51話 魔法道具屋さん
「オークションに参加するには運営に携わってる人の協力が必要なのよ?なんで私に?」
櫓のオークションと良う言葉にアリーネは固まったが直ぐにいつもの調子に戻って問いかけて来た。
「しらばっくれるな、グランツから聞いてアリーネがオークション関係者だってことは知っている。」
櫓の言葉を聞いて小声で「あのおしゃべりグランツ〜。」と愚痴を零している。
「な、何かの勘違いじゃない?それかグランツにからかわれてるのよ櫓君。」
「そう言えば俺達が飲み食いした値段金貨で約六枚分だってよ。受付嬢の給料で金貨二枚も一食に払うなんて大変だろうな〜。」
説明口調で言いつつアリーネをチラッと見る。
「うっ・・・。はぁ、わかったわよ。私がオークション関係者なのは認めるけど、商品の直前での持ち込みは原則禁止だから無理よ。」
「原則禁止なだけで、やってるやつはいるんだろ?ベテランなんだからなんとかしてくれよ。」
「それはいないことはないけど、て言うかあのおしゃべりどこまで勝手に話してるんだか、一応私が関係者っての機密事項なのよ?」
「大方オークションでの不正な取引とか行われない様に、監視的な意味でギルドが関わってるんだろ?」
「ちゃんとわかってるんじゃない。オークションの他の関係者でも私のことを知ってるのは、重役の一部だけなのよ?だからその監視役がルールを破る様なことはできないのわかるわよね?」
「関係者が出品と言うことにすれば少しは融通が効くんじゃないのか?」
「むぅ〜、そりゃたまに私も参加することはあるけど、うーん。」
できなくはなさそうだが、アリーネの反応はイマイチである。
櫓がどうやって了承させるか少し考えているとネオンが席を立ち上がり頭を下げた。
「アリーネさん、お願いしますオークションに参加させてください。櫓様が私のために色々考えてくださってますけど、元々これは私のせいなんです。」
「ん?ネオンちゃんのせいってどう言うこと?」
ネオンがバラしてしまったし、次の良い考えも特に浮かんでなかったので、ネオンに任せて櫓は黙り込む。
ネオンがお金が必要になった経緯をアリーネに説明していく。
アリーネは説明を聞き終わるとネオンを抱きしめて、えらいえらいと頭を撫でている。
「そう言う理由があるなら最初から言ってくれれば良いのに、そしたら協力くらいなんとかするわよまったく。」
「ありがとうございますアリーネさん。」
「グランツに参加募集は締め切られてるから何か考えないと断られるぞって言われたんだよ。」
「こんな理由があるのに断れるわけないじゃない。」
「て言うか参加自体させることができるなら、最初から許可を出せよな。」
「一応募集は締め切られてるから色々面倒なことしなきゃいけないから、はいわかりましたなんてならないのよ。ネオンちゃんのために特別なんだからね。」
「本当にありがとうございますアリーネさん。」
「まあ参加させてくれるんだし感謝はしておく。そう言えば売る方だけじゃなく買う方も参加できるのか?」
「二人とも私の付き添いって事にしておくから大丈夫よ。売買する時の名前は私になるけど。」
「了解だ。」
それからオークションに関することをアリーネから色々と教えられる。
大きな金が動くので、ルールは結構細かくて多い。
しかし関係者のアリーネと行動を共にするらしいので、覚えきれなかったところは全部カバーしてもらおうと決めていた。
「そう言えば何を出品するの?参加できても高価な物を出品出来なければ結局意味ないわよ?」
「こいつを出品しようと思っている。」
櫓はボックスリングから火耐性Lv三の指輪を取り出し、アリーネに渡す。
「どれどれ、鑑定。」
アリーネもグランツと同じように鑑定のスキルを持っている。
手に入りやすいスキルなのか、鑑定のスキルは商売に関係している者は大体所持している。
「へぇ〜、火耐性Lv三の指輪か。中々良いわね、オークションなら金貨四枚は堅いかな?」
「四枚かそこそこいくんだな。」
「でも金貨三十枚稼ぐには程遠いわよ?」
「そんなことはわかってる。」
櫓はボックスリングから次々と火耐性Lv三の指輪を取り出して、アリーネの前に並べていく。
その量の多さに目を丸くしている。
それとは別に、火攻撃Lv三のブレスレットも取り出して並べていく。
どちらも三十個ずつある。
アリーネがギルドから出てくるのを待っている間に、ぱぱっと作っておいた物である。
「な、なんでこんなに沢山魔法道具があるの?」
「俺が作ったからだな。」
「これを櫓君が?冒険者やめて錬金術師として生きていった方がいいんじゃない?」
「まあ今はその話は置いておいて、どうなんだ品物的には?」
「問題ないわね。同じ物が沢山あるけど、需要はあるから全部売れると思う。」
「なら問題ないな、これはもう渡しとけばいいのか?」
「会場に来た時で大丈夫よ。」
「わかった。」
指輪とブレスレットをボックスリングにしまう。
それから明日の待ち合わせ場所や時間の確認をしてお開きとなった。
「櫓様、本当にありがとうございました。私だけではどうすることもできませんでした。」
宿に戻るとネオンが深々と頭を下げてお礼を言ってくる。
「気にするな、仲間なんだからいくらでも俺を頼れ。」
頭を撫でてそう言ってやると、嬉しそうに返事をしていた。
明日に備えて早めに休もうと言う事になり、ベッドでオークションの事を考えながら寝る。
(指輪とブレスレット、一つ金貨三枚としても百八十枚か。十分だが金はあるに越したことはない。明日起きてから何か目玉商品になりそうな物でも作ってみるか。)
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