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うっかり女神に邪神討伐頼まれた  作者: 神楽坂 佑
1章 異世界転生
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223話 油断大敵

「やれやれ、酒の為とはいえ面倒だね。」


ハイヌが欠伸をしながら言う。

冒険者ギルドの中から裏手に設けられている訓練場に移動して来た。

ここならば魔法道具の効果で死ぬ事が無いので全力で戦える。


「手抜きせずに頼むぞ。」

「分かってるよ。それじゃあ早速始めようか、誰でもいいから掛かって来な。」


ハイヌは奴隷達に向けて手招きしている。

既にSランク冒険者に稽古を付けてもらう事は奴隷達に話しているのだが、突然の事に皆驚き緊張していた。

だが人生を通してSランクの冒険者と戦える機会なんてもう無いかもしれないと、辞退する者はいなくてやる気になってくれた。


「俺から行かせてもらう。」


一番目に名乗り出たのは二十代後半くらいの人間の男である。

櫓とは違って服の上からでも分かるくらい、がっちりとした筋肉を付けている。

奴隷商店で渡された紙によると、近接戦闘を得意としている様で、怪力と言う一時的に自分の力を急激に上げるスキルを持っている。

背中には得物である巨大な両手斧を背負っていて、スキルとの相性も良さそうだ。


(ハイヌの対人戦は初めて見るから楽しみだな。)


一緒に依頼を受けた時に魔物と戦う姿は見たが、短剣を一閃するだけで全て終わってしまった。

底の見えないSランク冒険者の実力を少しでも感じられれば、自分にとっても良い影響になる。


「いつでもいいよ。」

「行くぞ!」


両手斧を構えて真正面から突っ込んで行く。

振りかぶってハイヌに叩き付ける直前、身体全体が淡い光に包まれたのでスキルを発動した様だ。

両手斧も魔装されており、いきなり全力の一撃を叩き込もうとしたのだろう。

ハイヌはそれを見ても避ける素振りを見せず、余裕な態度で待ち構えている。


「ふん!」


振り下ろされた両手斧により爆音が辺りに響き渡る。

しかしハイヌには届いていない。

身体に当たる直前にハイヌが()()()()()()()()()()()()()()()()によって防がれてしまったのだ。

幾ら両手斧に力を入れても凍ってしまったかの様に、ピクリとも短剣を動かせない。


「攻撃が直線的過ぎるし、威力に頼りきりで一つ一つの攻撃動作が拙いね。それに対処された後の隙も大きいから、対策を考えておいた方がいいよ。」


そう言って短剣で両手斧を弾き上げる。

怪力のスキルは発動中なのだが、純粋に力で押し負けてしまう。

万歳した様な状態になり、ガラ空きの胴体に短剣での突きを受けて後方に大きく吹き飛ばされる。

魔法道具の効果で死に至る攻撃は意識を刈り取る攻撃に変えられるので、男はそのまま気を失う。


「さあ、どんどん行こうか。」


ハイヌは奴隷達に向き直り次の相手を待つ。

圧倒的な力の差に驚愕していたが、それでも次々にハイヌに挑んでいき、カナタを残して一人残らず気絶させられていった。


「ご主人様、行って参ります。」

「ああ、頑張れよ。」


カナタは一礼してハイヌの方に歩いて行く。

得物は長槍であり、槍術士のスキルとの相性も抜群だ。


「宜しくお願い致します。」


カナタは油断無く長槍を構える。


「お!この中じゃ一番強そうだね。いつでもいいよ。」


ハイヌも先程までの奴隷達とは実力が違うと分かったらしく、最初から短剣を構えている。


「我が魔力を糧とし、我が槍に疾風の加護を与えたまえ。颯の舞!」


カナタは風魔法を使って長槍を強化し、渦巻く風を纏って攻撃力や速さが上がる。

直後地面にヒビを入れながら踏み抜き距離を一気に間合いまで詰める。

獣人の身体能力の高さと身体強化のスキルが合わさり、とんでもない速度になっている。

カナタは自分の間合いにハイヌを捉えると、長槍の連続突きを繰り出す。


「おお、早いね。」


しかしハイヌは余裕そうに槍の穂先を全て短剣で寸分狂わず受け止めると言う神業をやってのける。


「くっ!」


このままやってもハイヌには届かないと判断して、体制を立て直そうと長槍を横薙ぎに振るって後退させようとする。

だがハイヌはその攻撃を屈んで躱して前に出る。


「長槍は近付かれると弱いから注意した方がいいよ。でも練度はかなり高いから今後も頑張ってね。」


ハイヌは短剣を一閃して終わらせようとする。

だがそれに反応して、長槍の柄を短剣の攻撃に合わせて防御しようとするカナタ。

ギリギリ間に合って受け止める事に成功するが、ハイヌの攻撃を受け止められた安心感で動きが止まってしまった。


「反撃まで出来たら完璧だったね。」


先程までとは比べ物にならない早さでカナタの背後に回り込み手刀で意識を刈り取る。

結果的に負けてしまったがハイヌの攻撃を受け止める事に成功したのは凄い事だ。

ハイヌ自身もカナタの戦闘能力は高く評価していた。


「さあて、メインディッシュといこうか。」


ハイヌは不敵な笑みを浮かべて櫓の方を見た。

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