314話 戦力差を覆す強さ
「櫓様どうしますか?」
櫓と同様煙から退避していたネオンが聞いてくる。
カナタは風魔法で煙を吹き飛ばしてくれている。
八階層から降りてくる階段の直ぐ近くなので、知らずに降りてきた冒険者の二次災害にならない様に配慮してくれていた。
「取り敢えず冒険者達を移動させるぞ。放っておけば大量に死者が出るからな。」
トレインパーティーはクロード達が追ってくれているので、櫓達も追う必要は無い。
なので手分けして冒険者達を守る事にした。
寝ている無防備な者達と誘惑状態の実力的に厳しい者達はセーフティーゾーンの階段に移動してもらう。
そして残りの者達は武器を構えて待つ。
既に神眼のスキルで遠見の魔眼を選択した櫓には、様々な方角から此方に向かってきている大量の魔物達が視えている。
全員で階段に移動しないのは魔物の数が問題だった。
このままにしておけば、階段の周りが魔物で埋まってしまい、九階層に降りる事も八階層に上がる事も出来無くなってしまうからだ。
「全体数は百を軽く超えているな。しかも中にはBランクの魔物も混ざっている。」
戦闘に参加している冒険者の数は、櫓達を含めて十人にも満たないので十倍以上の差がある。
櫓から情報を聞いた周りの冒険者達は気分が沈んでいく。
Bランクの魔物ですら簡単に倒せる訳では無いのに、魔物の数が自分達の十倍と聞けばやる気も無くなってくるだろう。
「ご主人様、私とネオンが先行するのは如何でしょうか?」
「それいいねカナ姉。私達なら油断しなければ負けないしね。」
冒険者達の避難を終えたカナタが櫓に提案してくる。
ネオンとカナタは、煙を吸っていないので状態は平常のままだ。
なので誘惑状態の者が居る現状で集中的に狙われる事は少ない。
そして相手は最高でBランクなので、二人が遅れを取る事は無さそうだ。
更に階段近くに魔物達が来るまでに数をある程度減らしておけば、他の冒険者達の負担も減る。
「そうしておくか。俺は一応残るから暴れてきてくれ。」
近接、中距離、遠距離、防衛と様々な戦闘に対応出来る櫓は冒険者達の側で戦う事にした。
ある程度戦いながらでもサポートは出来るので、近くに居れば危険な者達も助ける事が出来る。
「「分かりました!」」
二人は得物を構えて向かってくる魔物達に突き進んでいった。
スキルや魔法を使用して広範囲の魔物達を倒してくれている。
「おっ!」
向かってくる魔物の中に一際大きいのを見つける。
巨体なのに進行速度が速くて一番最初に到着しそうである。
その魔物は前回のダンジョン探索でお世話になったトラップフィッシュだった。
前回は地中に埋まっているだけだったので、地上を移動している姿は見ていなかった。
誘惑の効果でアクティブになっているのだろう。
迫り来る巨大なトラップフィッシュに冒険者達は怯えている。
「そんなに速く動けたんだな。だがお前を倒すのは簡単だ。雷撃!」
櫓は雷帝のスキルで手に雷を纏わせて放つ。
放たれた雷は向かってきていたトラップフィッシュの、擬態能力がある触角に向かっていき爆散させる。
直後トラップフィッシュの速度は緩まり、身体中から血を噴き出して地面に倒れた。
他にもトラップフィッシュが数体向かってきていたので、同じ方法で倒していく。
トラップフィッシュの弱点が触角なのは、前回の宝箱探しの時に知っていた。
巨体故に普通の冒険者では簡単に触れられない高い位置に触角があるのだが、雷帝のスキルを持っている櫓には大した問題にはならない。
周りに居る冒険者達も櫓達が魔物を次々と倒していくので、沈んでいた気持ちが幾分か良くなった様だ。
「俺達が撃ち漏らした奴等は任せる。攻撃を受けない様に互いに協力してくれ。」
「分かった!」
櫓以外の戦闘に参加している冒険者達が、パーティーは違えど協力して魔物を倒していく。
と言ってもネオンとカナタが相当な数を相手にしてくれており、櫓も雷帝のスキルを使って遠距離攻撃で仕留めまくっている。
なので階段近くまで辿り着ける魔物は少なく、比較的安全に戦えている。
十分も掛からず階段近くの魔物達は一掃され、ネオンとカナタが相手をしていた残った魔物も、櫓が加わった事により一気に片付いた。
結果として見れば、九階層に蔓延っていた大量の魔物を相手に、怪我を負った者は軽傷で済み死者も無く戦いを終えられた。
「有り難う、君達が居なかったら倒す事は難しかった。」
戦闘を終えた後にトレインパーティーについて親切に教えてくれた冒険者の男が言ってきた。
周りの冒険者達や階段に避難していた者達も次々に感謝してくる。
狩場としている九階層が使えなくなるのは皆困るのだ。
「俺達が巻き込んだ様なものだからな。」
「いや、皆あのパーティーには迷惑していたんだ。スカッとしたくらいさ。是非謝礼をさせてくれ。」
冒険者の男はそう言って鞄の中を見せる。
ダンジョンの中なので皆宝箱から入手した物を提示してくる。
特に珍しい物は無かったが、鑑定のスキルの恩恵の宝玉を持っていた。
「丁度鑑定のスキルを集めていたんだ。貰えるなら恩恵の宝玉を有り難く頂く。」
「鑑定のスキルを集めているとは変わってるな。もう幾つかあるから持っていくといい。」
他のパーティーとも同じ様なやり取りを行い、鑑定のスキルの恩恵の宝玉を大量に入手する事が出来た。
皆本当に其れでいいのかと言った反応だったが、櫓としては思わぬ収穫に喜んでいた。
閲覧ありがとうございます。
ブックマークやポイント評価よろしければお願いいたします。




