221話 掘り出し奴隷
ミーシャ達と別れた後、ミズナは宿に戻り櫓は奴隷商店を訪れていた。
劣化ボックスリングを売却して纏まったお金を手に入れたので、ドランや子供達を安全に城塞都市ロジックの拠点まで連れて行く為の護衛となる奴隷を購入しにきたのだ。
ミネスタの街には何軒か奴隷商店があるのだが、一番信用出来る店を冒険者ギルドで聞いてその店にやってきた。
櫓の調査の魔眼は犯罪奴隷か普通の奴隷かを見分ける事が出来るし、そもそも犯罪を犯したかどうかは奴隷の首輪を見れば分かる。
犯罪を犯した者の奴隷の首輪には赤い印が付けられているからだ。
そして基本的に犯罪を犯して奴隷落ちした者を櫓は購入していない。
目の届かないところで犯罪をされても自分で対処が出来無いからだ。
そしてもう一つ重要なのが違法奴隷を扱っていないかである。
エルフが良い例だが、無理矢理奴隷にしようとする者達がいるがそれは普通に犯罪行為だ。
バレてしまえば逆に自分達が奴隷落ちする事もあり得る。
しかし違法奴隷と普通の奴隷を見分ける手段というものが無い。
櫓の調査の魔眼ですら見分ける事は出来無い。
なので周りの評判を聞いて良心的な奴隷商店かを判断するしか方法が無いのだ。
「ここか、確かに高そうだ。」
冒険者ギルドで聞いた店なのだが、信用出来る代わりに奴隷商店の中でも高級店なのだと言っていた。
店の外装からも高そうな雰囲気は伝わってくる。
そして店の周りの掃除をしている奴隷達がいるのだが、どの奴隷も清潔感あふれる格好だ。
高級店と言うだけあって商品の品質はしっかり保たれている様だ。
櫓が店に入ろうとする時も一斉に頭を下げて迎えてくれて、かなり厳しく教え込まれたのだろう。
「あら?随分と若いお客さんね、いらっしゃい。」
店に入ると身なりの良い若い女性が声を掛けてきた。
奴隷の首輪は付けていないので、従業員なのだろう。
「若いと何か問題あるのか?」
「別に無いわよ、お金さえきちんと支払ってくれたらね。」
そう言ってソファーを進められる。
中に置かれている物一つ一つも相当根が張りそうな物ばかりで、外装同様金が掛けられていて高級店だと言う感じが凄く伝わってくる。
「どんな奴隷をお求めかしら?」
「戦闘に向いている奴がいい。犯罪奴隷は無しだ。」
「何人くらい買っていくつもりなの?」
「そうだな・・、十人くらいか。」
冒険者も雇う予定なので、そのくらいいれば護衛には十分だろうと考えた。
「一つ聞いておきたいのだけど、うちが高級店と言うのは知っているわよね?普通の奴隷商店よりも値段は高いけど払えるのかしら?」
櫓は冒険者であり平民だ。
見た目もこの世界の屈強な者達と比べれば、弱そうに見えてしまう部類である。
なのでお金を沢山持っている様には全く見えない。
高級店である自分の店で十人もの奴隷を買えるだけの資産を持っていないのではないかと思われたのだ。
「多分大丈夫だろう。それより奴隷を見せて欲しいんだが?」
「分かったわ、それと先に言っておくけど即金でしか売らないわよ。」
店員は櫓を残して奥の扉に消えた。
少しすると二十人程の男女を引き連れて戻ってくる。
全員普段から丁重に扱われている事が分かり、ネオンと出会った時の様な見た目の者はいない。
女性の割合が多いが、奴隷は男性よりも需要があるのと若い櫓には性奴隷としても使えるからと店員に思われた結果だ。
「取り敢えず戦闘向けの子達を連れて来たわ。全員の資料はこれよ。」
渡された紙には調査の魔眼で視れる様な奴隷達のステータスと金額が書き記されている。
スキルや魔法は突出して強いものは無いが、汎用性の高いものが多い。
奴隷商店に来てからも訓練はされている様で、直ぐにでも戦闘が出来そうな者達ばかりだ。
「ふむ、流石高級店と言うだけあって高いな。」
「値引き交渉は受け付け無いわよ。どう?払えそうかしら?」
一番安い者でも金貨十枚で、一番上はオークション並みの三十五枚と言う高額だ。
それも全て戦闘力を考えて付けられた値段なので、見た目やスキルや魔法を考えると妥当だと言えそうだ。
(一人別格が居るな。)
資料に書かれている金貨三十五枚の値段を付けられている女性である。
名前 カナタ
種族 獣人
年齢 十八歳
スキル 槍術士 身体強化 全攻撃耐性Lv一
魔法 風魔法
状態 奴隷(主人 ネフェリア)
他の奴隷達はスキルと魔法合わせて二つといったところを四つも合わせて持っている。
見た目からは犬の獣人と言う事しか分からないが、頭一つ抜けた実力を持っていそうだ。
(この獣人を買うのは確定だな。後は値段が高い順に買っていけば実力も高い順となるだろう。)
無事送り届けてもらう為であれば妥協はしない。
合計で白金貨二枚を超えてしまう程の高額になってしまい、劣化ボックスリングを売った分では足りないが、蓄えがあるので問題無い。
「なら、値段が高い者から十人買わせてもらう。」
「え?」
女性の店員は一瞬何を言われているのか分からなかった。
櫓が想像よりも高い値段に人数の削減を悩んでいると思ったのに、全く違う反応が返って来たからだ。
櫓が自分で計算して白金貨と金貨をテーブルに置くと慌てて手続きをしてくれたのだった。
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