338話 護衛依頼復活
魔物の討伐の為に森の中に入っていた者達が帰ってきてから、ルリーフとフレアーナに説明をする。
二人と同じ種族であるエルフのリュンと精霊のミズナに同席してもらっているので、先程とは違い大人しく話しを聞いてもらえた。
「櫓様が悪いですね。」
「櫓さんが悪いですわ。」
「櫓が悪いな。」
先程揉めてしまった事についても皆に話すと、ネオン、シルヴィー、リュンの三人が口を揃えて言う。
櫓自身も種族名を口に出した自分に責任があった事は認めているので、反論せずに黙る事しか出来無い。
「一先ず誤解は解けましたが、護衛依頼の件はどうされますの?」
櫓に代わってシルヴィーが二人に尋ねる。
二人が同行するとなれば、櫓と言うよりは雷の剣で護衛依頼を受けた事になるので、シルヴィー達も無関係ではない。
当然櫓が迷惑を掛けてしまったので、櫓以外の面々は依頼を引き受けることに文句は無い。
「普通の人間達とは違うみたいだし、私はいいと思うわよルリーフ。」
「そうですね。事情を知った上で協力してもらえるのでしたら、此方としても有り難いですし。」
二人共護衛依頼を任せてくれるつもりの様だ。
今回断っても再び同じ様な事態になる可能性もある。
そしてエルフや精霊だと知って櫓達の様な対応をとるとも限らない。
そう考えると二人にとっては中々都合の良い者達とも言えるのだ。
「決まりだな。問題が起きるのも面倒だし、俺達と同じ馬車に乗せようと思う。異論はあるか?」
周りの者達に視線を向けるが異論は無かった。
護衛依頼となれば、身近に護衛対象を置いていた方が守りやすい。
少し話しあって決めたが、雷の剣と一部の者達を除いて、二人の種族に関する情報は非公開としておくことに決まった。
仲間達が問題を起こすとは思えないが、二人にとってはあまり種族を知られたくはないだろう。
現在も雷の剣とルリーフとフレアーナの七人だけで、他の者達には近付かない様に頼んでいる。
「そう言えば何故護衛を探していたのですか?フレアーナ様の実力ならば必要無さそうですけど。」
ネオンが疑問に思っていた事を尋ねる。
ルリーフの直接戦闘しているところを見ていないので実力は未知数だが、フレアーナがスキルによって作り出した火球をネオンは見ている。
同系統のスキルを持つネオンからしたら、ある程度実力を測れたのかもしれない。
櫓もネオン同様に気になっていた事だ。
実際戦ってみて、フレアーナの実力がAランク相当あるのは分かっている。
単体でそれ程の力を持つならば、他人に頼る必要も無いのではと思っていたのだ。
「万が一よ。私は強いし、ルリーフだってそこそこ戦えるわ。でも個の力がどれだけ優れていても、格上や同等の力を持つ敵が複数現れれば、ルリーフを守り抜く自信は無いの。」
フレアーナがAランク相当の実力を持っていたとしても、Aランクの魔物が複数現れてしまえば勝てるか分からない。
万が一命を落としても、契約した主人から魔力を分けてもらえば蘇る事は出来る。
しかし主人が先に命を落とした場合は保険が無くなる。
最悪の事態を考えるならば、戦力は多いに越した事は無いのだ。
「確かにな。精霊からしたら主人の安否は第一になるか。」
「当然よ。精霊が契約をする一番のメリットなんだから。水の精霊がどう思ってるかは知らないけどね。」
契約をした主人が生きている限り精霊は何度でも蘇れる。
その代わりに精霊は、強力な力を主人の為に使ってくれるのだ。
「無茶は困る・・・。」
「善処する。」
ミズナの方に視線を向けると文句を言われてしまった。
旅の最中を思い返すと、何度か無茶をした覚えがある。
ミズナにしてみれば無茶は止めてほしいので、毎回不安な思いにさせていたかもしれない。
「ところで皆さんの代表者は櫓さんでいいのでしょうか?」
成り行きを見守っていたルリーフが皆を見回しながら尋ねる。
「一応そうなるな。」
雷の剣のリーダーであり、この一団を率いているのは櫓だ。
櫓的には統率力が高そうなシルヴィーの方が向いていると思ったのだが、人の上に立つのは何かと苦労するからと断られた。
貴族として生きてきたシルヴィーは、常に民の上に立って生活してきたので、説得力のある言葉である。
「依頼を引き受けてもらって今更なのですが、報酬が足りなさそうでして。」
「あ!そう言えば受付嬢はBランク冒険者数人分程しか雇えないとか言ってたわね。」
ルリーフが申し訳無さそうに言い、フレアーナも思い出した様に言う。
櫓達に護衛を頼むとなると、冒険者登録はしていなくても、Bランク相当の実力者は軽く数十人程居る。
それでは当初の予定していた報酬では足りなくなってしまう。
「元々俺が独断で引き受けた様なものだ、お前達が気にする必要は無い。その代わり多少戦闘に参加してもらう機会はあるかもしれないけどな。」
金の面では特に困っていないので、戦闘で補ってもらうことにした。
櫓達の馬車に乗るならば旅の最中に苦労することも無いので、依頼人が満足出来る快適な護衛旅となるだろう。
閲覧ありがとうございます。
ブックマークやポイント評価よろしければお願いいたします。




