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うっかり女神に邪神討伐頼まれた  作者: 神楽坂 佑
1章 異世界転生
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179話 自由自在の便利魔法

「ん・・。」


金属がぶつかり合う甲高い音が響き渡る中、気絶していた櫓が目を覚ます。


「あ、櫓様大丈夫ですか?」


ネオンが櫓の顔を覗き込みながら言う。

先にやられていたネオンは、櫓よりも早く回復したので看病してくれていたのだ。


「ああ、寝心地も良い。」


櫓は地面に横たわっているが、頭だけはネオンのふかふか尻尾枕の上だ。

この尻尾枕が普通の枕と比べても遥かに寝心地が良く、ネオンはミズナの枕にされる事が多々ある。


「それなら良かったです。中々櫓様が目覚めないので、今日は起きないのかと思いました。」

「そんなに寝てたのか?」

「櫓様は二時間くらい寝てましたよ。シルヴィー様は直ぐ起きてましたけど。」


訓練場に稽古で誤って死なない為に設置されている魔法道具は、死の危険性がある攻撃を相手の意識を刈り取る攻撃に変換すると言う効果がある。

そして強い攻撃を受ければ、それだけ気絶している時間も長くなってしまうのだ。

櫓の場合はそれに加えて魔力を使い果たしてしまった事も影響して、ある程度活動する為の魔力が回復するまで目覚めなかったのだ。


「魔力を使い果たしたのは初めてだが頭がかなり痛いな。」


これが戦闘中に魔力切れを起こしてはいけない理由だ。

魔力が枯渇してしまうと、その瞬間に意識を失うと言った事は無いが酷い頭痛が押し寄せてくる。

生死を掛けた戦闘中であれば、その頭痛に耐えながら敵の相手をするのは難しい。

なので戦いを生業としている者達は、しっかり自分の魔力量を把握しておくのが前提条件なのだ。


「そうですよね、それを見越してだと思いますけど村長さんが目を覚ましたら飲ませてあげろとポーションを渡してくれましたよ。」


ネオンが薄い青色をした液体が入っている試験管の様な容器を差し出してくる。

ポーションは魔力の塊の様な物なので、魔力を回復させるには一番効果的だ。

勿論櫓もボックスリングの中にポーションは大量に入っているが、取り出す為には微量ながら魔力を消費しなくてはならず、今はそれすら辛い状態だ。


「助かる。」


櫓はネオンから容器を受け取り、寝たまま液体を口に流し込んでいく。

身体に振り掛けても効果はあるが、ポーションは飲んだ方がより効果を発揮する。

ポーション特有の不味さに耐えて飲み干すと、魔力が湧き上がってくるのを感じ、頭痛が治まり気怠さも吹き飛んだ。


「ふぅ、良く効くポーションだな。」

「村長さんと稽古する方は魔力切れになりやすいらしく、魔力回復に特化したポーションらしいですよ。」


ネオンが苦笑しながら教えてくれる。

その理由は身をもって経験したのでよく分かる。

村長の様な化け物の相手をするには、常に全力を出していなければ瞬殺されてしまい稽古にもならない。

魔力量が多く魔法に優れているエルフ達でも長くは持たないだろう。


「今戦っているのは紗蔽か。」


長刀でリーチを活かした戦いを繰り広げている。

病み上がりなのを村長も理解しているらしく、櫓達よりも軽い打ち合い稽古をしている。


「紗蔽さんは二回目ですね。櫓様が気絶している間に何人かローテーションして戦ってるので。」

「村長休憩無しでやってるのか!?」

「ポーションを一回飲みましたけど、休憩は取っていないですね。」


ポーションは疲労、怪我、失った魔力等様々な事に対して効果を発揮してくれる。

しかしどんなに回復させても長い間戦っていれば集中力は落ちてくる筈だ。

しかし現在戦っている村長は、笑みを浮かべながら剣を振るっており、怪我らしい怪我も一切見えない。


「本物の化け物か。」

「あの強さは凄まじいですよね。一人で勝つのは絶対無理ですよ。」

「確かにスキルや魔法が全く効かないのが辛すぎる。その仕掛けは分かったのか?」


櫓は魔法による物だろうと考えていたが、詠唱する素振りを見なかったので確信してはいない。


「うーん、魔法だとは思うんですけどね。そう言えば唯一紗蔽さんの攻撃だけ無効化を失敗して、村長さんが慌てて回避してましたよ。」

「紗蔽の攻撃だけ?」


疑問になって思い返してみるが、前に紗蔽の事を調査の魔眼で視た時に珍しくスキルを一つも持っていなかった事を思い出した。

なので攻撃となれば長刀か魔法によるものと言う事になる。


「見てれば分かりますけど、凄かったですよ。」


ネオンの言う通り二人の戦っている様子を見守る事にした。

剣と長刀が何度もぶつかり合い、甲高い音が響き渡る。

戦いの中でお互いの距離が少し開いたタイミングで紗蔽の口元が動き、魔法の詠唱を始めた。

それを見た村長は楽しそうに突っ込んで行き剣を振るう。

しかしその剣は紗蔽までは届かない。

受け止めたのは長刀でもなく、紗蔽の()だった。

紗蔽の影から突き出た黒い剣状の影が村長の剣を受け止めたのだ。


「紗蔽さんが影魔法と言ってました。自分の影を自在に操る事が出来る便利な魔法らしいですよ。」

「確かに面白そうだが、あれは村長に無効化されなかったのか?」


紗蔽の使っている物も魔法なので、今迄通りだとするならば掻き消されてしまう。


「一度に大量の影の剣で村長さんを攻撃していた時なんですけど、無効化されたのも何本かありましたが、途中で村長さんが慌てて回避したのを見ると無効化出来るのにも限度があるんじゃないですか?」

「なるほど、複数の同時攻撃が攻略の鍵か。」


目の前で四肢に向けて伸ばされる影の剣を後ろに下がって躱す村長を見て納得した。

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