば楽なんだけどな。)
透視の魔眼を使いながら調査の魔眼を使う事は出来無いので、地面の中にある岩は掘り起こさなければ調べる事は出来無いのだ。
全員で手分けして地面を掘ると、直ぐに何個かの岩の一部が剥き出しになってくる。
「当たりだ、炎熱鉱石が入っているぞ。」
掘り起こした岩の一つに炎熱鉱石が入っている事を確認した。
「やったわ、手に入れたわよ!」
「良かったですねフレアーナ様。」
「早速掘り起こすわよ!」
ルリーフとフレアーナが喜び合って、炎熱鉱石が入った岩を掘り出そうとしている。
岩の一部しか見えていないので、普通であればそうしなくてはならないが、今回は容量無制限のボックスリングを持つ櫓が此の場に居る。
岩に触れてボックスリングの中に収納し、地面には大きな穴が空いた。
「「え?」」
やる気になっていたのだが、突然岩が無くなりルリーフとフレアーナは間の抜けた声を出している。
「よし、次は俺達の分の炎熱鉱石を探すぞ。」
雷の剣のメンバー達はボックスリングの性能を知っていたので、特に驚きもせず再び地面を掘っていく。
改めて櫓のボックスリングの規格外の性能を感じて、羨ましがる二人であった。
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