22話 ネオンも強くなってます
あまりにも櫓があっさり倒してしまったので、マークは呆然としていた。
今までも櫓のようにランクアップ試験を受けBランクに挑む者もいた。
その大半はクリアできないものばかりだったが、そんな中でも魔物を倒しきる者や、倒しきることはできなくてもBランクとしてやっていけると判断される者もいた。
しかし今回の様な一方的な戦いをする者をマークは見たことがなかったため、あっけにとられたのもしかたなかった。
マークが何も言ってこなかったので櫓が話しかける。
「試験官どうだ?Bランクとしてやっていけそうか?」
「・・・あぁ、問題なくクリアだ。」
自分でもこの結果でクリアできないことはないだろうと思いつつも、試験官から聞けて満足する。
「すごいです!さすが櫓様です!おめでとうございます!」
「ありがとよ、まあネオンも気張らず頑張れ。」
「はい、櫓様に続きますよ!」
櫓の勝利が嬉しかったのか、興奮気味でネオンが喜んでいる。
ネオンを落ち着かせつつ、観戦スペースに移動する。
「まさかここまで圧倒するとは正直驚いたぞ。見るからにまだ余裕がありそうだな。BランクどころかAランクでもやっていけそうだ。」
「でもAランクのランクアップ試験はないんだろ?なら後は地道にあげるさ。」
試験官とそんな話をしているとマークが今度はネオンに話しかける。
「さて次はおまえの番だな。どのランクを受ける?」
「先程聞けなかったのですがDランクはどの様な魔物なのでしょうか?」
「Dランクはリザードマン一体との戦闘となる。」
「リザードマンですか、戦ったことはないですが・・・うーん。」
ネオンはリザードマンと戦闘を行ったことがないため、悩んでいた。それを言うならホブゴブリンとの戦闘もないのだが、少し体格が大きく少し強くなったゴブリンという感じなので、ネオンはEランクならば余裕だろうと考えていた。
そして櫓もDランクの相手を聞いて考え事をしていた。
(リザードマンってDランクなのか、あの魔王の住処で結構倒したけど、さくさく倒せるからもっとランクが低いかと思ってたな〜。)
櫓はリザードマンを簡単に倒していたのでそう思っているが、本来はそんなに簡単なわけではない。
そして櫓がそんなことを考えていると、ネオンは櫓に相談してくる。
「櫓様、Dランク私の実力でどう思いますか?」
「いけるんじゃないか?Eランクなら間違いないがDランクも問題ないだろう、ネオンの実力は毎日上がっていってるしな。」
「ありがとうございます。ではマークさんDランクの試験をお願いします。」
「わかった。」
マークは櫓の時と同じく再び魔法陣を書いていく。
ネオンも戦闘の準備を行うため広場の真ん中に向かう。
「それでは試験を始める。我が魔力を糧とし我の呼びかけに応え我が敵を打て、来たれリザードマン。」
マークが詠唱を行うと魔法陣から剣を持った一体のリザードマンが現れる。
ネオンが持っているものと同じロングソードだ。
召喚されたと同時にネオンに襲いかかってくる。
「ギャギャアア。」
「はあぁ。」
リザードマンの剣と打ち合い様子を見る。
(リザードマンはLv一とはいえ斬撃耐性を持っている、ネオンの剣はどの程度通用するか。てかネオンってスキル持ってるよな?そういえば一度も使ったところを見たことないけどなんで使わないんだ?まあ理由があるかもしれないし話してくれるのを待つか。)
櫓はネオンと出会ってから一度もスキルを使っているところを見たことがなかったので疑問に思った。
そんなことを考えている間も剣での打ち合いが続いていく。
リザードマンは時折鋭く尖った爪や牙などでも攻撃してくるがネオンはうまく捌いていた。
「落ち着いて対処すれば初めての敵でも問題なさそうですね。」
ネオンは櫓に出会ってから剣の修行をつけてもらっている。
並みの冒険者の剣技とは比べものにならない実力をいつも観ているネオンにとっては、魔法や体術ならともかくリザードマンの剣技についていくくらい余裕であった。
リザードマンの攻撃を弾き大きく仰け反らせ隙ができる。
ネオンは剣を引き戻し刺突の構えを取る。
「天剣四式・卯月!」
ネオンの放った突きはリザードマンの胸を貫いていた。
ネオンが剣を引き抜くと血を吐きながら倒れる。
(おおやるな〜、斬撃耐性があっても刺突じゃ関係ないか。てか短い間だったってのにかなり形になってるな。これからも教えるのが楽しくなりそうだ。)
櫓は弟子などいたことがなかったため、自分が鍛えているネオンが強くなっていることに喜んでいた。
「うむ、Dランクとして文句なしの結果だ。」
「ありがとうございます。」
試験官のマークからも合格をもらいお礼を言う。
嬉しそうに櫓の下に向かう。
「おつかれ、いい戦いだったぞ。」
「櫓様の顔に泥を塗らなくてよかったです。」
「そんなこと気にしなくていいのに。」
ネオンのホッとしたと言う感じに櫓は苦笑する。
マークも二人のもとにやってくる。
「二人とも文句なしの結果だ。ついてきてくれ。」
そう言ってマークの後についていきギルドの中の受付につくとアリーネに試験の結果を伝える。
結果を聞き終えるとアリーネからギルドカードを出す様に言われる。
少しするとギルドカードが戻され櫓のカードにはBランクの表記が、ネオンのカードにはDランクの表記がされていた。
「これで今日から櫓さんはBランク、ネオンさんはDランクになります。依頼もそれぞれのランクの一つ上まで受けられますが、パーティで受ける場合は一番下の方の一つ上までとなります。」
「わかった。」
「そしてこちらの袋が試験前に報告された依頼の報酬です、ご確認ください。」
袋の中を見てみると大量の銅貨と少しの銀貨が入っている。
「さらに売却になると言われていた素材の買取額ですが銀貨二十三枚となりますがいかがでしょうか?」
「それで構わない。」
「ありがとうございます、ではこちらの袋をどうぞ。」
「たしかに、ではこれで失礼する。」
銀貨の入った袋を受け取り礼を言ってギルドを後にする。
一応あまり他人に見られない方がいいかもとギルドを出てからボックスリングに金が入った袋をしまう。
そしてギルドを出るとネオンはもちろんのこと、櫓も嬉しかったのか二人でハイタッチをして喜び合う。
初依頼からのランクアップ試験を無事こなして、最初から中々の稼ぎとなり嬉しげに宿に戻った。
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