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うっかり女神に邪神討伐頼まれた  作者: 神楽坂 佑
1章 異世界転生
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242話 必ず戻る

「そう言う事だ、俺とミズナに任せておけ。シルヴィー、其方の指揮は任せたぞ。」


櫓の真剣な目を見て、シルヴィーは溜息を吐く。


「仕方ありませんわね。」

「そんな、シルヴィー様、いいんですか!?」

「少なくとも現在戦意を失っている私達に残る権利はありません。残っても足手纏いになるだけですわ。」


それを聞いてネオンもカナタも黙ってしまった。

自分でもそれは充分理解しているのだ。

だが頭で理解していても、それでも櫓とミズナを残していきたくないと思ってしまう。


「時間が無い、急いで出発しろ。クロード、フレア、サリー!」

「「「はっ!」」」


櫓の呼び掛けで突如姿を表す三人。

城塞都市ロジックから旅立った櫓達に、付かず離れず行動してくれている、元傭兵団絆誓のメンバー達だ。

最強の傭兵団と言われていただけあって、個々の実力も高かったが、ネオン達同様微かに震えているのが分かる。


「お前達も馬車の護衛だ。獣人達を安全な場所まで無事送り届けてくれ。」


櫓の言葉を受けても珍しく承諾の返事が返ってこなかった。


「肝心な時に役に立たず、本当に申し訳ありません。」


承諾の代わりに返ってきたのは謝罪だった。

クロードがそう言って深く頭を下げ、両隣に居るフレアとサリーも続く。

クロード達が櫓の旅に同行したのは、魔王を倒そうとしている櫓達の力になりたいと考えたからだ。

それなのに共に戦うだけの強さも度胸も無くなった現状に対して、不甲斐無いと言う気持ちが伝わってくる。


「気にするな、お前達に任せた事も重要なんだ。ドラゴンの存在の影響で、魔物達が暴れ回っている。スタンピードなんかが起きた時は、防衛に数がいるからな。」


フックの村に向かって来た時に魔物達はアクティブに攻撃を仕掛けてきていた。

今思えばスタンピード一歩手前と言える状況だったのかもしれない。


「お任せ下さい、必ず全員無事にお連れします。ですがその後に、どうか再びこの地に戻って来る事をお許し下さい。」

「私達もですわ。皆さんを安全な場所に避難させましたら、此方に向かって来ます。」


クロードとシルヴィーもこれだけは譲らないと言う目をして櫓を見ている。

今はドラゴンの恐怖に戦意を挫かれてしまっているが、獣人達を避難させている間に気持ちを切り替えて、櫓達の手助けに戻って来るつもりなのだ。

櫓にしてみれば危険な事に変わりないので拒否したいところだ。

だが逆の立場であれば、命令を無視してでも自分は戻るだろうなと思ってしまい、拒否しても無駄と判断する。


「はぁ〜、自分のやるべき事が終わったら好きにしろ。だが無駄死には許さないからな。」

「分かりましたわ、皆さん急いで出発します!」


座り込んでいたネオンにシルヴィーとカナタが肩を貸して、三人は御者台に乗り込む。

カナタが手綱を握って馬車を走らせ、クロード達三人は馬車の周りを走って並走して行った。


「絶対死なないで下さいね!」


ネオンの叫び声が遠ざかる馬車から響いてくる。

その言葉からは心配する感情がひしひしと伝わってくる。


「ネオンも心配性な奴だな。」

「分かる・・・。」


無表情で櫓の顔を見ながらミズナが相槌を打って頷く。


「敵がドラゴンだからその気持ちも分かるが。」

「うん・・・。」


体勢を変えず再び相槌を打つミズナ。


「俺がどうかしたか?」

「逃げずに戦うなら、ご主人死ぬ・・・。」


ミズナは言葉を濁す事も無くはっきりと告げる。

櫓とミズナの命の重さは全然違う。

精霊のミズナは死んでも櫓の魔力がある限り何度でも復活させてもらえる。

そして櫓が死んだ後にミズナが死んでしまっても、長い年月が必要になるが、大気に存在する魔力を使って再び精霊として蘇る事は出来る。

それに対して櫓は一度死んでしまえばそれで終わりだ。

二人で残ったものの危険度は櫓の方が断然高い。


「俺も死にたくは無いからな。タイミングを見て逃げるつもりではいる。」


この言葉は嘘では無い。

ドラゴンに対して全力で相手をするが、逃げる事も勿論視野に入っている。


「タイミングまで生き残れる・・・?」


櫓の言うタイミングとは、ネオン達の馬車がドラゴンから充分に遠ざかって、ある程度大きな街に近付くくらい時間を稼いだ時の事だ。

フックの村から普通の馬車で半日程の場所に五大都市程では無いが大きな街がある。

櫓達の馬車ならばその時間の半分以下で行けるだろう。

それでもドラゴンの事を一、二時間は足止めしなければならない。

それを理解しているミズナは、櫓の言うタイミングは来ないので、死ぬつもりなのかと思った。


「逃げながら戦って時間稼ぎも出来るんだし問題無い。それよりもドラゴンがそろそろ到着するぞ。」


遠見の魔眼で視えているドラゴンが徐々に近付いて来るのが分かる。

後十数秒もすればフックの村に到着するだろう。

しかしドラゴンは、待ち受ける櫓達では無くネオン達の乗る馬車を追い掛ける様に、急に方向転換してしまった。

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