185話 不穏な成り行き
結局時間が無く、金曜の投稿は出来ませんでした⤵︎
「だああ、もう無理だ。」
櫓はそう言って地面に仰向けに倒れ込む。
魔力切れ寸前で体力も殆ど残っていないのだ。
「なんじゃ情け無いのう。ならば次はシルヴィーじゃ。」
「よろしくお願いしますわ。」
村長に指名されたシルヴィーは双槍を構えて対峙する。
リュンを仲間にしてから一週間程が経ち、櫓達は毎日村長に厳しい稽古を付けてもらっていた。
明日辺りにティアーナの森を旅立とうと元々話していたので、近づくにつれてより一層厳しい稽古となっている。
そしてこの一週間紗蔽が見つけた村長の突破口を活かしての戦い方をしてきてはいるのだが、個人で良い勝負を出来るまでに至った者はいない。
それでも複数人でギリギリ相手になるくらいには成長したので、村長と出会った時に比べれば全員かなり強くなっている。
「水はいるか?」
倒れている櫓の横にリュンが来て、冷たい水の入った竹筒を差し出してくる。
「もらおう。」
受け取って喉を潤していく。
「全員かなり仕上がってきているな。」
周りに扱かれて倒れ伏している仲間達の姿を見ながらリュンが言う。
仲間になったその日に他の者達にもリュンの事を紹介して、皆暖かく仲間に迎え入れてくれた。
それから一緒に稽古を受けてきた事もありすっかり打ち解けている。
「これなら大体の敵に遅れを取る事は無いだろう。」
「魔王にもか?」
「そればかりは相手によるな。」
リュンに旅の目的については話している。
危険な旅には違い無いので、内緒にしたまま連れて行くわけにはいかない。
邪神の事について話して、それでも仲間になってリュンは付いて行く事を選んでくれたのだ。
しかしエルフであるリュンは、魔王と言う存在と出会った事が無く、邪神と言う存在については聞いた事も無かった。
それでも脅威についてはしっかりと話し聞かせたので、相手にする事の危険性については理解してくれただろう。
「そうか、ならば今は未来の話より己を鍛える事が大事そうだな。」
そう言って肩で息をしてふらついているシルヴィーと交代する為に歩いて行った。
リュンは仲間になってから櫓以外の者達とも戦い、上には上が居る事を知って更に稽古に真剣に打ち込んでいた。
魔王の事も自分よりも格上の相手と認識して、更なる強さを求めているのだ。
(未来の話か。)
櫓は辺りを見回しながら心の中で呟く。
戦っている者、倒れている者、休んでいる者と様々だが、その中に紗蔽の姿が無い。
共に稽古を受ける時もあるが、殆どは別行動だ。
紗蔽はパーティーメンバーでは無いので強制する事も出来無い。
リュンと同じく高い実力を買って仲間にならないかと持ち掛けてみたのだが、家族を養わなくてはならないからと断られてしまった。
それらについては特におかしいと思える事は無く、櫓も気にしていなかったのだが、ある事をきっかけに紗蔽の事が気になって仕方が無くなっていた。
「今日も紗蔽さんは来ていないですね。」
考え事をしていると汗を拭いながら近付いて来たネオンが言う。
「どうせ昼間から酒でも飲んでいるんだろう。」
紗蔽が酒好きなのは皆知っているので、そう返しておく。
櫓が気になっている事を他の皆は知らないので、ネオンもそうだろうなと笑いながら隣に腰を下ろして休憩している。
ネオンが稽古の事についてあれこれ話し掛けてきていたが、頭に全く入って来ず空返事になっていた。
(良い仲間になれるかと思っていたんだがな。もし本当の事なら俺は・・。)
櫓はそう遠く無い未来の事を思い浮かべながら、一人覚悟を決めていた。
【数日前】
「櫓様、少しよろしいですか?」
部屋で寛いでいる所をフェリンがノックして言ってきた。
「どうかしたか?」
「お祖父様が用があるので来て欲しいと。」
櫓はフェリンに言われるがまま付いて行く。
「ん?外なのか?」
村長の部屋には向かわず、家の外に向かうフェリン。
「はい、此方です。」
櫓は黙ってフェリンの後を付いて行き、少し歩くと一つのツリーハウスが見えてくる。
フェリンが扉を開けて中に入って行きその後に続く。
中に家具の類は一切無く、櫓とフェリン以外に人も居ない。
呼び出した村長は何処に居るのかと訊ねようとすると、どこに隠れていたのか殺気も無く突然現れた村長に後ろを取られて首元に剣を突き付けられた。
周りには他にも隠れていたエルフ達が現れ、弓や杖を櫓に向けている。
フェリンだけは申し訳無さそうな顔で櫓の方を見ている。
「どういう事ですか村長?」
櫓は何故この様な扱いを受けているのか分からず、取り敢えず発言権が一番強いであろう村長に話し掛ける。
相手に村長が居る段階で勝つ事は出来無いので、戦うという選択肢は無い。
無理に抵抗したりはせず、話し合いで解決する為に両手を上げて抵抗の意思が無い事を示した。
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