表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うっかり女神に邪神討伐頼まれた  作者: 神楽坂 佑
1章 異世界転生
240/324

260話 同行決定

「やっと着いたな。」


一週間程掛けて櫓達は鉱山都市ミネスタ迄戻ってきた。

他の馬車に速度を合わせる必要があったのと、後続の馬車の被害にならない様に街道付近の魔物を倒しながら進んできたので時間が掛かってしまった。

しかし時間を掛けて安全に進んできたので、怪我人はいない。


「直ぐに馬車で出発にしますか?それとも何日か滞在にします?」


ネオンが櫓に尋ねてくる。

ドランや子供達が使う馬車や馬を調達すれば直ぐにでも出発出来る。


「一週間馬車に揺られてたんだ、獣人達は疲れてるんじゃないか?」


拠点である城塞都市迄、三十台程の馬車で移動するとなると数ヶ月と言う長い時間が掛かる。

その間暫く馬車に乗っていなければならないので、少しでも宿で休んだ方がいいのではないかと櫓は考えた。

櫓の作った馬車と違って普通の馬車は、座る場所が硬く身体に優しく無い。

狭くて圧迫感もあるし、暇潰しの道具というのも存在しない。

そんな環境で数ヶ月過ごすのは、多大なストレスになると思った。


「心配いらないですよ。昔から村の皆は馬車や馬での移動をしていて慣れてますから。」


櫓の作った馬車が例外なだけで、この世界に暮らす者達は既に普通の馬車に慣れている。

長時間乗っていたとしても何も思う事は無い。


「それにこれだけの人数を仮に泊めるとしても、相当な出費となってしまいます。」


宿で無くドランの家であれば金は掛からないが、子供達の食糧の為に家の中にある物は全て売り払ってしまっている。

なので何も無い殺風景な部屋しかなく、そんな場所に泊まっても疲れは取れないだろう。

そしてカナタの言う通り、百人以上を宿に泊めるとなれば、空いている宿を探すのも大変だ。


「一応聞いてみるが、問題無さそうなら今日中に出発でもいいな。」


ネオンとカナタの言う通り獣人達は構わないと言っていたので、馬車と馬を調達する為に街の中に入った。

到着したのが朝方だったので、準備に時間が掛かっても夕方には出発出来るだろう。

雷の剣の面々には先にドランの家に向かってもらい、一先ず櫓が向かったのはゴッツの宿だ。

宿代は居ない間の分も置いてあったので、部屋は残っている。


「ん?久しぶりだな、今帰ったのか?」


宿の扉を開くと中に居たゴッツが話し掛けてきた。

劣化ボックスリングを売って宿の宣伝をした効果がまだ出ている様で、ロビーや食堂の方が賑わっている。


「ああ、さっき着いたばかりだ。だが今日出発する事にしててな、取ってた部屋も返す事にした。」


ゴッツの宿を訪ねてきたのは、部屋を返す事を伝える為だ。

ドラン達と獣人達が旅立つだけなので、櫓達が宿を返す必要が無い様に思えるが、実は此処に向かってくる間の話し合いで、拠点への長旅に同行する事が決まった。

最初はドラン達の拠点への移動に付き合ってしまうと、長い時間拘束されてしまい魔王関連の情報収集が出来無くなってしまうので、その選択肢は無かった。

しかしそれに獣人達が加わり、当初予定していた人数の三倍近くまで増えた人数を、拠点に送る事になったので話が変わった。

それだけの人数になると、護衛の冒険者を大量に雇わなくてはいけなくなり、実力のある者を複数選択すれば値段も相当張る。

更に長旅に必要な大量の食料を用意しなくてはいけなく、馬車に積むとなれば更に台数が必要になる。

スペースを取らない様に劣化ボックスリングを作ってその中に食料を入れる事も可能なのだが、二百人近い人数の数ヶ月分の食料を入れられるくらいとなると、どれだけ作ればいいのか検討も付かない。

そう言った様々な事を考慮して、櫓達が同行するのが一番効率が良いと言う結果になり、拠点に向かう事になった。


「そうか、急な話だな。櫓のお陰で宿は繁盛した。近くに来る事があればサービスするから寄ってくれ。」

「こっちこそ短い間だが世話になったな。」


ゴッツに礼を述べて、少し言葉を交わしてから宿を出ようとする。


「おっと忘れてたぞ、櫓宛の物を預かってたんだ。」


ゴッツがそう言って呼び止めてきた。


「物?」

「ちょっと待っていろ。」


そう言ってカウンターに向かい、何かを探している。

直ぐに目的の物を見つけて櫓の下に戻ってきた。


「これだ、確かに渡したからな。」


ゴッツが差し出してきたのは一つの封筒だ。

手触りが良く明らかに一般的に使用されている物とは違う高級感が伝わってくる。


「なんだこれ。」

「見ての通り封筒だ。中に手紙が入っているらしいが用件までは聞いていない。」


そう言われて開けようと裏返すと、見覚えのある家紋が刻まれている。


「テトルポート伯爵家の家紋?」


見覚えのある家紋は、以前にこの街で一騒動あった時に出会った貴族の家紋だった。


「そうだ、宿に貴族の使者が来た時は驚いたぞ。櫓がいない事を伝えると戻ってきたら渡してほしいと頼まれたんだ。伝える事は済んだし、俺は宿が忙しいから仕事に戻る。」

「悪いな預かってもらって。」


櫓はゴッツに礼を言って封筒を受け取り宿を後にした。

閲覧ありがとうございます。

ブックマークやポイント評価よろしければお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ