40話 フレンディア公爵家当主
お嬢様との戦いの翌日、いつも通り依頼でも受けようとギルドに行くとアリーネから三日後の九時頃にギルドに来て欲しいと言われた。
アリーネが伝えて欲しいとリンネにお願いされたらしい。
お嬢様は昨日の戦闘の疲れで、まだ自由に動けないらしいので日にちをあけたらしい。
ちなみに櫓の身体に異常は全くないため普段と変わらない量の依頼を受け、午後はネオンと別れ自由行動といういつもの流れで三日間を過ごす。
そして三日後ギルドに行くと外には豪華な馬車が止まっており、中にはリンネが待っていた。
「櫓様、ネオン様、お待ちしていました。こちらの都合に合わせていただきありがとうございます。」
綺麗な騎士礼と共に言ってくる。
「気にしなくていいよ、それよりさっさと向かおうぜ?」
「はい、それでは表に出ましょう。」
リンネに付いて行き来るときに見た豪華な馬車に案内される。
「どうぞお乗りください、屋敷までは歩くと少し遠いので馬車で向かいます。」
「こんな高そうな馬車に私が乗ってもいいんでしょうか?」
「まだそんな事気にしてたのか、乗れって言ってるんだからいいだろ。」
ネオンの背中を押して馬車に詰め込む。
リンネは御者台の御者の隣に座るため馬車の中は櫓とネオンの二人だけである。
高そうな馬車だけあって揺れはほとんど無く快適である。
櫓は馬車の内装や窓から見える街並みなどを堪能して楽しんでいたが、ネオンはこんないい馬車に乗ったことなど無かったので緊張で景色を楽しむ余裕などなかった。
十分ほど走った頃、前方に大きな屋敷が見えてくる。
屋敷の敷地に入り馬車が止まり、扉をリンネが開けてくれる。
「お疲れ様でした、屋敷に到着いたしました。」
「意外と早かったな、ってかでかい屋敷だな。」
「私たちが泊まってる宿の何十個分でしょうか・・・。」
「それではお嬢様の所までご案内いたしますので付いてきてください。」
そう言って二人を伴って屋敷の中に入る。
屋敷の中にはメイドや執事が沢山いる。
その中には少数ではあるが獣人もいる。
(貴族の中には獣人差別が酷い者も多いと聞いていたが、ここはそうでもないってことか?お嬢様のリンネに対する対応も普通だったしな。)
そんな事を考えていると案内していたリンネが扉の前で立ち止まる。
「こちらの部屋でお嬢様がお待ちです。お嬢様よろしいでしょうか?」
リンネがノックすると、中からどうぞと声が返ってくる。
中に入るとお嬢様がソファーに座りお茶を飲んでいた。
「お待ちしておりましたわ、お二人ともお掛けになってください。」
お嬢様に勧められるがままに櫓とネオンはお嬢様の向かいのソファーに座る。
リンネはお嬢様の後ろに移動し待機している。
「まずはフレンディア公爵家の屋敷にようこそいらっしゃいました。とりあえずお茶でも飲みながら話しましょう。」
部屋に控えていたメイドが、櫓とネオンの前にお茶を用意してくれる。
「それでは早速私に勝った際の報酬についてですが、先程乗られた馬車を渡したいと考えておりますがいかがですか?」
「あんな立派そうなの貰っていいのか?」
「構いませんわ、そういう約束なのですから。その様子ですと乗った際に不都合などはなかった様ですわね。」
「そうだな、特に揺れが少ないのがいい、長旅をするからな。」
「それならば取り敢えず報酬の件についての話は終わりですわ。そしてもう一つ別件がありますの。」
お茶を飲みながらお嬢様が切り出してくる。
(来たか、面倒事の予感。)
櫓が視線で先を促すとお嬢様は壁にかけてある時計を確認している。
「話をする前にもう一人呼びたい人がいるのですが構わないでしょうか?これからする話に関わってくる事なので。」
「ああ、構わないぞ。」
「リンネ、悪いけど呼んできてもらえる?少し早いけど多分そろそろ終わる頃だと思うから。」
「わかりました、少々お待ち下さい。」
リンネは騎士礼をして部屋を出ていく。
お茶を飲みながら先日の戦いの事に関して雑談していると、部屋の扉がノックされ、入るぞと男の声が聞こえてくる。
扉を開けがたいのいい男とリンネが入ってくる。
「櫓さん、リンネさん、こちらは私のお父様ですわ。」
お嬢様が立ち上がり二人に紹介してくれる。
櫓とネオンも立ち上がり自己紹介する。
「初めまして、東城櫓と言います。」
「櫓様の奴隷のネオンです。」
「あー、あんまり堅苦しいのは嫌いだからそんなに気を使わなくていいぞ。俺はフレンディア公爵家当主のロア・フレンディアだ、よろしくな。」
そう言って櫓だけでなくネオンにも握手を求めてくる。
(この公爵家の人は獣人や奴隷差別がないのか、貴族としてはだいぶ好印象だな。と言うか親子揃って貴族らしくないって感じか。接しやすくてこちらとしては助かるけど、まあ少しくらいの面倒事くらいなら引き受けてやるか。)
そんな事を考えつつロアに勧められ再びソファーに座り直した。
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