337話 精霊と精霊
「煩くて寝れない・・・。」
そう言ってミズナは小さく欠伸をしている。
気持ち良く眠っていたところを、フレアーナ達と争う声で起こしてしまったのだろう。
寝起きなのもあって不機嫌そうである。
「あああっ!あんた水の精霊!」
フレアーナはミズナの姿を見るなり、大きな声を出しながら指を差して言う。
同じ精霊なので面識があってもおかしくはない。
「誰・・・?」
しかしミズナの方は少し考えてから首を傾げている。
「あ、あんたねぇ!精霊界で何度も会った事あるでしょう!炎の精霊よ!」
フレアーナは忘れられてる事に怒りつつ、名乗りを上げる。
櫓やミズナが持つスキルと同格と思われる炎帝のスキルを持っていた事からも、炎の精霊と言うのは納得出来る。
「居た気もする・・・。」
ミズナは未だ眠いのかフレアーナにあまり興味が無いのか、曖昧な様子だ。
「まあ、忘れられてた事については許してあげるわ。その代わりに手を貸しなさい!此奴らを協力して倒すわよ!」
フレアーナはそう言って櫓に加えてネオンも指差している。
突然乗車希望者から倒される事になったネオンは驚き戸惑っている。
ネオンからすればいい迷惑だが、フレアーナが精霊である事は今知ってしまった。
何もする気は無くても、櫓と同じ立場になってしまったのだ。
「何故・・・?」
「何故って正体がバレたからに決まってるじゃない!私達の存在が人間に知られたら、どうなるかくらい分かるわよね!」
珍しい種族であれば自己満足の為に捕まえようとする者が後を経たない。
フレアーナはミズナも同じ境遇なのだからと手を組もうとしているのだ。
しかしミズナは櫓達の仲間である。
櫓が保有する馬車から降りてきているのだが、此の場所に先程来たばかりのフレアーナとルリーフが、状況を把握出来ていないのも仕方が無い。
「ご主人に敵対してる・・・。」
「ご主人?」
フレアーナはミズナの発言に首を傾げている。
「ご主人の敵なら私の敵・・・。」
ミズナは櫓の前に進み出て、フレアーナとルリーフを敵認定した。
同じ精霊であっても、契約した櫓の敵となるならば共に戦ってくれるらしい。
「えええ!?ちょっとどう言う事よ!?」
フレアーナは予想していた事態と全く違う展開になり困惑している。
精霊同士協力しようと提案したのに真逆の反応が返ってくれば困惑もするだろう。
成り行きを見守っていたルリーフも慌てている。
「言葉通り・・・。」
「あ、あんた洗脳でもしてるんじゃないでしょうね!」
フレアーナは櫓を睨みながら言う。
ミズナが自分の意思では無く、櫓に操られているのではないかとフレアーナは疑った。
「そんな事はしてない。最初から言ってただろうが、精霊と契約してるって。」
精霊の腕輪を見せながら言ったが、全く相手にしてもらえなかった。
だが二人の種族を突然口にして興奮させてしまった櫓にも責任はあるので、一方的に責める事は出来無い。
「ほ、本当に契約してるって事?」
フレアーナの問いにミズナは頷く。
「あ、有り得ない。あの、自分勝手な水の精霊が。」
そう言ったフレアーナは驚き、声も小さくなっていく。
それ程ミズナが人間と契約している事が信じられないのだろう。
本来精霊が契約者に選ぶのは、魔力量が多く魔法の適性が高い種族であるエルフだ。
人間の魔力量はエルフとは比べるまでもないので、候補にも上がる事は無い。
だが女神カタリナによって弄られた櫓の身体は常人離れしており、通常の人間よりも魔力量が多い。
そしてミズナ曰く櫓の魔力は神気を帯びているらしいので、普通の人間とは言えないらしい。
ミズナも最初は敵対しており、櫓の境遇を知ってから契約する事を選んだので、種族よりも女神カタリナの存在が大きかったのだろう。
「取り敢えず契約してる事は信じてもらえたか?」
フレアーナに問い掛けたが、上の空と言った様子で返答が無い。
ルリーフの方を向くと、ビクリとしながらも頷いてもらえた。
「見ての通り精霊に対して危害を加えているつもりはない。もう少し待ってもらえれば分かるが、エルフの仲間も居る。」
森の中に魔物を確認して大半の者は討伐に向かっている。
リュンもその中に居るので、時間が経てば戻ってくる筈だ。
「え?精霊だけでは無くエルフまで?」
ルリーフは自分と同じ種族であるエルフまで居るとは思わず驚いている。
「ああ、当然エルフに対しても危害なんて加えてないぞ。」
ミズナもリュンも同じ目的を持った仲間だ。
種族の違いは気にせず、普通に接している。
普段の様子を見てもらえば、フレアーナとルリーフも納得出来るだろう。
「一先ず和解したと言う事で良いのでしょうか?」
状況が今ひとつ分かっていないネオンが櫓に尋ねる。
ミズナも戦闘が起こる雰囲気では無くなったと判断して、二度寝する為に馬車の中に戻っていった。
「いいんじゃないか?後はお前達の判断に任せるが、ロジックに向かいたいなら、少し待ってみるといい。」
櫓はボックスリングの中からテーブルや椅子を出しつつ言った。
元々は櫓の所為で争い事に発展してしまったので、護衛依頼の件を頼むのならば引き受けるつもりであった。
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