323話 異世界での再会
「それで俺は何をすればいいんだ?」
聖獣召喚のスキルで精霊界から呼び出せる聖獣はランダムだ。
しかしミズナは櫓の協力を得て、特定の聖獣を呼び出すつもりらしい。
「精霊魔法を使う・・・。」
精霊魔法とは精霊と契約を交わした者が使える特別な魔法である。
契約した精霊と協力して、想像した通りの現象を引き起こすと言う、何でもありの魔法だ。
しかし引き起こす現象が大規模になる程魔力を多量に使用し、足りなければ発動はしない。
「成る程、ランダム要素を精霊魔法を使って排除するって事か。」
想像した通りの現象を引き起こせるので、スキルの能力も変えられる筈だ。
「スキルの改造を希望する・・・。」
「分かった、精霊界から希望する聖獣を召喚するみたいな変更でいいか?」
精霊魔法を使い、ミズナが求める聖獣を呼ぶ為の手段は幾つかあるが、現象の規模で消費魔力が変わってくるので、直接精霊界から呼び出すみたいな方法は使えない可能性が高い。
「いい・・・。」
そう言ってミズナが手を差し出してくる。
精霊魔法を使う時は、契約をした精霊と手を繋がなければならない。
ひんやりとした手を繋いで、現象を想像する。
「精霊魔法・改変!」
ミズナの得たスキル、聖獣召喚の説明が頭の中に浮かんできたので、文字を付け足して新しい能力を変える。
スキルの改変を終えると虚脱感が一気に押し寄せてきた。
「うっ。」
立っていられない程で、櫓は思わず地面に膝を付く。
櫓の手を握っていたミズナも苦しそうな表情だ。
「大丈夫ですの!?」
「ワンワン!」
シルヴィーと小太郎が心配しているが、意識が朦朧としており声が遠く聞こえる。
櫓は応答する前に最後の力を振り絞ってボックスリングからポーションを取り出して一気に煽る。
そしてミズナにもポーションを渡して飲ませる。
「ふぅ、心配無い。ただの魔力切れだ。」
久々の魔力切れだが、やはり気分がいいものでは無い。
油断していた訳では無いが、魔力がこれ程奪われると櫓は思っていなかった。
精霊魔法は櫓とミズナの二人分の魔力を使用するのだが、普通の人間よりも遥かに多い魔力量を持つ櫓と、膨大な魔力量を持つ水の精霊ミズナの二人分を合わせれば、中々魔力が切れるという事は無い。
つまりスキルの能力改変は、相当規模の大きい現象と言う事になる。
(まあ、普通はそうだよな。スキルの内容を簡単に変えれたら、世界中超人だらけになってしまう。)
今回が初の試みだったので良い勉強になった。
本当は上手く行けたら、仲間達のスキルも上位互換となる様に改変しようなどと考えていたのだが、少し変えただけでこの有様では難しいだろう。
「変わってる・・・?」
「ああ、内容が変わってる。これならミズナの希望する聖獣が召喚出来るだろう。」
ミズナに問われて調査の魔眼で確認したが問題は無い。
これで今後聖獣召喚のスキルを使えば、望む聖獣を呼び出せる様になった。
「ご主人、感謝する・・・。」
ミズナはそう言って頭を下げる。
「余程会いたい方がいますのね。」
「私の相棒だから・・・。初めて仲良くなった子・・・。」
ミズナは思い出しているかの様に遠い目をしている。
女神カタリナにいつ頃召喚されたかは分からないが、年単位の月日は流れていると思われる。
「だったら聖獣の方も会いたがってるだろうな。早速召喚してみるか。」
「分かった・・・。」
ミズナは手を突き出して聖獣召喚のスキルを発動させた。
地面に魔法陣が浮かび上がり、中央から何かが競り上がってくる。
馬の様な見た目をしているが、額には立派な渦巻く角を生やしている。
突然召喚されたからか、辺りをキョロキョロと見回している。
「久しぶり・・・。」
「ブルルル!」
ミズナが声を掛けると、聖獣は瞬時に反応して飛び掛かった。
久しぶりに会ったので嬉しいのだろう。
「だ、大丈夫ですの!?」
「痛い・・・。でも嬉しい・・・。」
聖獣の熱烈なタックルで吹き飛ばされたミズナをシルヴィーは心配したが、本人は痛がりつつも笑顔で聖獣を撫でている。
「ヒヒーン!」
聖獣はミズナに撫でられて嬉しそうに鳴く。
「馬の聖獣か。久しぶりに会ったとは思えない程に懐いているな。」
「相当可愛がっていたのではありませんか?ミズナさんは馬がお好きでしたし。」
櫓が改造した馬車を引く馬にも最初から興味を示していた。
普段食べるか寝るかと言ったニートの様な生活をしているミズナも、御者や馬の世話だけは自ら進んでやっていた。
馬達に聖獣の存在を重ねていたのかもしれない。
「成る程な、理由はこれだったのか。」
これ程仲の良い姿を見せられると納得もいく。
ミズナに無邪気に戯れている聖獣を見て、とてもそうは見えないが相当な魔力量を秘めている様だった。
これでミズナの戦闘力が更に高まったと言えるだろう。
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