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うっかり女神に邪神討伐頼まれた  作者: 神楽坂 佑
1章 異世界転生
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192話 エルフの森を出発

「お世話になりました。」


他の者達は別れを済ませて馬車に乗り込んでいるので、全員を代表して櫓が挨拶をする。

一日遅れとなったがティアーナの森を出発するのだ。

村の入り口には村中のエルフ達が見送りに集まってくれている。


「櫓様、助けていただいたのに大したおもてなしもお返しも出来ず申し訳ありません。」


フェリンが深く頭を下げながら言ってくる。

だがフェリンを助けた謝礼ならば、村長の稽古や世界樹の素材等様々な形でしっかりと受け取っている。


「充分貰った方だ。それよりも今度は同じ目に合わない様に気を付けろよ。」


フェリンがまた捕まってしまっても櫓がまた助けられるとは限ら無い。


「はい、皆に散々言われましたから。」


フェリンは苦笑気味に答える。

櫓がティアーナの森に来てから一週間以上が経過しているが、フェリンは毎日の様にエルフ達に言われ続けていた。

それだけ皆が心配したのだから仕方が無く、フェリンもその事は分かっているので、素直にお説教されていた。


「リュンよ、わしから学んだ事を活かして仲間達の力となってくるんじゃぞ。」

「はい、お師匠様!今迄お世話になりました、行って参ります。」


リュンは村長の言葉に頷き、深く頭を下げている。

エルフは剣技を扱わないので、まともに振るえる様になるまで相当な時間が掛かる。

リュンも村長に教わって剣の腕を磨いたが、その時間は数年どころでは無い。

今の自分が在るのは村長のお陰だと熱く語ってくれた時もあったので、本当に感謝している事が伝わってくる。


「リュンを頼むぞ。」


長い間見てきたのでリュンの強さは理解しているだろうが、共に過ごしてきた時間が長いので、村長にとってはフェリンと同じく孫の様な感じなのだろう。


「任せて下さい。」

「うむ、これは今後必要な時に使ってくれ。」


村長が言うとフェリンの父母が歩み出て来て、大きな袋を一つずつ差し出してきた。


「袋には世界樹の枝と葉が入っている。魔法道具作成には有用な素材となるだろうから全部持って行ってくれ。」

「村の皆が自分の家で余っている分を集めてくれたのよ。足りなくなったらまた寄ってね。」


差し出された袋の中身は前にもらった量よりも遥かに多い。

世界一のポーションである万能薬ですら量産して余りある。

他にも無色の剣を何本か作りたいと思っていたので、その素材として枝や葉は必要になってくる為、幾らあっても有り難かった。


「助かります、有り難く頂きます。」


櫓は受け取ってボックスリングに仕舞う。


「また紗蔽達とは戦う事になるじゃろうが、気を付けてのう。」


村長はその事について少しだけ心配していた。


「ちなみに村長は、あの黒尽くめの連中について何か知ってたりしますか?」


情報が少なく正体がいまいち分からないが言動から魔王側の人間と言う事は間違い無さそうである。


「基本的にここから出ないからのう。だが二百年程前に武者修行として人間の世界を見て回った時に、魔王を崇拝する人間もいると言う噂を聞いた事はあったのじゃ。所詮噂話で人間が敵である魔王に付くわけが無いと思っておったんじゃがな。」


村長はその噂を聞いても軽く流してしまった。

実際長い事人間の世界で生活していたが、その様な存在に出会った事は無かったのだ。

櫓も紗蔽達を見る前であれば村長と同じ様に思っただろう。


「紗蔽達を見ているとしっくり来ますね。」


魔王を崇め、人間やエルフ達に平気で武器を向ける。

さらに一人一人が厄介な力を持っているので、気を付けなければ櫓達でさえ危険である。

今回はエルフの魔人が敵に居た事もあるが、村長が居なければかなり危うかったのだ。

今後の旅で戦う事になった場合は、自分達で対処しなければならない。


「お主ならば大抵の敵と渡り合えると分かっているが油断は禁物じゃぞ。」

「はい、村長達も気を付けて下さい。と言っても結界が有ればどうとでもなりそうですけど。」


櫓が作った結界を展開する魔法道具は、既に村の中心部である世界樹の堀の近くにある建物に設置されている。

現在も結界はティアーナの森を覆う様に展開されており、数名のエルフが交代しながら魔力の補充をするそうだ。

結界を展開してから早速魔物に攻撃を受けたそうだが、魔力の消費は微々たるものだったので、魔物に突破される事は無さそうだ。


「次にまた奴らが現れたらわしが倒しておこう。」


被害は少なかったが魔人となる為にエルフが一人殺されているのだ。

村長は間に合わず救えなかった事を悔やんでいた。

再び紗蔽達が姿を表せば容赦しないだろう。


「はい、よろしくお願いします。では皆さん長い間お世話になりました。」


櫓はもう一度頭を下げながら言って御者台に乗り込む。

ゆっくり森の外を目指して歩き出した馬車にエルフ達は見えなくなるまでずっと手を振っていた。

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