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うっかり女神に邪神討伐頼まれた  作者: 神楽坂 佑
1章 異世界転生
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231話 律儀な性格

翌日、いつになるか分からないがまた戻ってくる予定なので、宿の部屋は残したままにしておく。

劣化ボックスリングを売った時をきっかけに、隠れた名宿として人気が出てきて、客の入りが増えたので残しておかなければ部屋が無くなってしまいそうなのだ。

パーティーメンバーが全員揃った事を確認して、門の外に向かう。


「悪いな、待たせたか?」


既に門の外で待機していたネオンとカナタに言う。

昨日ドランの家に二人は泊まる事になったので、門の外を待ち合わせ場所にしておいたのだ。


「大丈夫ですよ。」

「おはよう御座います。」


カナタが礼儀正しく挨拶してくる。

昨日の不安そうな状態からは幾分かマシになった様だ。


「おはよう、早速だが向かうとするか。だがその前にカナタ、その首輪を外してやろう。」


櫓はカナタの首に嵌められている奴隷の首輪を指差して言う。

本来櫓が購入した奴隷達には、購入金額を補う形で無理のない労働をしてもらっている。

そしてある程度働いてもらう事を条件に、一般的に滅多に無い事だが奴隷から解放する事にしている。

しかし話を聞く限りカナタは、不当な手段で奴隷にされた違法奴隷なのでその条件には合わない。

そう言った違法奴隷に関しては、損をしても即時解放して普通の暮らしに戻してやりたいと思っていた。

ちなみに違法奴隷のカナタを扱っていた昨日の奴隷商人が、奴隷狩りに関わっている可能性があったので問い詰めてみたところ、カナタは他の奴隷商人から流れてきただけで、知らなかったと言っていた。

一応は普通の奴隷以上の生活をさせてもらっていたのと、幾らか払い戻してもいいとまで言ってきたので、今後注意してもらう事で信用しておいた。

違法奴隷か通常の奴隷かは、奴隷本人の口から聞かないと分からないので、確認不足と言ったところだ。


「奴隷の首輪をですか?これは特別な鍵が無くては外せないのではないのですか?」


カナタの言う通り、専用の魔法道具の鍵が必要である。

その鍵は未だ訪れた事の無い五大都市の一つ、奴隷都市にあるのだが遠いので自作しようとした事もあった。

しかし錬金術の名人のスキルで作ろうとしたところ、見たことの無い素材や入手困難な素材が多かったので諦めた。


「その通りだ、だから外すのでは無く破壊する方法を考えた。このポーションを飲めば雷の攻撃を無効化出来る。それを利用して俺の魔法で奴隷の首輪を消し飛ばすと言う訳だ。」


ボックスリングから取り出した無効化のポーション(雷)をカナタに見せる。

物凄く苦いが飲んだ者を一分間、凡ゆる雷攻撃を無効化する状態にしてくれる。

櫓がどれだけ凄い魔法を唱えても、ダメージを一切与えられず、首輪を破壊する事が出来るのだ。


「同じ失敗をしてはいけませんわよ?」


シルヴィーは揶揄(からか)う様に櫓に言う。

前にネオンの奴隷の首輪を破壊した時に、衣服まで気がまわっていなくて、身に付けている物全てを魔法で消し飛ばした事があった。


「わ、分かっている。」


櫓はその時の事を思い出して、顔が少し熱くなるのを感じる。

カナタの隣に居るネオンも全裸にされた事を思い出して、火でも出しそうな程に顔を真っ赤にさせて恥ずかしがっている。

当時仲間ではなかったリュンだけが何の事か分からず、急に恥ずかしがっている二人を見て首を傾げていたので、シルヴィーがこっそり教えようと近付き、ネオンが慌てて止めていた。


「あの、外していただけるのは有り難い事なのですが、フックの村を確認した後は暫く奴隷としてご主人様の配下に加えて頂けないでしょうか?」


普通の奴隷であれば奴隷解放すると言われれば直ぐにでもお願いするところを、カナタは丁寧に断った。

そして奴隷のまま櫓の下で働かせてほしいとまで言ってきた。


「な、なんでなのカナ姉!?別に奴隷じゃなくてもいいんだよ?」


櫓の拠点である櫓商会は圧倒的に奴隷率が高い。

だが奴隷しか雇わないという訳では無い。

ネオンの言う通り別に奴隷でなくても働いてもらえるならば構わないので、カナタが奴隷に拘る必要も無いのだ。


「何か理由があるのか?」

「奴隷の身である私の我儘を聞き届けてもらったのです。その御恩には報わせて下さい。そして私ばかり特別扱いしていては、一緒にご主人様に購入された奴隷達に不満が溜まるかもしれません。」


カナタはフックの件が終われば、他の九人の奴隷達と同様に扱ってもらって構わないと言う。

櫓からすれば違法奴隷なので気にしなくてもいいのだが、この真面目さがカナタの人柄なのだろう。


「分かった、カナタの思う通りにしろ。」


ネオンは外してほしそうにしていたが、本人の意思は堅そうで言っても聞かないだろう。


「感謝致します。」

「だが、気が変わったらいつでも言っていいからな。それじゃあ、改めて出発するぞ。」


ボックスリングから馬車を取り出して馬に引かせフックの村を目指して走り出した。

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