177話 不思議な力
「どう言う状況なんだ?」
倒れている三人は致命傷こそ無いがボロボロだ。
疲れ切って動け無い様に見える。
「櫓さん達も来ましたか。」
「紗蔽さん、目が覚めたのね良かったわ。」
「もう出歩いても宜しいんですの?」
戸惑っていると此方に歩いて来た藍達が話し掛けてくる。
先にユスギ達を探しに行った三人は既に見つけていた。
「お主達も妾を助けてくれた者達か、感謝なのじゃ。お陰ですっかり良くなっておる。」
「ネオン達は村長と戦ってたのか?」
「はい、私達が見つけた時には既に戦闘中でした。村長さんにボロボロにされて怒りが大分収まりました。」
そう言う藍は爽やかな顔をしている。
気持ちは分かるが巻き込まれたネオンは可哀想だなと櫓は思ってしまった。
「稽古ってレベルじゃ無いくらい三人共本気出してたけど、あの村長さん凄いわよ。」
聞けばネオンは狐火をミズナは水帝のスキルをそれぞれ使い、ユスギはエンチャントの魔法まで使用しての戦いをしていたらしい。
しかし村長は余裕で躱し上手く受け流し、攻撃は全く当たらず、逆に村長が仕掛ける攻撃は尽く当たって行き今の光景に至る。
「お祖父様はティアーナの森一番の実力者です。そう簡単には倒せ無いと思いますよ。」
そう言うフェリンは少し嬉しそうだ。
三人同時に相手して余裕で勝ってしまうのだから、疑う余地も無い。
「おっ!次はお主達が相手をするか?」
村長が櫓達に気付いて話し掛けてくる。
誰が行くのかと目配せしていると藍が一歩前に出た。
「そうですね、せっかくの機会ですからお手合わせ願います。メリー行ってみませんか?」
「ううう、緊張するわね。よろしくお願いします。」
ユスギが既に倒されているので、メリーと藍が二人で挑む様だ。
元々ユスギが入るまでは二人で希望の光と言うパーティーで活動していたのだから、コンビネーションは言う事無い。
「ならば早速始めるとするか。」
村長は倒れている三人に手を向けると、三人の身体が浮き上がってゆっくり移動して行き、戦う為のスペースが作られる。
「この訓練場は魔法道具によって死ぬ事は無いからどんな攻撃を使ってきてもよいぞ。手加減は無しの方が良い稽古になるからのう。」
人間の街の訓練場等に用いられている魔法道具がここでも使われている様だ。
メリーと藍はいつもの前衛後衛の役割分担をした位置でそれぞれ構えた。
「いつでも構わんぞ。」
「では早速仕掛けさせてもらいます。」
藍は懐から取り出したナイフを四本真横に投擲する。
これは初めて櫓達と戦った時にも使った攻撃手段で、ナイフに括り付けられた見えにくい極細のワイヤーによって、遠心力でナイフを振り回して攻撃する事が出来る。
ワイヤーの切れ味も良いので、うっかり触ってしまえば血を流してしまうだろう。
「遠距離攻撃はエルフの専売特許じゃて。」
村長が杖に魔力を込めると風の斬撃がナイフに向かって行き全て弾き落としてしまう。
しかしその隙に村長との距離を詰めて接近した藍が小太刀を振るって攻撃を仕掛ける。
魔法使いに対しては接近戦が有効なので、基本に忠実な戦い方だ。
「むっ!」
村長は藍の接近に気付いていたので回避しようとしたが身体が動かない。
向かってくる藍の延長線上に居たメリーと目が合ってしまい、呪縛の魔眼の効果を受けてしまったのだ。
「もらいました。」
瞬刀の二つ名に恥じ無い鋭い一閃が村長の首に叩き込まれる。
しかしそれはキイィィィンと言う金属音が鳴り、村長に当たる事は無かった。
「ほっほっほ、危なかったわい。」
村長は持っていた杖に仕込まれていた剣を抜き放ち、藍の小太刀を防いだのだ。
「嘘!?なんで!?」
メリーは自分のスキルが決まった筈なのに動けている村長に困惑している。
メリーと藍のコンビネーションは抜群で、呪縛の魔眼が発動してから小太刀が振るわれるまで一秒も経っていなかった。
それなりの魔力を使ったので最長の五秒とまではいかなくても、三秒くらいは止められるとメリーは思っていた。
「手の内はそう簡単には明かせんのう。」
村長はそのまま藍と切り結び徐々に押していく。
剣が仕込まれていた事からも遠距離だけでなく、近距離戦闘も自信があるのだろう。
「メリー、もう一度です!」
「分かってるわ!」
両手を突き出したメリーが詠唱を始める。
メリーが得意とする行動を制限する呪いは、呪縛の魔眼以外にも魔法や魔法道具を使った物等複数有るのだ。
詠唱が終わる前に村長が切り結んでいた藍を吹き飛ばすが、同時に魔法陣が村長の足元に浮かび上がる。
そして村長の身体が剣を振り抜いた状態で石像の様に固まってしまった。
「よし!」
「今度こそ!」
藍は再び固まった村長に近付こうとするが、パリイィィンと言う魔法陣が砕ける音で一瞬躊躇してしまった。
直後この戦い一の物凄い速さで村長が藍に接近して喉元に剣を突き付ける。
「惜しかったがこれで終わりじゃ。」
「ま、参りました。」
「ど、どうなってるのよおおおおお!?」
藍が負けを認めて降参し、メリーは自分の呪い魔法が一切通じ無い事に困惑して頭を抱えていた。
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