表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うっかり女神に邪神討伐頼まれた  作者: 神楽坂 佑
1章 異世界転生
243/324

263話 犯人特定

執事から解放された櫓はミーシャの後に続き屋敷の中を歩いている。

ミーシャとの間にはトリアンとメイドが、そしてもう一人のメイドは櫓の後ろに付いている。

ミーシャが操られた件もあり、素性の分からない櫓は非常に警戒されている。


「此方です。」


ミーシャがそう言って扉の前で立ち止まる。


「ミーシャです、失礼します。」


数回扉を叩いてから開く。

中に入ると一部屋にどれだけの広さを使っているのかと言う感想が一番に思い浮かぶ。

部屋は広いが物はそれ程置いておらず、奥に巨大なベッドが置いてあるので寝室の様だ。

そのベッドの上には、上半身だけを起こした男性がいる。


「ん?大勢で何か様かいミーシャ?」

「あら?其方はお客さんかしら?」


男性に続いてベッドの横にある椅子に座っている女性も櫓の方を見て言う。

他にもベッドの横に座っている男性が二人此方を見ている。


「そうです、お父様お母様。此方の方が先日私を魔法道具の支配から解放して下さった櫓様です。」


ミーシャは櫓の方を見ながら言う。

ミーシャの足に取り付けられていた魔法道具を櫓が壊した時の事を言っている。


「おお、君が櫓殿か。その件については感謝している。この様な格好ですまないね。」


ミーシャの父が頭を少し下げてくる。


「あー、いえ、成り行きですからお気になさらず。」


出来るだけ歳上で目上の人に対しては敬語を心掛けているが、慣れていないので変な言葉になってしまう。


「君が噂の櫓殿か。」


座っていた男性の一人が勢い良く立ち上がり、櫓の方に向かってくる。

急に何かしてくるのかと少し身構えたが杞憂だった。


「君のおかげで操られた妹によって寝たきりにされていた我々家族は救われた、本当に有り難う。」


男性は櫓の両手を取り、上下に激しく振りながら言う。

感謝の気持ちを表す為に激しい握手を求めてきただけだった。


「それは良かったですね。」

「なのでその件の謝礼を受け取ってもらいたい。何か望む物はあるか?それと今夜は一緒に屋敷で食事でも如何か?」


ミーシャの兄と思われる男性が矢継ぎ早に言葉を投げ掛けてくる。

櫓は言葉通り成り行きで解決した事なのだが、テトルポート伯爵家からしてみれば、爵位剥奪もあり得た重大な事態だった。

なので感謝してもしきれないと言った状態なのだろう。


「お兄様、落ち着いて下さい。櫓様も戸惑っております。」


ミーシャが気を利かせて兄を遠ざけてくれた。


「でも兄さんの言う通り、ミーシャの件で助けてもらったんだしお礼はしないとね。」

「何がいいのかしらね。」


ミーシャのもう一人の兄と母が言う。

普段平民相手に贈り物をする事など無いので、何を送るか悩んでいる様である。


「先程も言ったのですが別に気にしなくても大丈夫ですよ。それよりも話しが謝礼の件でしたら、もう用件は済みましたか?」


謝礼の内容で色々話してくれているが、櫓としては貰えなくても構わない。

それよりも午後の出発の為に準備があるのに、長時間拘束される事の方を気にしていた。


「ん?何か急ぎの様でもあるのかな?」


ミーシャの父が櫓の言葉から察して尋ねてくれた。


「今日の午後にこの街を出る予定なんですよ。準備があるの・・。」

「櫓様、ミネスタを出て行かれるのですか!?」


櫓が説明している最中にミーシャが被せ気味に言ってきた。

ミネスタを出て行く情報は騎士団長のトリアンしか知らないので、ミーシャは初耳だ。

ミーシャは櫓の発言を聞いて驚き戸惑っている。

思ったよりもミーシャの声が大きくて言葉に詰まる。


「え?ああ、その予定だが。」


櫓の返答を聞いてミーシャの顔が赤くなる。


「ももも、申し訳ありません。いきなり大きな声を。」


ミーシャは反射的に発した言葉によって、恥ずかしそうに俯いて言う。

何人かは事情を知っているので、それを見て微笑んでいる。


「予定があるのにすまないね。今日来てもらったのは、以前のミーシャが付けていた魔法道具についての話しをしたかったからなんだ。」


本題は謝礼の話しとは別の内容だった。


「何か分かったんですか?」


ミーシャが付けていた魔法道具は貴族から贈られた品だと言っていた。

屋敷に戻って調べれば分かるかもしれないと言っていたので、その成果を教えてくれる様だ。


「贈り主は奴隷都市の貴族からだった。家名はトリーム、爵位は侯爵。それなりに有名な貴族だね。」


五大都市の一つである奴隷都市に住むトリーム侯爵家から、操り人形を付与する魔法道具が贈られたらしい。

侯爵と言えば上から二番目の爵位であり、権力もそれなりに高く、貴族界隈でも有名な部類の筈だ。

他の都市の貴族と絡みが少ないシルヴィーでも知っている可能性はある。


「犯人が分かったのならば、後は簡単なのではないですか?」


証拠を持って冒険者ギルドに掛け合い、過去を見る魔法道具の使用許可を得られれば、犯罪を明るみにして追い詰める事が出来ると櫓は思った。

しかしミーシャの父は櫓の言葉に難色を示した。

閲覧ありがとうございます。

ブックマークやポイント評価よろしければお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ