49話 奴隷に優しいご主人様
急いで来たのか汗をかき息が乱れているので、椅子に座らせて落ち着かせる。
「ほらネオンちゃん、水だ。」
「あ、ありがとうございます。」
ネオンはグランツからコップを受け取り水を一気に飲み喉を潤す。
ふぅと言う溜息をつき取り敢えず落ち着いた。
「それでそんなに慌ててどうしたんだ?」
「はい、実は・・・。」
それからネオンが今日起こった事を話し聞かせる。
奴隷を買うことになってしまったこと、奴隷商人に金貨を三十枚請求されたこと、持ち金が足りないことなどだ。
奴隷が主人の許可もなく勝手にお金を使い込んだり、使う約束をしてしまったりするのは当然御法度である。
しかし櫓は異世界出身であるため、そこらへんの考えはこちらの世界の人とかなり違っているため、ネオンの話を聞いても特に怒ったりということはない。
いずれは櫓も自分の目的である邪神討伐の情報収集のために、奴隷を使うことも視野に入れていた。
しかしまだ予定はしていなかったのと、子供ばかりだと言うことで、どうしようかと考えていた。
(子供の奴隷が三十人か、さすがに子供ばかりの集団に情報収集なんて任せられないしな。大人の奴隷も欲しいところだ。そしてそれだけの人数の衣食住もあるし、どうしようかな?)
櫓が思案顔で黙ってしまったので、怒ってると勘違いしてしまったネオンが土下座して謝りだす。
「本当に勝手な事をしてしまい申し訳ありませんでした。」
「おいおい櫓、こんなに謝ってるんだ許してやれよ。それにお前なら金なんて幾らでもすぐ稼げるんだし、それくらい出してやれよ。」
「勘違いするな、別に怒ってるわけじゃない。だからネオンも顔を上げろ。」
「怒ってないんですか?」
「そんなことで一々怒るか。購入することになった子供達をどうしようかと考えていただけだ。」
ネオンは見てわかるほどに安堵している。
今回のことで愛想尽かされて捨てられてしまうのではないかと思っていたためだ。
「まあその子供達をどうするかは後で考えておくとして、ネオン今いくら持ってるんだ?」
「金貨九枚と銀貨が少しなんです。なので必ず返しますので櫓様にお金を貸していただけないかと思いまして。」
「なるほどな、俺も貸してやりたいところなんだが、今手持ちはほぼない。元々持ってた白金貨も含めてグランツに注文の品の代金としてほとんど支払っちまったからな。」
「そうですか、では今から依頼をこなして稼いで来ます。」
「おいおいネオンちゃん、さすがにそれは無謀だろ。金貨二十枚も明後日までに稼ぐのは無理だ。」
「同感だ、俺も出向けば可能かもしれないが、ネオン一人では無理だから諦めろ。」
どうしても奴隷の子供達を助けたかったネオンだが、グランツと櫓に言われシュンとしてしまう。
自分でも無茶な稼ぎ方をしてもそれだけのお金を短期間で稼ぐのは厳しいだろうとは予測していた。
「まあ諦めるのは危険を犯して金を稼ぐ事をって事だ。子供達の事じゃないから安心しろ。」
ネオンは俯いていた顔をガバッと上げて期待のこもった目で櫓を見ている。
「しかし金貨二十枚もどうするんだ?櫓が依頼でも受けて稼ぐのか?」
「そんな面倒な稼ぎ方してられるか、それに金貨二十枚程度じゃ足りないんだよ。その後の三十人分の衣食住のこともあるし、かなり金が必要になる。」
「ううう、すみません。」
「もう気にしてないから謝るなネオン。」
「それでどうやってそんな大金稼ぐんだ?」
「さっきそういう話してただろ、これだよこれ。」
櫓は手に持っている火耐性Lv三の魔法道具の指輪を指差して言う。
「さっきグランツが上級冒険者でも欲しがる奴は多いって言ってただろ?こいつを量産して店に売ったらすぐ大金が手に入る。」
「それは少し難しいかもしんねーな。確かにその魔法道具は売れるだろうぜ。だが店がそれを仕入れる段階の値段が既に高い。店にもよるが金貨二〜三枚はするだろう。そしてお前から仕入れたとしても直ぐに売れるかは分からないから沢山買うこともできない。金貨をそう簡単にポンポン出せるデカい店なんて北門の方にある商会くらいしかないからな。それに高価な物は店売りよりも多く稼ぐ手段もある。」
「ん?なんかあるのか?さっさと教えてくれ。」
「お前には俺も稼がせてもらってるから特別だぜ、と言ってもこの街にいるやつなら大半は知ってると思うけどな、それはオークションだ。」
「オークションか、確かにそれなら稼げそうだ。」
「オークションは週の終わりに毎週やってる。ちょうど明日だな。ただし平民の俺たちではオークションに参加すること自体結構難しい。大金が飛び交うような所だから、貴族や大手の商人、上級冒険者みたいな金を持ってる連中しか参加資格はねーのさ。参加募集も既に締め切られてるだろうしな。」
募集が締め切られてるのであれば、櫓達は自分達で参加することはできず、お金を稼ぐことができない。
「じゃあどうするんだ?代役でもたてるのか?」
「まあそんなとこだ、オークションに詳しいベテランを紹介してやるよ。お前達もよく知ってるやつだ。」
「俺達が知ってるやつ?」
「どなたでしょうか?」
櫓とネオンは顔を見合わせて考えているが、それらしき人物に心当たりがない。
貴族とかも参加するらしいから、シルヴィーやリンネかとも思ったが、グランツにはその二人との関係性について話していないので知らないはずである。
「アリーネだよ。」
グランツがニヤニヤしながら教えてくれた。
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