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うっかり女神に邪神討伐頼まれた  作者: 神楽坂 佑
1章 異世界転生
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286話 死角からの一撃

(ネオン達の方も終わりそうだな。)


戦況はネオン達の圧勝である。

魔王リンガルが召喚したゴブリン達の九割程は既に地面に倒れている。

更に同族を増やす能力を持っているAランクのゴブリンキングは全て倒されていた。

もうゴブリン達が増える事は無いので、各々確実に数を減らしている。


「此方も終わらせるか。」


櫓は魔王リンガルに近付いていく。

雷の直撃が相当なダメージだったのか、動く様子は無い。

櫓は間合いに入ったので、鞘からミスリルの刀を抜く。

すると突然魔王リンガルの持っていた盾の形状が剣に変わる。

勢いよく立ち上がり櫓に斬り掛かってきた。

中々の動きだが冷静に軌道を読んで、ミスリルの刀で受け止める。


「くっ、我の剣技を防ぐか。」

「剣術は嗜んでいたからな。」


魔王リンガルが次々と素早く重い剣撃を放ってくる。

上下左右様々な方角から剣が向かってきており、振るう速度が速くて何本にも分裂して見える程だ。

しかし櫓は全ての剣撃を捌き、一撃たりとも受けてはいない。

この世界に来る前に、剣の修行は幼い頃から行っていた。

その実力は歴代でもトップクラスであり、女神に転生してもらった此方の世界でも修行は続けている。

どれだけ速く重い剣技であっても、滅茶苦茶に振り回しているだけでは、櫓の防御を突破する事は出来無いのだ。


「天剣四式・卯月!」


刀で剣撃を防ぎつつ、攻撃の合間を見極めて刀を引き絞る。

そして槍で攻撃するかの様に刀を勢い良く魔王リンガル目掛けて突き出す。

魔王リンガルは咄嗟に後ろに下がったが、櫓の突き技の速さを上回る事は出来ず、身体を浅くだが突き刺されてしまった。

櫓との距離を取る事には成功したが、地面にポタポタと傷口から溢れた血が垂れている。


「魔王の我が、人族に負けると言うのか・・・。」


魔王リンガルは剣での勝負にも櫓に負けて、動揺を隠し切れない。

既に櫓には勝てない、逃げなければ殺されると思ってしまっており、心は折れている。


「人間を見縊(みくび)り過ぎたな。」

「こんな場所で終われるか!我を守れ!」


魔王リンガルはスキルを使ってゴブリン達を呼び出そうとする。

地面に現れた魔法陣から次々とゴブリン達が溢れてくる。

魔王リンガルは剣を杖の形に変えて、再び浮遊の魔法を使う。

ゴブリン達を囮にして逃げる様だ。


「逃すか!」


櫓はミスリルの刀を構えて邪魔なゴブリン達に斬り掛かる。

肉壁のゴブリン達を次々と斬り捨てて、魔王リンガルの方に進んでいくと、地面に更に魔法陣が浮かび上がる。

相当な大きさであり、櫓やゴブリン達を丸々捉えている。

魔法陣が淡く光り出すと同時に、魔法陣上に居る敵味方問わず全ての動きが止まった。

櫓も唯一視線だけ動かす事が可能なくらいで、身体は全く動かない。


(設置型の束縛系統魔法か。油断していたつもりは無いが、気付くのは難し過ぎるだろ。)


仕掛けられた魔法が発動して魔法陣が浮かび上がるまで、その場には何も見えない。

本来であれば魔法を使う為に詠唱をして、魔法陣が設置されるので、詠唱を聞けばある程度警戒は出来る。

だが魔王リンガルは詠唱破棄のスキルを持っているので、櫓に気付かれる事無く魔法を発動させられたのだ。

その為櫓は魔法に気付けず、捕らわれてしまった。


「言ったであろう、勝てぬとしても逃げる事は容易いと。」


魔王リンガルは動けない櫓に向けて言う。

浮遊の魔法の効果で段々と高く遠くなっていく。

櫓は雷帝のスキルを発動させる。

身体の表面をバチバチと電気が巡る。


(身体は動かせなくてもスキルは使える様だな。)


身体全体に雷を纏わせて、周りに向けて放つ。

櫓の周囲に放たれた雷は、動けないゴブリン達を焼き、魔法陣を破壊する。

身体の自由が戻った櫓は、魔王リンガルが浮かび上がった上空に、雷を纏わせた腕を向ける。

未だそれ程遠くには行っておらず、視界でも捉えられる距離だ。

しかし櫓の手から雷は放たれない。


「逃亡の策は多く打っておくものだ。」


見上げるまで気付かなかったのだが、櫓を囲む様にドーム状の結界が出来上がっていた。

魔王リンガルがかなり魔力を使った様で、何重もの結界が櫓の攻撃を防ごうと立ち塞がっている。

しかし櫓が攻撃しないのは結界があるからでは無い。

この程度の結界であれば、全力を出して攻撃すれば破壊しつつ魔王リンガルに攻撃を仕掛ける事も出来る。

そうしないのは、遠ざかっていく魔王リンガルでは無く、その後ろにいつの間にか居た魔王クラメが見えたからだった。


「人族にしては中々よくやってくれた。お陰で苦労せずに厄介な此奴を殺せる。」


そう言いながら魔王クラメの腕が魔王リンガルの身体を貫く。


「ガハッ!?」


自分の身体から生えてきた腕が、キラキラと輝く物を手で弄んでいるのが見える。

魔王リンガルの体内にあった魔石である。

心臓を貫かれた訳では無いが、命を散らすには充分な程の致命傷だ。

魔王クラメが魔石を掴んだまま腕を引き抜くと、重力に従って魔王リンガルが落下していく。

それと同時に櫓を囲んでいた結界が粉々に砕け散った。

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