202話 作ってて良かった万能薬
仕事納めしてきました〜。
年末の地獄の様な忙しさからの正月連休!
この連休をどんなに待ち侘びたか〜、と思っていたら休日出勤してくれないか?と上司に言われてしまいました。
勿論申し訳なさそうな顔で忙しい(趣味の小説投稿、ゲーム、アニメ、実況動画閲覧)からと断る選択肢しかありません!
久々の長期連休楽しまなくては(使命感)!!!
「この部屋か?」
チサが部屋の前まで櫓を引っ張って止まったので確認する。
「うん。お兄ちゃん入って。」
チサに促されて櫓は扉を開く。
何故か部屋に居た子供達の殆どが黙って櫓に目を向けていた。
「これは・・。」
扉の先の部屋の中には、一人のドワーフがベッドに寝かされていた。
ここに来た時に見た子供達の様に痩せ衰えていて、更に両手共に肘から先が切断されかの様に無くなっていた。
「ドラン爺ちゃんって言うの。」
「生きているのか?」
「生きていますよ。腕を失って少し経ったある日からずっと寝たきりの状態ですが。」
カルトが櫓達に近付いて来ながら言う。
「もうパンはいいのか?」
「はい、もうお腹いっぱいです。それよりここからは俺が説明しますよ。」
カルトはチサの代わりにドランについて教えてくれた。
今子供達が暮らしているこの建物も元々はドランが一人で暮らしていた家だった。
ドランはカルト達の様な身寄りの無い子供を住まわせて面倒を見てくれていた。
鍛治師としての腕も高く、大勢の子供達の食費も賄える程稼げていたのだ。
しかしある日ドランの作った一級品の武具が金持ちの貴族に目を付けられてしまった。
剣も持った事の無い様な女であり、コレクションとして飾りたいと言う理由で全て買い占めようとした。
だがドランは飾り物を作っているわけでは無い。
全身全霊を込めて作り上げた自慢の武具は、全て相応しい者に売って実戦で使って欲しいと思っていた。
なので幾ら金を積まれようと貴族に売るつもりは無く、一応は気を使って丁寧に断ったのだ。
しかし武具の購入を拒否された貴族は怒り、私に売らないならその手は要らないなと護衛にドランの腕を切り落とさせた。
命は取られずに済んだが、両腕が無くなってしまった為、鍛治師としての人生は終わってしまった。
暫くの間は腕を失う前に作った武具を売り払った金で食いつなげてこれたのだが、一つまた一つと減っていき、遂には売れる物が無くなってしまった。
それからは生き延びる為に皆で色々しなくてはならなかったらしい。
「それからは櫓さんも知る通りです。」
「なるほどな。」
目の前で力無く横たわっているドランがいなければ、子供達は死んでいたか奴隷狩りにあっていただろう。
子供達も感謝しており、寝たきりのドランを一人にしない為にこの建物に住み着いているのだ。
「お兄ちゃん、ドラン爺ちゃんの事助けられない?」
チサは悲しそうな表情で櫓に言う。
自分の事を助けてくれたドランに元気になってほしいのだ。
「安心しろチサ、俺に任せておけ。」
「ほ、ほんと!?」
チサは驚きと喜びが混ざった様な顔で聞き返してくる。
「ドランさんの事助けられるんですか!?」
カルトも櫓がそこら辺にいる普通の人間とは少し違うと分かってきていたが、この状態をなんとか出来るとは思いもしなかった。
「ああ、だがその前に一つ聞かせろカルト。ドランが寝たきりになっている理由を知っているか?」
「え?腕を切られてショックだったからではないんですか?」
櫓はその回答を聞いて普通はそう考えるだろうなと思った。
だがドランが寝たきりになっている理由は他にあった。
櫓は調査の魔眼をドランに使ったので気付いたが、状態の欄に子供達と同じ飢餓や衰弱の他に永眠と記載されているのを見つけた。
「永眠と言う状態異常に掛かっているな。誰にやられたかは知らないが、このままでは死ぬまで目覚める事が無いだろう。」
「っ!?じゃあ今迄寝たきりだったのはそれのせいって事ですか。」
「そう言う事だな。まあそんな状態異常は関係無い、纏めて治してやる。」
不安そうにしているチサの頭を撫でてやり、ドランが寝ているベッドの横に立つ。
そしてボックスリングから一つのポーションを取り出した。
ティアーナの森で大量に貰った貴重な素材を使って作った万能薬だ。
作るのに多く魔力を消費するので、未だ数個しか作れていなかったが、早速作った甲斐があった。
万能薬をドランの口に少し流し込み、腕を失った両肘に残りを振り掛ける。
万能薬を掛けられたドランは淡く光っている。
肘の先に光り輝く腕の形が出来上がっていき、光が収まるとドワーフ特有のごつい腕が元通りになっていた。
「す、すごい!?」
「きれい!」
カルトとチサは目の前で起こっている奇跡の様な現象に釘付けだ。
念の為に調査の魔眼で確認すると、状態の欄にあった永眠だけで無く飢餓や衰弱もついでに無くなっていた。
「よし、これで治ったから問題は無いだろう。」
「お兄ちゃんありがとう!」
チサは櫓の足に抱き付いて喜んでいる。
「俺からもお礼を言わせて下さい。何から何まで本当にありがとうございます。正に櫓さんは俺達の救世主です!」
「騒がしいな。」
カルトが櫓にお礼を言っているとベッドの方から低くて重みのある声が聞こえてきた。
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