39話 異世界は面倒事の嵐
極雷砲が目眩し程度になればいいと思っていた櫓は、極雷砲を放ちながら前に魔人を倒した魔法の詠唱を開始していた。
「我が魔力を糧とし、立ち塞がる敵に、三条の雷となって、大いなる自然の力を示せ。天召・三雷!」
魔法を詠唱し終えると空に出来た雷雲からシルヴィー目掛けて三条の雷が降り注ぐ。
極雷砲の処理に魔法を使用していたシルヴィーは櫓の魔法の対応に遅れてしまった。
辛うじて障壁の魔眼を使い頭上に障壁を展開できたが、魔人を一発で葬る威力を防ぐことはできず直ぐに割れて直撃を浴びてしまう。
「くううああああっ・・・。」
シルヴィーは咄嗟に魔装で全身を覆ったためなんとか意識を失わずに済んだ。
それでもダメージはかなり受けてしまい片膝をついて激しく息を乱していた。
「ハァハァッ・・・ハァハァハァ。」
「おいおいこれで倒れないとか化け物か?」
「ハァハァ、まだ・・・やれますわ・・・っ!」
魔装した時にかなりの魔力を失ったため、体力の限界と共に魔力切れ一歩手前でいつ倒れてもおかしくなかったが、気力だけで櫓に槍を構え特攻する。
しかし既に限界のシルヴィーの攻撃は先程までの切れはなく櫓は難なく躱す。
「お嬢様楽しかったぜ、でもこれで終わりだ。」
櫓はシルヴィーの背中に回り込み手を触れ雷帝のスキルを発動させ雷を流す。
「っあ!」
シルヴィーは前のめりに倒れ意識を失った。
訓練場の使用により意識を刈り取られたのだ。
リンネはまさか自分の主人が負けるとは思っておらず心底驚いていた。
それでも負けてしまった主人を介護しなければとシルヴィーの元に駆け寄って抱き起こし膝枕している。
「審判、俺の勝ちでいいな?」
「は、はい。もちろんです。」
「勝敗は着いたしもう今日は帰っていいのか?」
「はい、後日またご連絡させていただきますのでその時はよろしくお願いします。」
「わかった。」
リンネとのやり取りを終えネオンの元に向かう。
ネオンは櫓が負けるとは全く思っていなかったが、それでも勝ったのが嬉しいのか満面の笑みで出迎えてくれる。
「櫓様お疲れ様です!」
「ありがとよ、しかし疲れた疲れた。」
「お嬢様強かったですね。」
「ああ、今まで戦った中では一番強かったかな。」
「私も早く追いつけるように頑張らなければ!」
「程々にな、それより腹減ったから何か食いに行かないか?」
「わかりました、ギルドの酒場で食べますか?」
「いつも同じってのもな、行ったことない店にでも行ってみようぜ。」
二人はギルドの酒場で食事することが多かったため、少し飽きていたのだ。
ギルドにはもう用がないので外に出ようとするとアリーネに呼び止められた。
「ちょっとちょっと二人とも。」
「ん?何か用か?」
「用か?じゃないでしょ、シルヴィー様との勝負どうなったの?聞かせてよ!」
「腹減ってるから飯食いに行くんだまた今度な。」
「私も行くから食べながら聞かせてよ。」
「アリーネさん仕事はいいんですか?まだ十四時くらいですけど。」
「ちょっとバタバタしてて今から昼休憩なんだよね!」
「はぁ、全く仕方ないな。」
「やった!」
どうせ話聞きたいと言うのを口実に奢らせようとしてるんだろうと分かっていたが、櫓もアリーネに聞きたいことがあったので同行を許可する。
少し高そうな店を選び適当に料理を注文して、食べながら先程の話をする。
櫓は食べるのに集中していたので主にネオンが熱く語っていた。
「お嬢様も強かったですけど、櫓様はどんな攻撃にもしっかり対応して、余裕で勝ったんですよ!」
「へえ、やっぱ櫓君って強いのね。」
「当然ですよ、櫓様は誰にも負けません!」
「Bランク帯の実力じゃないもんな櫓君。」
「Aランクに上がってもいいのではないですか?」
「Aランクからはギルドの上層部の決定がなきゃ上げれないのよね。実力だけで見れば間違いなくAランク以上なんだけどね。」
「残念ですね。」
二人が話している間にある程度食事を終えた櫓が、アリーネに聴きたかったことを質問する。
「お嬢様って冒険者としてギルドに登録してるんだろ?ランクはどのくらいなんだ?」
「はぁ、あのね櫓君私は受付嬢なんだよ?他人の情報を簡単に漏らすと思うの?たとえ調べれば直ぐにわかるようなことでもね。」
「この店ってさ結構高いんだよな〜、受付嬢の給料だときついんじゃないかな〜?」
「シルヴィー様は一年くらい前にAランクになったわね。それから暫くは依頼とか受けてないけど、ロジック周辺に強い魔物とか出た時に率先して狩ってくれるから助かってるのよね。」
「おい受付嬢それでいいのか。」
自分とあれだけ戦うことができたのだ、Aランクだろうとは予想できていたが、一応聞いておきたかった。
「ちなみに俺と戦うことに固執していた理由って何か知ってるか?」
「わかんないわね、でも後日教えてくれるんでしょ?その時でいいじゃない。」
「気になってたから聞いてみただけだよ。」
「あ、でも何回かこういうことはあったわね。」
「こういうことって?」
「シルヴィー様が強そうな冒険者と戦うことよ。その全部シルヴィー様が余裕で勝っちゃってたから、負けたのは初めてじゃないかしら?」
「なるほどなるほど面倒事の予感しかしないな。」
その後ある程度雑談して解散し、今日は激しく戦って疲れたため宿に戻り休んだ。
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