46話 付加付き装備品の量産
グランツの店の開店前までになんとか今日のノルマ分の馬車の改造が終了する。
二人は店に移動して客が来るまで話をしていた。
「もう改造し続けて一週間くらいになるがまだ終わんねーのか?」
「そうだな〜、あと少なく見積もっても二週間はかかるかな?」
「二週間だと!?まだそんなにかかるのかよ?めんどくせーなー。」
「その分儲けさせてやってんだろ?それに成功報酬まで支払うんだぞ?こんな上客中々いないぞ?」
「自分で言うか?まあいいや、それよりちょっとこれ見てくれねーか?」
「ん?なんだこれ?」
櫓はグランツに渡された紙を見る。
様々な商品名や数字などが物凄い量書かれている。
櫓は文字が読めないのは不便だと思い、毎日しっかり勉強していた。
そして女神カタリナからこの世界に来る前に色々身体の調整をされた時、色々な性能が上がっていたおかげで物覚えなども良くなっていた。
なので少ない時間でこの世界の文字を読めるようになっていて、今では少しではあるが書くこともできるようになってきていた。
「それはうちの店の商品の売上だ。」
「へぇ、結構売れてるんだな。だいぶ儲けてるんじゃないか?」
「ああ、確かに儲けは出てるんだが。」
「何かあるのか?」
「うちの店はどちらかと言うと商品が一般人や初心者冒険者向け、ギリギリ中級冒険者くらいが対象なんだ。だから上級冒険者やうちに通ってくれていたがランクの上がった冒険者達は、うちの店を利用しなくなっていくんだ。」
「確かに上級冒険者向けの商品はないな。作らないのか?」
櫓の言葉を聞きグランツは溜息を吐きながら櫓を冷めた目で見ながら愚痴を言ってくる。
「誰でもそう簡単にお前みたいに作れると思うなよ?馬車の改造でも俺にとってはだいぶギリギリなんだぞ。」
「まあスキルに恵まれたからな、なら俺がちょいと手伝うか?」
「その言葉を待ってたぜ、何か良いもんはあるか?」
最初から作ってもらうつもりだったのか櫓の言葉を聞きグランツはご満悦そうである。
櫓は調子の良いやつと思いつつも、何を作ろうかと少し考え、錬金術の名人のスキルを使い思い付いた品物の必要素材を調べる。
「まずは手頃な装飾品はっと・・・おっ、このアクセサリー使って良いか?」
「ああ、それは唯の一般人向けの物だから構わんぞ。それに何かするのか?」
「付加効果を付けて、装備品の魔法道具にすれば売れるんじゃないかと思ってな。」
「付加効果の装備品だと?確かにそれなら上級者向けの装備とも言えるがそんな簡単に作れるのか?」
「まあ俺はスキルのおかげで簡単に作れるな。グランツでも少し準備はいるが量産はできると思うぜ。」
「羨ましい限りだぜ、しかし俺でも作れるとは物次第だが興味はあるな。」
櫓は思い浮かびた装備品を作るために、ボックスリングから素材を取り出す。
「完成。」
櫓が呪文を唱えると、魔力を少し消費しアクセサリーと素材が光に包まれ合わさり魔法道具が出来る。
元のアクセサリーの形と少し変わっているが、付与された内容により形を変えるので、失敗したわけではない。
「ほらできたぞ。」
(てか意外と付加効果付きの装備品簡単に作れちまったな、結構高い値段で売られてるのしか見たことなかったから、これは金儲けにも使えそうだな。まあ金儲けの前にネオンとシルヴィー用に暇な時に幾らか作っとくか。)
櫓が魔法道具をグランツに差し出すと、受け取ったグランツは鑑定と唱える。
すると目の少し前に小さな魔法陣が現れ、受け取った魔法道具を魔法陣越しに鑑定し始める。
このスキルは名前の通り、様々な道具の性能を知ることができる能力である、櫓の調査の魔眼の劣化版スキルのようなものである。
「おいおいこの指輪についてる付加って耐性じゃねーか。火耐性Lv三ってことは、火属性の攻撃を三割カットか。何の素材を使いやがった?」
グランツが食い気味に櫓に聞いてくる。
攻撃を上げたり防御を上げたりといった単純な付加効果のある魔法道具を作るのは、上位のスキル持ちやスキルを持っていなくても熟練の錬金術師などであればそこまで難しくはない。
単純な付加はそれほど効果が高くないためである。
しかし付加効果の中でも火攻撃や火耐性などの、対象が限定されている攻撃と耐性のスキルは、効果が単純な付加に比べて高いため少し作るのが難しかったためである。
「素材はリザードマンの尾だな。手に入りやすいかは知らないけど、少しなら譲っても良いぞ。」
そう言って、ボックスリングから取り出し、数本グランツに手渡す。
「助かるぜ、他に何か準備する物はあるのか?」
「たしか付加効果をつける時には、専用の魔力粉とか魔法陣とか色々必要だったんじゃないか?まあそこら辺は調べてくれ。準備すれば量産は可能だろうしな。」
「助かるぜ、耐性スキル持ちの魔法道具なら上級冒険者でも欲しがる奴は大勢いるからな。早速準備にかからねーと。」
グランツは商品棚や在庫を漁り必要そうな素材を集め始めた。
「商売はいいのか?そろそろ開店時間だろ?」
「常に客が入ってくるわけでもねーしな。客がいねー時に作れる様に準備だけな。」
櫓も特に用はなかったので、呪文を唱えなくても作れる様に手伝おうかと思っていると、店の扉が勢いよく開け放たれた。
「いらっしゃ・・・って、なんだネオンちゃんか。」
「ネオンどうした?こんなところに来るなんて珍しいな。」
「こんなところで悪かったなこんなところで。」
ネオンは急いできたのか、肩で息をしている。
息を整えてから櫓に向かって歩いてきて、思い切り頭を下げてきた。
「櫓様〜助けてください〜。」
ネオンは櫓に泣きそうになりながら助けを求めてきた。
閲覧ありがとうございます。
ブックマークやポイント評価よろしければお願いいたします。




