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うっかり女神に邪神討伐頼まれた  作者: 神楽坂 佑
1章 異世界転生
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240話 ドラゴン

「村長起きてくれ。」


クオンは獣人達の中から女性の猫の獣人を起こして肩を揺さぶっている。


(二百歳を超えているのか、獣人も中々長命だな。)


調査の魔眼を使って興味本位に村長の年齢を見てみたのだ。

しかしエルフ達の様な長命種とまではいかない。

村長はお婆ちゃんと言える容姿をしており、二百歳程度ではエルフ達の容姿は若いままだからだ。

近くではネオンやカナタも他の獣人達を起こしている。


「な、なんじゃクオン。あまり揺さぶるな。」


村長が目を覚まして言う。

そして近くに居た櫓に気付いた。


「村長、先に言っておくがこの人達は貴族とは無関係だ。」


クオンが自分と同じ様になる前に前もって櫓達の事を説明してくれる。


「そうじゃったか、危なく攻撃するところじゃったわ。」


クオンと言い村長と言い人の話を聞かず手が早いなと思ったが、あんな事をされた後では仕方が無い。


「起きていきなりで悪いんだが聞きたい事がある。」

「なんじゃ?」

「あの山には何かあるのか?貴族達が奪った魔力で何かしていたみたいなんだが。」


櫓が指差した方を見て、村長は目を見開き驚く。


「な、何故溶岩が流れておるんじゃ!?噴火したのか!?」


ヨロヨロと歩き出し、信じられないものを見た様な反応だ。


「あれを見て敵が時間稼ぎと・・。」

「いつじゃ!?いつ噴火したんじゃ!?」


村長は櫓の言葉を待たずに食い気味に言葉を被せてくる。

顔は年寄りとは思えない程に真剣かつ険しいものだ。


「つい先程だ。やっぱり何かあるんだな?」


村長の様子からただ事では無いと分かる。


「長く説明している時間は無いから省くが、あの山にはドラゴンが封印されていたんじゃ。噴火は封印が解かれた証、一刻も早く離れねば危険じゃ。」


村長はそう言って獣人達をクオンと一緒に叩き起こしていく。

その話が本当であれば悠長に起きるのを待っている余裕は無い。


「ドラゴン!?本当であれば一大事ですわ!」

「ドラゴンって大昔に絶滅した魔物じゃ無いんですか!?と言うかずっと封印されてきたって事ですか!?」


シルヴィーやネオン、他の者達も驚き慌てている。

ドラゴンは目撃情報が少なく、今は僻地で稀に確認されるくらいの、一応魔物に分類される生き物だ。

何故一応なのかと言うと、高い知能と攻撃力を兼ね備えているドラゴンは、一体一体が魔王をも凌ぐ強さを所持しているからだ。

魔物達を統べる魔の王よりも強い存在が魔王の下に付く必要は無い。

そもそもドラゴンは個で圧倒的強さを持っているので、集団で連む事は少ない。

更にドラゴンは自分達を従えようとする魔物とは、協力よりも敵対している事が多かったので、実質的には魔物よりもドラゴンと言う別の枠組みと捉える者も多い。


「ご主人、此処は危険・・・。」

「ご主人様、我々も避難の準備を急ぎましょう!」


ミズナとカナタも今直ぐにでも此処から離れるべきだと言ってくる。

ドラゴンの脅威をこの世界の出身でない櫓も含めて全員が知っているからだ。

誰も実際に見た事は無いが、本や人伝の情報で聞く事は多い。

ドラゴンは魔物の強さの基準として分類されるランクで、最高ランクであるSランクに指定されている。

Sランクと言えば、ハイヌやティアーネの森の村長等の櫓でも敵わない圧倒的強さを持っている者達と同等のランクだ。

雷の剣全員がAランク級の強さを持っている集団であったとしても、ランク一つ分の差は凄まじいのだ。


「獣人達を馬車に入れろ!拡張しまくったから詰めて乗れば全員乗れる筈だ!」


獣人達は子供から老人まで百人程いる。

普通の馬車であれば十何台と言う馬車が必要になる量だが、櫓の馬車であればその量を一台で賄える。

居間、書斎、風呂場と窮屈にならない様に作ったので、全部の部屋を使えば百人でもギリギリ乗れる。


「分かりました、皆さん馬車に急いで下さい!」


ネオンの指示に従い、ミズナが乗りやすい様に村の中にまわした馬車に目覚めた獣人達が状況を分からずも乗り込んでいく。


「もしドラゴンが本当に現れるとして、放っておいていいのか?」


隣に居るシルヴィーに尋ねる。

Sランクの魔物が野に放たれるのだ、人が多く暮らしている五大都市から離れた場所だと言っても、空を飛んで移動出来るので安全とは言えない。

それにフックの村の様な五大都市程人がいない小さな村や町は、この近くにも複数あるかもしれない。

もし襲われれば一方的に蹂躙されるがままになってしまう。


「いい訳ありませんわ。即刻五大都市や大きな街に知らせなくてはなりません。そして人里に攻めてくるならば、討伐隊を組んで対処しなくては。」


自分達が残って対処しようと言わないのは、戦っても勝てないとシルヴィーが判断したからだ。

長年冒険者をやってきていれば、情報だけでも実力差をある程度測れるだろう。


「分かった、獣人達が乗り込み次第俺達も乗って出発するぞ。」

『この小さき魔力、人属だな?』


周りには雷の剣と獣人達しかいないのに、突然櫓達の頭に直接重く威厳のある声が聞こえてきた。

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