340話 豪勢な夕食
女性陣がお風呂に入っている間にテーブルの上には櫓の作った豪勢な料理が次々と並んでいく。
ピザ、唐揚げ、フライドポテト等の仲間内で好評だった誰もが好きそうなメニューばかりである。
「うわあ!初めて見る料理ばかりです!」
ルリーフは食欲をそそる様々な料理を見て目を輝かせている。
初見の料理ばかりでも美味しそうだとは思っている様だ。
エルフは肉を食べないイメージが前の世界で付いていたが、普通に何でも食べるので肉料理も多い。
幾ら多めに作っても、ボックスリングがあるので残った時の心配をしなくていいのが有り難い。
と言ってもいつもミズナの胃袋に全て吸収され、料理が残る事は無い。
「櫓は料理が上手いので期待するといい。」
リュンはそう言いながら料理を運ぶ。
普段から女性陣がお風呂に入っている時に櫓は料理を作るので、自然とリュンも手伝う流れになった。
リュンは物覚えが良いので、今では料理を運ぶだけでは無く、簡単なメニューであれば櫓と同じ様に作れるまでになった。
ネオンも櫓に手料理を食べさせたいという理由で暇を見つけては練習しているのだが、櫓の次に料理を上手く作れるのは残念ながらリュンだったりする。
「あまり期待させるな、俺は料理人じゃないんだからな。」
料理は趣味の部分が大きいので、一流の料理人なんかと比べられれば劣ってしまう。
良い勝負が出来ていると皆が感じられるのは、貴重な調味料の類いを惜しみなく使用しているからだ。
錬金術の名人のスキルがあるので、元の素材があれば意外と簡単に調味料が作れてしまう。
なのでしっかり味付けがされている分、美味しく感じさせられている。
「良い匂い!食事の時間ね!」
魔力切れから復活したフレアーナがお風呂の扉を勢い良く開きつつ言う。
「あ!フレアーナ様、未だ髪が乾いてませんよ!」
「ちょっと!少しくらいいいじゃない!」
しかし直ぐにネオンによって連れ戻されてしまった。
ミズナ同様に食事が待ち切れない様子だが、客人であっても問答無用である。
因みにミズナも同じ様な事を過去にしており、お湯を滴らせながら出てきた時があった。
今後乾かさずに出てきたら食事は無しだと注意してからは問題無いので、今も大人しくシルヴィーに乾かされている頃だろう。
「そう言えばフレアーナ様は見かけによらず沢山食べられますが大丈夫ですか?」
ルリーフが心配そうに櫓に尋ねる。
「やっぱりそうなるか。ミズナも同じだから慣れてはいるが、なんとかなるだろう。」
精霊は本来であれば食事が必須と言う訳では無い。
魔力が幾らかは食事をする事で回復するのだが、変換率が悪過ぎるからだ。
だがミズナは食事の美味しさを知り、魔力よりも味を楽しむ目的で毎日大量に食べている。
フレアーナもミズナと同じ様な理由で、食事の美味しさを知ったのだろう。
しかし放っておくと無制限かの様に食べるので、キリのいいタイミングで止めて我慢させる必要がある。
ミズナは慣れているので、フレアーナもその姿を見れば納得してくれるだろう。
「ご馳走・・・!」
「あら、随分と豪勢ですわね。」
お風呂の扉から次に現れたのはミズナだ。
しっかりと乾かしてもらった様で、後ろからはシルヴィーも出てくる。
「もう乾いたわよ!早く食べさせなさい!」
「食事は逃げませんから、慌てないで下さいよ。」
続いてフレアーナとネオンも出てくる。
自由奔放なフレアーナに早速振り回されている様だ。
「よし、全員揃ったし早速食べるとするか。」
食事は逃げなくても冷めてしまう。
直ぐに各々の席に付く。
「「「「「「「頂きます!」」」」」」」
挨拶をし終わると早速皆が料理に手を付ける。
櫓の料理を始めて食べる二人は、あまりの美味しさに驚き、手が止まらなくなっている。
普段から食べている者達でも豪勢なメニューに箸が進んでいるのだが、特に精霊二人の食べる量は異常だ。
沢山用意した櫓の料理は相当な勢いで減っていき、一時間も保たなかった。
だが精霊以外の者達は充分に満腹である。
「美味しかったです。櫓さんは料理がお上手なんですね。」
「私としては量がもう少し欲しかったけど、美味しさに免じて我慢するわ。」
二人共大満足と言った様子だ。
量については追加でボックスリングの中に入っていた料理を数点出したのに、未だ足りないらしい。
流石はミズナと同じ精霊であり、食べる量も引けを取らない。
「満足してもらえたなら良かったよ。」
「旅の最中に美味しい料理を沢山期待してるわよ。」
城塞都市ロジックに到着するまでは時間が掛かる。
櫓の料理を毎日楽しめるとなれば、期待も膨らむだろう。
「お前達からの依頼は護衛であって、料理作りではないぞ。それに毎回そんなに食われたら、直ぐに食材が底を尽きる。」
「旅の最中に食材の調達くらい協力するわよ。それに依頼人の体調管理も重要な仕事よ。」
美味しく食べてもらえれば櫓としても作り甲斐はあるので、仕方無くのせられておく事にした。
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