218話 スキルを与える魔法道具
「ミズナ、そっちの四人を無力化しながら戦えるか?」
現在ミズナは四人の騎士を水球で捕らえて動きを封じている状態だ。
だがテトルポート伯爵であるミーシャの周りには騎士が続々と増えて来ている。
「大丈夫・・・。」
しかしミズナにとっては片手間の作業に等しいので、特に戦いの支障にはならない。
「なら少し頭数を減らしておくか。」
櫓は威圧のスキルを発動する。
このスキルは使用者の魔力量が相手より多ければ多い程、相手の恐怖心を刺激して戦意を挫いて大多数を無力化する事が出来るので、こう言う状況で非常に役に立つ。
威圧のスキルによりミーシャと両隣に居た二人の騎士以外の全ての騎士がバタバタと地面に倒れ伏す。
「な、何が起こったの!?」
いきなり数の優位性を失ったミーシャが驚き戸惑っている。
騎士二人も急に倒れた仲間の騎士達を見て驚いている様だ。
「おそらく何かのスキルでしょう。」
「ミーシャ様、お気をつけ下さい。」
二人の騎士がミーシャを櫓から隠す様に前に出る。
威圧は全員に使ったので、残った三人は他の者達よりも魔力量が多かったのだろう。
騎士の一人がまたスキルでやられてしまう前にと突っ込んで来る。
その騎士の相手は何も言わなくてもミズナがしてくれた。
櫓には他にやらなくてはならない事があるのだ。
(ぱっと見渡しても、周りにはいないか。)
櫓は調査の魔眼を使い周りに傀儡子のスキルを持つ者がいないか探していた。
このまま騎士を全て無力化しても、ミーシャの操り人形のスキルをどうにか出来無ければ意味が無いのだ。
「隙あり!」
もう一人の騎士が自分達から視線を逸らして周りを見ている櫓に斬り掛かる。
櫓の威圧が効かなかっただけあって、練度もそれなりに高い。
だがミズナはその動きを見逃さ無い。
「水城壁・・・!」
しかし騎士の渾身の一撃もミズナの鉄壁の水の壁の前では無力に等しい。
櫓の攻撃でさえも受け止める事の出来る水の壁なのだ、普通の騎士の攻撃が通る筈も無く剣は受け止められて、櫓に届く事は無い。
櫓はミズナが相手してくれるだろうと思っていたので、防御も何もせず任せきりだ。
(さてどうする。俺にはスキルを無力化したり取り除いたりする手段が無い。)
前に出会ったタコ型の魔物の様な能力も無ければ、無効化する事の出来る魔法道具も持っていない。
操り人形のスキルをどうにか出来無ければ、ミーシャはずっと操られたままだ。
(だがこんなデメリットしかないスキル、他のスキルと扱いが違う可能性はある。)
スキルを手に入れる手段は幾つかある。
生まれながらに持っていたり、危機的状況に陥った時に手に入る事もあれば、ダンジョンで手に入る恩恵の宝玉を使って得る事もある。
しかしスキルとは基本的に使用者にメリットがある物だ。
自然と手に入る中でデメリットしかないスキルを櫓は今迄見た事がないし、恩恵の宝玉でわざわざ使えないスキルを取ったりはしないだろう。
なので櫓は別の可能性を考えていた。
これは前にスキルに関して調べた時の話だが、スキルを与えるスキルや一時的にスキルを得られる魔法道具もあると分かった。
(傀儡子のスキルが操り人形のスキルを他人に与える事が出来るという可能性は薄いだろう。)
もしもそんな事が可能であれば、傀儡子のスキルを持った者達のせいでこの世界は滅茶苦茶になってしまう。
一方的に与えて操れるのであれば、ハイヌの様なSランクの強者でも自分の思うがままになってしまう。
(そうすると、魔法道具の線が一番あり得るか。)
櫓はミーシャの身に付けている物を一つ一つ調査の魔眼で視て調べていく。
伯爵家の当主と言うだけあって、豪華な服だけでなく様々な魔法道具を身に付けている。
(あった!)
櫓は操り人形のスキルの原因である魔法道具を見つけた。
それはミーシャが両足首に付けていたアンクレットだった。
傀儡のアンクレット 両足に装備している者は、操り人形のスキルを得る。
片方だけの装備や損壊してる物を身に付けている場合は、スキルを得る事は出来無い。
「あれを壊せばいいって事だな。」
ミーシャの近くに居た騎士は、ミズナが相手をしてくれているので無防備な状態だ。
櫓は今のうちにとミーシャに走って近付いたが、その速度に反応して隠し持っていた短杖を取り出して櫓に向けてくる。
「我が魔力を糧に・・。」
ミーシャは攻撃する為に詠唱し始めたが、その時には既に櫓は目の前まで来ていた。
「遅い。」
反応は出来たが詠唱時間で間に合わず、櫓はミーシャの右足のアンクレットを掴み、魔装した手の握力だけでヒビ割れさせる事が出来た。
少しの損壊でも効果を失ったらしく、ミーシャは糸の切れた人形の様にガクリと前のめりに倒れてきたので、櫓は優しく受け止めてあげた。
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