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うっかり女神に邪神討伐頼まれた  作者: 神楽坂 佑
1章 異世界転生
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331話 狙撃手の眼

目玉商品であるSランクの魔石は奪われてしまったが、死者は一人も出さずオークションは終わった。

オークション経営側は損害に涙していたが、魔石以外の取り引きも無事に全て行われて、落札した商品と大量の金が櫓の下にきた。

その後はオークション襲撃の犯人についての聞き込みや捜索を街の警備員達が行っていたが、既に追うのは難しいだろう。

櫓達は魔人と交戦していると言うシルヴィー達を案じて、急いで街の外に向かったが、同じ様に向かってきたのかシルヴィーと合流した。

街の外での戦闘は殆ど終わり、低ランクの魔物が少し残っているだけだったので、任せて助太刀に向かってきてくれたらしい。


「皆さん無事でしたか、よかったですわ。」


シルヴィーは櫓達の姿を確認して言う。

櫓、ネオン、カナタの三人が居ながら、ミズナに救援を求めてきたので、大分心配を掛けた様だ。


「心配掛けて悪かったな、全員無事だ。ほんと災難だったぞ。」


まさかオークション会場が襲撃されるとは思っていなかった。

会場には冒険者や雇用している傭兵等が配置され、部外者の侵入を防いでいる。

実力もそれなりのものなので、簡単に突破される事は無いが、黒尽くめの男に難無く全員倒されて、今回の事態を引き起こしていた。

しかし黒尽くめの男は、櫓達でさえも苦戦する猛者なので、警備に当たっていた者達を責めるのは可哀想だろう。


「二人が駆け付けてくれていなかったらと思うとゾッとします。」


ネオンは自分の身体を抱きながら言う。

呪いによる熱で動けなくなっており、放置されていたとしても上がり続ける体温に身体が耐え切れなかったかもしれない。

床に倒れている間も朦朧とする意識の中で、櫓のピンチを感じていたので、余計に安心していた。


「間に合ってよかった。ミズナ様に急に言われた時は驚いたが。」


ミズナは櫓から精霊の腕輪で救援を受けて、直ぐにシルヴィーとリュンに状況を伝えて、一人に付いてきてほしいと言っていた。

それ程の敵が街中に居るとなると驚かずにはいられない。


「街にまで入り込んでいるとは思いませんでしたわね。」


魔法都市マギカルは五大都市の一つである。

警備体制や検問もしっかりと行われてはいる。


「鉱山都市ミネスタの一件もある。五大都市だからと言って、警備体制が万全である訳では無いって事だな。」


巻き込まれる形となって知ったが、貴族の令嬢がスキルによって無自覚催眠状態の様になっている場面に遭遇した。

魔法道具を破壊する事によって正気に戻す事は出来たが、この事件も五大都市の一つで起きた事なのだ。


「拠点に到着しましたら、街の警備強化をお父様に頼んだ方がよさそうですわね。」


櫓達が向かっている城塞都市ロジックも五大都市の一つだ。

シルヴィーは領主の娘なので、簡単に意見を言う事が出来る。

自分の生まれ育った街を荒らされるのは許せないだろう。


「此方に黒尽くめは来なかったか?」


リュンがシルヴィーに尋ねる。

シルヴィーもオークション会場に向かってきていたので、黒尽くめの男の逃げる方向によっては鉢合わせた可能性もあった。


「私は見かけていませんわ。」

「そうか、敵討ちをしたかったのだが。」


遠くを見つめながら残念そうにリュンが言う。

敵討ちと言うのは同胞であるエルフの事だ。

黒尽くめ達がティアーナの森に侵入した際に魔人の実験として、一人のエルフが殺された。

罪無き同胞の無念を晴らす為、誰よりも倒したいと思っていたのだろう。


「奴らは魔王崇拝者だ。また戦う事もあるだろうし、機会は巡ってくる。今は少しでも強くなれ。」


そう言って櫓はボックスリングから恩恵の宝玉を取り出す。

リュンに使わせようと思っていた遠見の魔眼のスキルだ。


「何だ此れは?」

「恩恵の宝玉と言って、使用するとスキルを得られる魔法道具だな。」


リュンは見た事が無かったので、魔力を流す事によってスキルを覚えられると説明する。


「使用する事によって、視覚距離を伸ばすスキルが手に入りますわ。しかし魔眼系統のスキルを得ると私の様にオッドアイとなりますが、問題ありませんか?」


シルヴィーは自身の目を指差して言う。

魔眼持ちは櫓の神眼のスキルの様な例外以外、必ずオッドアイとなる。

シルヴィーの場合右目が緑色、左目が白に近い薄い緑色となっている。


「目の色が変化するくらい構わない。」


そう言ってリュンは魔力を流す。

恩恵の宝玉が砕け散り、中にあった小さな光りが漂いながらリュンの中に吸い込まれて消えていく。

それと同時にリュンの青い瞳の左側がより一層濃くなり藍色の様になった。


「これでスキルが増えましたね。」

「おお!本当だ、遠くの景色を見る事が出来ている!」


リュンは遠見の魔眼を使って遠くの景色を視ている。

初めて使った時の感動は櫓も覚えている。


「エルフにとっては使い勝手が良さそうだろう?」

「そうだな、感謝する。」


遠距離攻撃の魔法を得意とするエルフにとっては相性が良いスキルである。

光剣弓の魔法と組み合わせれば、強力な狙撃手の様に立ち回れそうだ。

リュンは新しい玩具を与えられた子供の様に何度も遠見の魔眼を使用していた。

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