37話 このお嬢様・・・強い
訓練場の使用許可はもらえた様ですぐにリンネが戻ってくる。
幸い訓練場は誰も使っていない様だった。
「そういえばお嬢様はこの街ではかなり有名なんだろ?なんで周りの連中は騒がないんだ?」
櫓は会ってからずっと疑問に思っていたことを聞いた。
日中のギルドで朝晩より人が少ないとはいえ一定数はいる。
そんな中で誰もシルヴィーを見て騒ぐ者がいないのだ。
「私が身につけている魔法道具の効果ですわね。この認識操作のネックレスを使用すると自分が指定した人物以外の方から気に留められにくくなりますの。なので人とすれ違っても誰かとすれ違ったかな程度にしか思われませんの。それとギルドに勤めている方には使っておりませんけど、私が冒険者として登録してあるので冒険者として扱ってくれているのでしょう。」
そう言って身につけているネックレスを手に取って教えてくれる。
「へぇ便利だな、て言うか冒険者だったんだな。」
「あまり活動はしておりませんけどね。それとこの道具も戦闘中に敵に対して使っても効果が薄かったり、そもそも私を探している方には効きにくかったりと、欠点もあるのですけどね。」
そんな雑談をしながら歩いていくと訓練場に着く。
「そう言えば訓練場の使用は理解しておりますか?」
「魔法道具のおかげで死ぬことはないってやつか?」
「そうですわね。もう少し詳しく説明するならば、死ぬ可能性がありそうな攻撃は全て外傷ダメージが無くなり意識のみを刈り取る攻撃という形に改変されます。そして外傷ダメージの蓄積により死の危険がある場合は、回復魔法が自動的に発動されます。なので本気で戦っても問題ありませんの。」
「そこまで詳しくは聞いてなかったな。まあ死の危険が無いってのは加減の心配をしなくていいからありがたいな。」
「では準備が出来ましたら訓練場の方へお願いしますわ。」
「了解。」
そこで二手に分かれて相手と離れる。
お嬢様の方をチラッと見ると身につけているアクセサリーなどを外してリンネに預けている。
「さてお嬢様はどのくらい強いかな。」
「アリーネさんに前聞いたのですが、この街を納めているフレンディア公爵家の方々は皆戦闘訓練をしっかりと受けているらしいですよ。」
「それは期待できそうだな、じゃ行ってくる。」
「櫓様なら絶対勝てます、頑張ってください!」
ネオンが手をぶんぶん振って応援しているのを軽く手をあげて応える。
訓練場の中に入って待機していると、お嬢様の方も準備を終えたのか訓練場の中に入ってくる。
「では僭越ながら私が審判をさせていただきます。双方用意はよろしいでしょうか?」
「いいぞ。」
「問題ありませんわ。」
「それではどちらかが気絶または降参で終了とさせていただきます。では始め!」
掛け声がかかると同時に櫓は走り出しながら神眼を発動させ調査の魔眼を使う。
いつでも使う機会はあったが、一応対戦が始まるまではと律儀に待っていた。
調査の魔眼により相手の情報が入ってくる。
名前 シルヴィー・フレンディア
種族 人間
年齢 十八歳
スキル 障壁の魔眼 槍術士
状態 平常
(厄介だな、防御系の魔眼か。それと槍術士ってのは女神のとこで見た槍使いの上位互換のスキルだな。身につけている魔法道具も色々バフ的な役割をしてて厄介だ。)
情報を得ながらシルヴィーとの距離を詰める。
ボックスリングから霊刀を取り出し真正面から斬りかかる。
シルヴィーも櫓のボックスリングとは見た目が違うが、空間魔法が付与されている腕輪から槍を取り出し櫓の剣を受け止める。
「流石に鋭い一撃ですわね。」
「軽々受け止めといてよく言うな。」
軽口を叩きながらも剣と槍での打ち合いは続き、二人の攻撃速度は増していく。
観戦しているネオンは、実力不足から二人の攻撃が段々と見えなくなってきていた。
リンネはシルヴィーとも訓練をすることがあるため、二人の攻撃は見えているが、櫓がシルヴィーの実力に遅れることなく対等に打ち合っていることに驚いていた。
(これは想像以上だ、かなり強いな。ただの武器での打ち合いだが、俺が戦った魔王や魔人と同じかそれ以上か。)
攻撃の手を少しでも緩めるとシルヴィーから容赦のない突きが飛んでくる。
それを剣でいなしながら仕掛ける。
「天剣二式・如月!」
連撃技がシルヴィーを襲うが冷静に槍で受けていた。
如月は六連撃の剣技なのだが五連撃目を受け切った時に僅かに槍が弾かれ次の攻撃を受けるのに間に合わなくなる。
櫓はもらったと心の中で思ったが、それでもシルヴィーの表情に変化はない。
櫓の六連撃目がシルヴィーに向かうがその途中で何かに阻まれた様に止まる。
そして何かが砕けた様な音が辺りに響く。
(ヤバい、魔眼の効果か!)
動きが止まった櫓に対して、体制を立て直したシルヴィーが槍を構え直し鋭い一撃を放ってくる。
櫓を貫くかという場所まで槍が迫り、次の瞬間櫓の姿が消える。
そして少し離れたところに現れる。
雷帝のスキルで雷を足に纏わせ瞬間移動したかの様な爆速のバックステップで回避したのだ。
「危ねえ、間一髪だった。」
「今のを避けられるとは思いませんでしたわ。まだまだ楽しませてくれそうですわね。」
シルヴィーは不適な笑みを浮かべながらそう言った。
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