42話 ネオンもたまには怒る
ロアに連れられてフレンディア家の敷地内にある訓練場に移動する。
あまり大事にしたくなかったので、人がいたら人払いしてもらおうかと櫓は思っていたが、まだ訓練の時間ではないのか訓練場には誰もいなかった。
「ここが訓練場だ、それで何を見せてくれるんだ?」
「実は俺はこの街に来る前に魔物に襲われてな、その倒した魔物を見て欲しいと思ってな。」
「何の魔物なのでしょうか?」
櫓はボックスリングからリザードマンの魔王アギトの死体を取り出す。
四人の目の前に巨大な血塗れの死体が現れる。
櫓以外の三人は突然現れた死体に驚いている。
特にネオンはこんなに大きな魔物を見たことがなかったのか櫓の後ろから覗く形で見ている。
「こ、これはリザードマンなのか?」
「それにしては大きすぎますわね。」
「魔王なのか?」
ロアが櫓に問いかけ、シルヴィーも櫓の方を見てくる。
「スキルで鑑定したし、本人も魔王と名乗っていたから多分さっきロアさんが話してた奴じゃないかと思ってる。」
「初めて魔王と言うのを見ましたけど、死体でもすごい迫力ですわね。」
「人の言葉を話すと言うことは、魔人か魔王であろう。こいつが魔王である可能性は十分にある。」
「ちなみに魔神についての情報は聞けましたの?」
「俺も初めての魔王との対面で焦っちゃってな、そんなこと考える余裕がなかったんだ。」
「なるほど、残念ですけど仕方ないですわね。」
「しかしこれで櫓が魔王を倒せるだけの力があるとわかったのも事実、改めてシルヴィーを頼むぞ。」
「まあやれるだけのことはしますよ。」
ロアがもう大丈夫と言うので再びボックスリングの中に死体をしまう。
櫓は魔王側に自分の情報をあまり伝えたくなかったので、アギトの件は出来れば話して欲しくないと言うと、ロアもシルヴィーもネオンも了承してくれた。
「さてこれで俺からの用事は終わったんですが。そっちからは何かあります?」
「そうだな、用と言うほどの事でもないが旅の資金を少し用意させよう。もちろん馬車の件とは別件なので安心してくれ。」
「お父様ありがとうございます。」
少し話して今日は解散するかと思っていると、何十人かの騎士がこちらに向かってくる。
訓練場での訓練の時間のようだ。
「ロア様、シルヴィー様、訓練の時間なのですが使用しても構わないでしょうか?」
「ああ、すまんな騎士団長もう使っても大丈夫だ。」
ロアの許可が出ると、騎士団員に訓練の指示をする。
騎士団員が訓練場に続々と入っていく。
この場には騎士団長と呼ばれた男ともう二人騎士団員が残っていた。
「ロア様そちらの方々は?」
「この二人はシルヴィーがずっと探していた魔王討伐に協力してくれる連中だ。」
「なるほど、お二方シルヴィー様をよろしく頼む。」
騎士団長はそう言って頭を下げてくる。
かなり友好的な様ではあるが、その近くに控えている騎士団員はそうでもない様である。
「こいつらがシルヴィー様のお供ですか?ロア様考え直したほうが良いんじゃないですか?」
「それに見たところどうやら平民の様ですね。シルヴィー様と行動を共にするにはいかがなものかと。」
「お前達失礼だろう。申し訳ないうちの団員が。」
「団長、こいつらはシルヴィー様と旅をするんですよ?見合った実力がある俺達騎士団員のがいいじゃありませんか。シルヴィー様を危険に晒すことになるかもしれないんですから。」
騎士団員の好き勝手な発言を聞いて、櫓は全く相手にしてない様子で普段通りだったが、ネオンは櫓が馬鹿にされているのを聞いて、目つきは鋭くなり腰の剣に手を伸ばしかけていた。
それを見たロアとシルヴィーはせっかく話をつけたのに断られては困ると騎士団員達と話し始める。
「団長の言う通りだぞお前達、あまりフレンディア家騎士団の質を下げる様な発言をするな。」
「それに貴方がたお二人とでは実力も比べるまでもありませんわ。見た目で少しは実力を見抜ける様になったほうが良いですわよ。」
「この平民共より我々が劣ると言っているのですかシルヴィー様?」
「ユーハと一緒にしてもらっては困りますね。我々はそこまで落ちぶれてはいませんよ。」
どうやら櫓がシルヴィーに勝ったと言う情報は騎士団員でも知らない者がいるらしい。
そしてこれを聞いたロアは、騎士団員に櫓達の実力を知らしめると共に、自分達の力を過信しすぎているこの二人にお灸を据えようとある提案をする。
「ならばお前達、この二人と戦ってみろ。そしてお前達が勝てたのならばシルヴィーの付き添いはお前達に行ってもらおう。」
「本当ですかロア様?」
「ああ、お前達が勝てるのならな。」
「平民に我々が負けるはずはありません。」
「と言うことで悪いが櫓、ネオン、こいつらと戦ってやってくれないか?」
「はぁ、まあ仕方ないですか。」
櫓は面倒だとは思いつつも承諾する。
ネオンは櫓が従うなら構わないと頷いている。
櫓としてもシルヴィーの様な強い仲間をそう簡単に手放そうとは思っていない。
「では悪いが団長、少し騎士団員達を退かしてくれないか?」
「わかりました、少しお待ちください。」
団長は小走りに訓練を始めていた騎士団員達に近づき方の成り行きを説明している。
少しすると騎士団員は皆端によってくれた。
「平民共身の程をわからせてやるぜ。」
「逃げるなら今のうちですよ。」
二人が櫓達に向けて言うが櫓は無視してネオンと話していた。
「ネオン、お前は戦わないで後ろで見ていてもいいぞ?」
「櫓様、私にも戦わせて下さい。無理はしないと約束しますのでお願いします。」
「ま、まあ無理しないと言うならいいけど、危なくなったらすぐ下がるんだぞ?」
「はい!」
ネオンは櫓が馬鹿にされて怒っていた。
いつになく強気な剣幕で迫ってくるネオンに櫓も少し押されていた。
「無視してんじゃねーぞ平民如きが。」
「少し痛い目に合わせて後悔させてあげましょう。」
「ほらお前ら、団員達が場所を開けてくれたんだ、早速始めるぞ。」
ロアが促すと騎士団員の二人は怒りながら中に入っていく。
その後に櫓達も続いた。
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