47話 同じ奴隷として
今回は初めてのネオンのお話です。
櫓とグランツが火耐性の魔法道具を作った日の出来事。
ネオンは朝に櫓と別れてから、櫓に頼まれた金稼ぎのためいつもの様にギルドで依頼をこなしていた。
「ネオンちゃんおかえり〜。」
「ただいまですアリーネさん、これ依頼書にあった素材です。」
「はーい、ちょっと待ってね。」
ギルドカードも一緒に差し出して、渡した素材と依頼書の確認をアリーネが行っている間にネオンは依頼とは関係ない魔物との戦闘で手に入れた素材なども、素材買取の別の受付でお金に変えてもらう。
「それではこちらが素材のお金となります。金貨六枚と銀貨四十六枚お確かめ下さい。」
「ありがとうございます。」
素材のお金を確認してると、アリーネが依頼書の処理を終えたので手を振って呼んでいる。
(うわっ、思ったよりも沢山貰えちゃった、嬉しい誤算ですね!)
「ネオンちゃんそんなにニヤニヤして随分貰えたみたいね?」
「えっ?別にニヤニヤなんてしてないですよ!」
「ふふっまあいいわ、はいこれ依頼書のお金とギルドカードね。」
「ありがとうございます。」
「それにしてもこんなに可愛くて沢山お金を稼いでくる奴隷を持つなんて櫓君は幸せ者ね。」
「まだまだ足りません、明日も良い依頼あったらよろしくお願いしますねアリーネさん。」
「そこまで必死に稼がなくてもお金なら沢山あるから良いんじゃない?何か高い買い物でもするの?」
「私が勝手に話して良いか分からないので、内緒です。」
「なーんだつまんない。ならまた今度櫓君に聞いてみるか。」
「そうしてください、それでは失礼しますね。」
「またねネオンちゃん。」
ネオンはアリーネと別れた後は、軽く食べ歩きをしながら街を見て回るのが日課の様になっていた。
普通奴隷が稼いだ金は全て主人の物なので、この様に使わせている者などほぼいないが、櫓はネオンが稼いだ金なんだから、その中から少しでも渡してくれれば他は自由に使えと言っている。
なのでネオンは依頼で稼いだ分は櫓に全部渡し、依頼とは関係ない素材などで稼いだ分は自分のお金としていた。
それでも櫓はこんなに渡してきて大丈夫かと聞いてきたほどなので、ネオンは自分の使えるお金があるだけ櫓に感謝していた。
そしてネオンはただ暇つぶしのために街を見て回っている訳ではない。
金稼ぎ以外に櫓に言われた、闘技場の件と拠点の件について、闘技場はまだ開催まで日があるため、拠点の目処を立てておこうと見ていたのである。
ロジックの街は広く入口の南門から北門まで往復するだけで半日近くかかると言う。
それだけの広さのためある程度は見ておいた方が後々決めやすいだろうとネオンが判断した。
(今日はどっちに行きましょう?南門側はそこそこ見て回りましたし、北門側で行けるところまで行ってみましょうか。)
そんなことを考えながら歩き出す。
まだ自分が足を踏み入れてなかった場所なので、景色も変わって見える。
(屋台はこの辺まで見たいですね。南門近くにはない物も取り扱ってるんですか、美味しそうです!)
屋台のご飯にご満悦になりつつも本来の目的をこなすべくさらに歩いていく。
その先は屋台などではない、様々な店が立ち並んでいる。
活気があり人の行き来も激しいが、買えそうな物件などはなさそうなので、違う方に行こうかと判断する。
移動した場所は鍛冶屋や武器屋などが多く冒険者の姿も多い。
そしてこちら側にもギルドがあった。
この街の広さではギルドが一個だけでは不便なのだろう。
そしてそのギルドのすぐ近くでまだ十歳前後かという子供達の声が聞こえてくる。
「銅貨五枚で雇ってください。」
「荷物持ちでもタゲとりでも何でもします。」
「魔法が少し使えるので、役に立てます。」
ネオンがいつも行っているギルドにはいないが、奴隷やチャイルドエラーの子供達である。
自分が生きていくために冒険者に雇ってもらい報酬を貰う為にギルドの近くで声をかけているのだろう。
それでも冒険者達は余り近づいたりする者は少ない。
慣れている自分達のパーティの方が動きやすいため、わざわざ素人を入れようと思う者は少ないのだろう。
それでも子供達も自分が生きていく為に冒険者達に必死に声をかけていく。
「あの、冒険者さん、僕を雇ってください。」
「ああ?なんでわざわざガキなんか連れて依頼こなさないといけないんだよ?さっさと失せろ。」
「お願いです、冒険に。」
「しつけーぞガキが。」
冒険者が拳を振り上げ奴隷の子供に振り下ろす。
ネオンは拳を振り上げるのを見た瞬間に走り出していて、冒険者と子供の間に割り込み、なんとか冒険者の拳を素手で受け止めることに成功する。
「何もこんな小さな子供を殴らなくても良いじゃないですか。」
「なんだてめぇ?やんのか?」
冒険者がネオンを今度は殴ってやろうかと考えていると、自分の掴まれている手が動かないことに気づく。
自分と比べれば小さな女の子に力で負けているのだ。
「クソッ、話しやがれ。」
「これからは気をつけてください。」
「ちっ。」
冒険者の男はそのまま歩いて行ってしまった。
それを見えなくなるまで見届けてからようやく安堵のため息を吐く。
(ふぅ、止められてよかった。これも日々の鍛錬の賜物ですね。)
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