307話 上客歓迎
「魔法都市マギカルのオークションに参加出来る、ご主人様専用の会員証ですか。」
「な、なんで櫓様が持っているんですか!?」
人間世界での暮らしが短いカナタには価値が分からない様だが、ネオンは驚いてくれた。
会員証は経営側かオークションでの多額の売買を行える者にしか配られない。
なので平民のオークションへの参加権は元々無いに等しく、貴族や大商人向けの催し物なのだ。
「前回のオークションを覚えているか?」
魔法都市マギカルを訪れるのは二度目だ。
そして前回もオークションには参加している。
「当然です、私は会場に居ませんでしたが、フェリン様を落札していましたよね?」
ティアーナの森の姫であるフェリンと出会ったのがオークションだった。
森の結界外に出たところを人間に捕まってしまい、オークションの商品として売られた。
櫓はオークションにて奴隷が出品されている際、犯罪奴隷では無い者達は全て落札するつもりでいる。
自己満足なのだが、持て余している金で人の境遇を良く出来るのならばと、此方の世界で一般的では無い事だと分かっているが、仲間達も同意見なので続けていくつもりだ。
そしてフェリンも偶然奴隷として出品されていたので、櫓が他の者達と一緒に落札したのだ。
「フェリン様?」
カナタが疑問の表情を浮かべている。
フェリンとは鉱山都市ミネスタに到着する前に別れたので、カナタを購入した時には居らず出会っていない。
「そう言えばカナ姉は会った事がなかったね。フェリン様はエルフの村のお姫様で、人間に非合法に捕まってしまったところを櫓様が助けたの。」
「流石はご主人様です!我々獣人だけで無く、エルフまで救っておられたとは!」
ネオンの説明を聞き、櫓の事を神様でも見るかの様にキラキラとした目で見ながら言う。
カナタの中での櫓は、正に聖人君子と言った印象なので、評価は高まるばかりである。
「偶然だ、元々知っていた訳でも無かったしな。だがフェリンを落札した事がきっかけなのは間違い無い。」
手に持っている会員証は、前回のオークションが関係していた。
「会員証を貰った事と何の関係があるんですか?」
「オークションでの落札額、そして出品した数々の物で注目されたらしい。」
前回のオークションにはダンジョンから持ち出した様々な物を出品した。
付加付き装備品や恩恵の宝玉等、価値の高い物が多くて櫓の商品だけでもオークションは大いに盛り上がった。
更に櫓は出品だけで無く、多数の落札もしていた。
奴隷以外にも貴重な素材や魔法道具等も落札して、合計で白金貨九枚近くの値段となった。
オークションで一度に取引される額としては最高額と言える値段に経営側から話しを持ち掛けられたのだ。
「つまり会員証を貰ったのは高額の売買の結果ですか。」
オークションでの売買には手数料が発生し、経営側にもお金が入る。
高額の売買が多ければ経営側も儲かる事になるのだ。
なので櫓の様な者が現れた時は、経営側から会員証を渡してオークションへの参加権を与えている。
「ああ、街にずっと滞在している訳では無いと言ったんだが、寄った時に参加してくれればいいと言うから貰ったんだ。」
旅をしながらの櫓は一ヶ所に長い事留まる事は無い。
なので毎回オークションに参加は出来無いと言ったのだが、全く問題は無いと言うので受け取った。
「よかったですね、オークション参加し放題じゃないですか!」
「残念ながらマギカルだけだけどな。」
櫓か言う通り貰った会員証は魔法都市マギカルのオークション専用の物だった。
なので他の街のオークションには使う事が出来無い。
しかし会員証を得られる条件は分かったので、参加さえ出来れば二度目からは心配無いだろう。
「オークションで何か手に入れたい物があるのですか?」
櫓には様々な魔法道具を作るスキルがある事をカナタも知っている。
櫓の作った馬車を見た時は、全く見た事も無い魔法道具の数々に驚いた。
欲しい物は大抵櫓であれば自作出来るので、欲している物が気になったのだ。
「そうだな、欲している物は多い。此処だと恩恵の宝玉とかな。」
魔法都市マギカルの近くにはダンジョンが存在している。
そしてダンジョンの中から持ち出される物の中には、人間が作る事の出来無い物が幾つか存在するが、特に人気なのが恩恵の宝玉だ。
使用すると球の中に封じられているスキルを獲得する事が出来る効果がある。
スキルはそれぞれが様々な能力を持っておりピンキリである。
しかしスキルは恩恵の宝玉以外の手段で取得するとなると非常に難しい。
なので高価な魔法道具ではあるが、恩恵の宝玉を求める者は多いのだ。
他にも櫓は手に入り辛い素材系統が出品されるならば入札したいと考えていた。
と言うのも鉱山都市ミネスタで手に入れた転移の魔法道具が素材不足で壊れたままなので、いつでも使える様に直しておきたい。
貴重な素材も扱うオークションであれば手に入るかもと少し当てにしている櫓だった。
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