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うっかり女神に邪神討伐頼まれた  作者: 神楽坂 佑
1章 異世界転生
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230話 不安な気持ち

一先ず話が終わった後、カナタはネオンに任せてある。

久しぶりの再会なので、積もる話もあるだろう。


「悪いな、急に話が決まって。カナタは護衛から外れてしまう。」

「一人くらい抜けても問題無いだろ。」


櫓とドランは庭でリュンや子供達と訓練中の奴隷達を見て言う。

一番の戦力となるカナタが外れてしまうが、ハイヌとの戦いで他の者達も相当強い事が分かっているので心配してはいない。


「どれくらいで戻れるかは分からないが、ドラン達はどうする?」


フックの村は鉱山都市ミネスタから馬車で五日程走った場所にある。

櫓の馬車は重量が軽減されていたり、馬に疲労回復を高める魔法道具が付けられていたりして、五日の距離を一日と少しあれば辿り着けそうである。

しかしフックの村に辿り着いてから、何か問題が起きていたら、帰るまでにどれだけ掛かるか分からない。


「出発してもいいがせっかくだ、櫓に一振り渡してから拠点に向かいたい。知り合いに頼んで鍛治道具を借りる事になっているから、お前達の帰りを待つ事にしよう。」


ドランは宿の主人であるゴッツも知っていた様に、ドワーフ達の間では名の知れた鍛治師だ。

知り合いも多く、ドランの頼みを聞いて協力してくれた様だ。


「そうか、何日掛かるかは分からないから多めに渡しておく。あまり酒代に使うなよ。」


櫓はボックスリングから取り出した袋をドランに渡す。

冒険者ギルドで素材の買取代として貰ったお金そのままだ。

金貨や銀貨が大量に入っているので、奴隷達を含めても暫く食事に困る事は無いだろう。

しかしドランが酒を際限無く呑むので、それだけは注意しておかなければ、これでも足りなくなりそうだ。


「気を付ける。」


ドランも自分が作った武具を売り払ってまで、子供達の食事代を手に入れていたのだから、自分の酒代に使い過ぎる事は無いだろう。


「奴隷達にも同じ食べ物を与えてやってくれ。それが俺のやり方だからな。」


奴隷達の方から本当にいいのかと毎回聞かれる事だが、奴隷に馴染み深く無い世界からやってきた櫓は、この世界の常識に捉われず自分のやりたい様にして生きていく事にしている。


「変わっている奴だと思っていたが、奴隷の接し方まで世間とズレてるんだな。」

「ほっとけ、ズレてるは余計だ。」


自分でも分かっているが、変えるつもりは無い。


「そのおかげで、わしやチビ共も助かったんだがな。その辺に関しても心配するな、わしも差別意識は無い方だ。」


全く知らない子供達に大量の食料を無償で与えたり、腕を失ったドランに最高レベルのポーションを使ってくれたりと、恩義は感じるが随分とお人好しな奴だとドランは思っていた。

赤の他人にそんな事をしても自分が損をするばかりで、見捨てる者が一般的だ。

だがドランも櫓と同じ様な事をしていたので、櫓の事を気に入って仲間になる決め手となった。


「それなら安心だ、後は任せたぞ。」


急に出発が決まったので、旅に必要な不足している物の買い出しをしなければならない。


「お兄ちゃん、行っちゃうの?」


話が終わるのを待っていた様で、チサが小さな身体で櫓の足に抱き付きながら言う。

周りには他にも子供達が集まっている。

毎日誰かしら櫓達が来ていたのだが、フックの村に行っている間は誰も相手を出来無いので寂しいのだろう。


「出来るだけ早く戻ってくる、それまではあのお姉さん達と仲良くやっててくれ。」


奴隷達を見ながらそう言って頭を撫でてやる。

だがチサは手を離さないどころか、小刻みに震えてより強く抱き付く。


「チサ、櫓さんは忙しいんだから迷惑掛けちゃだめだぞ。」


子供達の纏め役であるカルトがそう言ってチサを引き剥がそうとしてくれる。


「カルト、何かあったのか?」


櫓はその手を一旦止めてカルトに尋ねる。

チサは幼いので櫓達と離れるのが寂しいのも分かるが、様子が少しおかしい。


「今日怖い夢を見たらしくて、怯えているんですよ。」

「夢?」

「はい、内容はちょっと・・。」


カルトは言いにくそうに言葉を濁す。


「俺に気を遣わなくていいぞ。」

「・・櫓さん達が魔物にボロボロにされている姿を夢見たそうです。」

「成る程、正夢になるかもとチサは怯えているのか。」


チサからしたらせっかく仲良くなれた櫓達の無残な姿を夢見てしまい、このまま行かせたくないのだ。


「安心させられるかは分からないが、俺が強いところを見せてやろう。」


櫓はチサを抱き上げて庭に出て、他の子供達も一緒に付いてくる。

戦闘してるところを子供達は見た事が無いので、それもあって心配なのだろう。


「少し場所を開けてくれ。」


庭で訓練してる皆に退けてもらい、一人でその場に立つ。


(分かりやすく派手な方がいいだろう。周りには被害が出ない様に空に飛ばすか。)


実力の一端を見せてチサ達を安心させる事にした櫓は、魔法を見せてあげる事にした。


「我が魔力を糧とし、雷の槍よ敵を貫け。雷槍(らいそう)!」


詠唱すると櫓の手に雷で出来た巨大な槍が現れ、バチバチと音を立ててその存在感を主張している。

それを上空に向けて投げて、危険が無さそうな場所まで行かせてから四散させる。

子供達は初めて見た大魔法に感激していて、チサもその魔法に驚いていた。


「どうだ?少しは安心出来そうか?」

「うん、でも気を付けてね。」


チサの震えは止まっていたので、幾らかは安心させられた様だが、それでも心配はしている様だった。

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