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うっかり女神に邪神討伐頼まれた  作者: 神楽坂 佑
1章 異世界転生
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317話 肉の暴力

二人が帰ってきた後、得られた宝箱を全て櫓のボックスリングに収納して上階層を目指す。

日が沈んだくらいの時間帯なので、日が変わる前にはダンジョンの外に出られるだろう。

普通の冒険者であれば地図を持っていたとしても、魔物との戦闘や罠の警戒等に時間を取られて、一日以上は掛かる道のりだ。

そんな距離を数時間で進むのは、櫓達の様なAランク級のパーティーだけだろう。

順調にダンジョンを戻っていき、トラブル無く出られた。

夜だというのにダンジョンの出入り口は冒険者の行き来が激しい。

ダンジョンの中は昼夜関係無いので、時間を問わずいつでも冒険者が入っていくのだ。

なので冒険者をターゲットにしたダンジョン近くの屋台も、昼だけで無く夜も営業している店が殆どである。


「く〜、久々の地上です〜。」


ネオンが隣りで大きく身体を伸ばしながら言っている。


「流石に冒険者ギルドは空いていないだろうな。」


冒険者ギルドの窓口での取り引き時間は決まっており、夜はやっていない。

櫓は頼んであった素材の代金の受け取りと鑑定のスキルが封じられた恩恵の宝玉の買い取り依頼を出したいと思っていたのだ。

恩恵の宝玉に関しては既にダンジョンから大量に手に入れてはいるのだが、それでも大所帯となった商会の者達全てに配るとなると全く足りない。

オークションを終えても数日滞在するので、急ぎでは無いのだが早めに依頼は出しておきたかった。


「既に時間は過ぎていると思われますね。どうしますか?皆の元に戻りますか?」

「そうだな、明日には皆にも手伝ってもらう事になるし。」


櫓達は魔法都市マギカルの外に止めてある馬車を目指す。

多くの仲間達が滞在中そこで寝泊まりしている筈だ。

しかし制限を掛けている訳では無いので、櫓達の様に出歩いている組も幾つもあるだろう。

日もすっかり落ちているので、皆寝ているかと思ったが、馬車を止めてある場所には幾つも明かりがあった。


「皆何かしているみたいですね。」

「刃物で何かを切り分ける音が聞こえます。おそらく解体作業でしょう。」


カナタが獣耳をピクピクと動かして聞き取りつつ言う。

流石は五感が鋭い獣人だ。

人間の櫓には音なんて一切聞こえない距離である。

近付くにつれてカナタの言っていた音も聞こえてくる。

様々な場所で解体作業が行われており、魔物も中々の大きさだ。


「あら?戻られましたのね、お帰りなさい皆さん。」

「ワン!」


近付いてくる櫓達に気が付いたシルヴィーと小太郎が出迎えてくれる。

シルヴィーの大きな胸の間にフィットする様に小太郎が抱き抱えられている。

本当はダンジョンに小太郎も連れていこうかと思ったのだが、ダンジョンでは何が起こるか分からないので今回は見送った。

実際効果があったかは分からないが、誘惑の状態異常に反応して暴れられていたら、被害は大きくなっていたかもしれない。


「ただいま、ダンジョンでの収穫はバッチリだ。て言うか何かあったのか?」


シルヴィーが呑気に小太郎を抱き抱えているので、危険な状況では無さそうだが、周りの解体作業が気になる。


「今日の夕方頃に魔物から襲撃を受けたのですわ。魔法都市からも多少離れていますし、魔物にとって良い獲物と見えたのでしょう。」

「成る程、魔物側は運が無かったな。」


馬車を止めてある場所には少なくてもシルヴィーとミズナは常駐している。

並大抵の魔物では相手にならないだろう。


「そうですわね。数は多かったのですが、最近戦闘能力が上がってきた獣人の皆様も居ますので、一方的な狩りとなりましたわ。」


馬車移動の最中に戦い方を獣人達に仕込んでいるので、元々の身体能力もあり中々の実力になっているのだ。


「怪我が無くてなによりだ。飯は済ませたのか?」

「これからですわ。魔物の襲撃で食べている暇がありませんでしたの。ですが好都合でしたわね。」

「ワンワン!」


周りに居る者の中で一番美味しい料理を作れるのが櫓なので、シルヴィーもどうせなら櫓が作った物を食べたい。

小太郎もお腹が空いた様で、ご飯を催促している。


「分かった分かった、俺が作ればいいんだろ。」


飯作りに駆り出されるのはいつもの事だ。

最近は獣人のお母さん方に料理を教え、協力してもらっている。

これにより大人数様の料理のストックはボックスリングの中に結構溜まっているのだ。


「それと襲撃してきた魔物の大半はオークでしたから、食材にピッタリですわよ。」

「オークのストックが増えるのは有り難いな。トラップフィッシュと一緒に使うか。」


オークも美味しく食べられる魔物の一つだ。

オークは人形で顔が豚の様な見た目をしており、肉の味は殆ど豚肉である。

なので豚肉を使った料理に幅広く使えて、重宝する食材なのだ。

早速料理出来る者を数名集めて取り掛かる。

作業方法を教えて皆で取り掛かれば、百人分程の料理でも手早く完成させられる。


「出来たぞ、食いたい奴は一皿ずつ持っていけ。」


今回作った料理は異世界カレーだ。

元々作っておいたカレーにオーク肉の豚カツを乗せ、トラップフィッシュの唐揚げを添えたボリューム満点な一品である。

夜にこんなにも重い物を食べるのは、元居た世界では体重を気にして遠慮する者もいそうだが、当然此方の世界には適応されない。

毎日激しい運動をしている様なものなので、夜であっても栄養がある料理は喜ばれる。

食した老若男女全員が大満足する程に異世界カレーは絶品だった。

大分ボリュームがあった筈なのだが、多数お代わりを希望されたので、櫓は食後に豚カツと唐揚げ作りに注力する事になった。

美味し過ぎる料理を作るのも考えものだなと思ったのだった。

閲覧ありがとうございます。

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