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うっかり女神に邪神討伐頼まれた  作者: 神楽坂 佑
1章 異世界転生
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297話 未知の食材

櫓達は鉱山都市ミネスタで有名なミネス盗賊団から助け出した女の子達を、拠点に向かうまでの通り道にある故郷の町に送り届ける為に向かっていた。

舗装されていない山道が続いており、櫓の改造した馬車以外は走ると酷く揺れるので、歩いて向かっている。


「本当にわざわざこんな山中まで有り難う御座います。」


櫓の隣りを歩く女性が礼を言ってくる。

ミネス盗賊団に捕まっていた中の一人で、ウララと言う名前だ。

年齢は三十歳を超えている人妻だが、見た目は若々しく二十代と言われても信じられる。

故郷の町への道案内として馬車を先導してくれているのだ。


「一応送り届けると言ったからな。多少の寄り道は問題無い。」


拠点に向かう道からは多少逸れているが、誤差の範囲内である。

歩いて数十分程であり魔物に襲われる危険もある為、護衛しないと言う選択肢は無い。


「山道を登るだけでしたら、ウララさんは馬車の中に居て頂いても宜しいのですよ?」


櫓とは逆側のウララの隣りを歩くシルヴィーが言う。

普段から鍛えていると言う訳でも無い様なので、今歩いている山道の登りは地味にキツいだろう。


「流石に最後まで任せきりと言うのは申し訳ありませんから。他の皆では失礼になってしまいますし。」


ウララは助けてもらった上に無償で故郷まで送り届けてくれる櫓達に非常に感謝していた。

自分達が何もする事は出来無いばかりか、男性に恐怖を抱いている他の者達が失礼な態度を取っているのに、旅の最中も色々と気を遣ってくれた

せめて自分にも出来る道案内くらいはしたいと、櫓達に自ら言ったのだ。


「理由が理由だからな。今は仕方が無いだろう。」


櫓も他の男性陣も理由は分かっているので、関係無いのに失礼な態度を取られても気にしていない。


「ウララさんも無理はいけませんわよ?」


シルヴィーがウララに向けて言う。

ウララも他の女性達同様酷い目にあってはいるのだ。


「無理ってのは俺の事かシルヴィー?」


櫓は軽くジト目でシルヴィーを睨みながら言う。


「名指しはしていませんわ。此の場に男性は櫓さんのみですけれど。」


櫓に睨まれていてもシルヴィーは何処吹く風と言った様子だ。

シルヴィーは稀に櫓を揶揄(からか)って遊んでくるので、櫓も本当に怒っている訳では無い。


「あはは、私なら大丈夫ですよ。皆さん優しい方ばかりなのは、旅の最中で分かりましたから。」


一応旅の最中に最大限気を遣った事が評価されている様である。


「辛いか疲れたら仰って下さいね。」

「はい、お気遣い有り難う御座います。」

「にしても随分と高所に町があるんだな。」


櫓はこれ以上揶揄われない為に話題を変える。

山の麓には街道もあるので、利便性を考慮して街道付近に町を作った方がよかったのではと思った。


「其れには理由がありまして、高所の方が食材の確保が楽なんですよ。」


なんでもウララの故郷の町の近くには、珍しい鳥が生息しているらしい。

山の頂上付近の様な高所にしか生息しておらず、山の麓には一羽もいないと言う。

其の鳥が産む卵や鳥自体が非常に美味であり、町の創設者があまりの美味しさに感動して、山の頂上付近に町を築いたらしい。


「珍しくて美味い鳥か、興味があるな。」


櫓はウララの言う鳥に興味が湧く。

戦闘狂と言う面がある櫓だが、元居た世界の頃から食にも拘っていた。

様々な料理を自分で作る事が出来、雷の剣の料理役も殆ど櫓が担当している。

他の者達も簡単な作業であれば出来るのだが、櫓に任せておいた方が美味しい物が出来上がると分かっているので、積極的に料理する者がいないのだ。


「このくらいではお礼にもなりませんが、是非食べていって下さい。味は保証しますよ。」


此方の世界にも鶏は存在していて、卵や鳥を料理に使うとなると一般的によく使われるのは鶏である。

鳥系統の魔物も料理に使われる事はあるのだが、一般人では自分で狩る事も難しいので、一般的とは言えない。

だが一般的では無い櫓が作る料理には、主に美味い鳥系統の魔物が使われるので、寧ろ鶏の様な普通の鳥を調理する機会の方が少ない。

此方の世界にきてから魔物動物問わず、鳥や卵を使った料理を沢山作ってきているが、新たな食材と言うのは惹かれるものだった。


「楽しみですわね。生息場所が限られる食材ですと、現地に赴かなくては食べられませんから。」


シルヴィーも櫓同様に期待している。

城塞都市ロジックの公爵家の娘と言う立場から、治めている土地を簡単に離れる事は出来無かった。

貴族として普段から豪勢な食事はしていたが、こう言った食材を食べる機会は無い。

櫓の様な無制限に物を入れて完全に中の時間が停止するボックスリングが一般的に流通していれば話しは違うが、そんな物は世界中探しても一つだけだろう。


「楽しみ・・・。」


直ぐ後ろから声が聞こえてきたので振り向くと、櫓達の乗る馬車の御者をしているミズナの口元から涎が垂れているのが見える。

身内の食いしん坊精霊に絶滅するまで食い尽くされないか少し心配になる櫓だった。

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