235話 危険な組み合わせ
倒れている獣人達全員にポーションを振り掛け終わった。
状態の欄から魔力切れや体力低下は無くなっており、気絶から目覚めるのを待つのみだ。
「櫓様、皆は無事ですか!?」
ネオンが慌てて駆け寄って来る。
カナタもそれに続き、その後ろにはソルジャーアントの死体の山が幾つもあった。
あれだけ際限無く地面から出てきていたのに殲滅した様だ。
多少の疲れは見えるが、攻撃を受けている様子は無い。
そしてたった今馬車も到着して、リュン以外全員揃った。
「ポーションで回復させたから大丈夫だ。」
「よかったです〜。」
一安心と言った感じで胸を撫で下ろす。
ネオンとカナタが到着した時には既に大量のソルジャーアントに襲われている所だったので、獣人達が被害を受けていなかったか心配していたのだろう。
「これで全員か?他にもいるのか?」
別の場所で同じ様な事をされているかもしれないのでカナタに尋ねる。
ネオンもフックの村を出てから暫く経っていて分からないので、同じくカナタを見ている。
「私と共に奴隷として連れ出された者以外は全員居ますね。」
倒れている獣人達を見回してカナタが言う。
取り敢えず全員の無事を確認出来てカナタも安心した様だ。
「全員の命は助けられたが、問題はあった様だな。」
吸魔の柱を見て櫓が言う。
他の皆が到着する前に壊して効果が無くなってしまったので、改めて獣人達が魔力を吸収されていた事を説明する。
「魔力を強制的に吸い上げる魔法道具、危険ですわね。」
「壊したからもう大丈夫だけどな。」
魔物が蔓延るこの世界において、戦う為に必要な魔力は生命線だ。
枯渇しているところを襲われれば、簡単に命を落としてしまう。
この魔法道具は誰にとっても危険極まりない物なのだ。
「一先ず全員縛っておきました。」
目が覚めて暴れられても困るので、カナタが倒れている指揮官や騎士達を縄で縛って動けなくしてくれた。
黒幕やこんな事をした理由も問いただしたい。
「悪いなカナタ。さて、どっちか目を覚ましてくれないと何も分からないな。」
獣人達も騎士達も未だ目を覚さない。
「この人達に関してもですが、村に来るまでの魔物に関してもですよ。あの数は異常すぎます。」
「私が連れ出される前と比べても、数も強さも明らかに増えていますね。それに気が立っている様にも見えました。」
ネオンとカナタがここまでに来る道で襲ってきた魔物達について言う。
強さも種類も様々だったが共通する部分もあり、全ての魔物が積極的に攻撃を仕掛けてきたのだ。
魔物の中には相手との力量を判断して、勝てないと判断して戦わずに逃げる選択を取る魔物も少なくないのだ。
「っ!?上から何か来ます。」
突然何かを察知したネオンが上空を見上げて警告する。
距離が遠くて豆粒程の大きさにしか見えないので、遠見の魔眼を使用して視てみる。
「少し大きいがキラーバードだな。ん?誰か乗っている。」
真下に降りてきてるので、跨っている足しか見えないが二人の人間が乗っている事が分かる。
キラーバードは櫓達から少し離れた村の柵の外側に着陸し、その背から二人の人間が飛び降りる。
「なんだ貴様らは!俺の騎士に何をしている!」
片方の男が櫓達に気が付き、村の中の現状を見て怒鳴ってくる。
言い放った言葉や上等な装備から、騎士達の雇い主だと判断出来る。
そしてその男を見た途端、近くに居るカナタの雰囲気が変わった。
「あらあら、全員やられてるわね。」
そしてもう一人の者が楽しそうな声を上げて言う。
身長が随分と高いが声からして女性だと分かる。
姿から判断出来無いのは、その者が全身を黒い仮面と黒いローブで覆っていたからだ。
「櫓さん、あの黒尽くめは・・。」
「分かっている、シルヴィーの予想通りだろう。」
隣から小声で話し掛けてきたシルヴィーに対して同じく小声で返す。
ネオンとミズナも分かっている様だ。
前にも呪いによって滅ぼされた村とティアーナの森で同じ格好の者を櫓達は見ている。
人類なのに敵である魔王を崇拝する謎の黒尽くめの集団だ。
そして前に助けたが裏切られた紗蔽もその一味だった。
今回の黒尽くめは女性の様だが紗蔽や今迄会ってきた者達と違って、初めて会う黒尽くめだ。
「カナ姉、もしかしてあの人が?」
キラーバードに乗った二人が現れた瞬間に雰囲気が変わったカナタにネオンが尋ねる。
櫓に指示されていないので行動は何も起こしていないが、カナタから怒気がビシビシと伝わってくる。
「私を奴隷にした貴族の男よ。きっと村の皆に手を出し易い様に戦闘要員である私達を先に排除したんだわ。」
今にも飛び出して攻撃しそうな雰囲気であるが、相手に聞こえない様に声を抑えて言う。
「黒確定だな。」
それを聞いた櫓は貴族と魔王崇拝者が手を組んでいると分かり、躊躇する必要が無くなったと判断して、雷帝のスキルで手から雷撃を放った。
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