175話 静かなる怒り
櫓達は紗蔽に万能薬を使って複数の呪いを解くために一旦村長と別れた。
フェリンに自分の居場所を伝えていたので、後で案内してもらえれば会える。
稽古をつけてほしいと言われたのが嬉しかったのか、村長はご機嫌で去って行った。
「泊まる場所まで提供してくれるとは、随分と心を許してくれているみたいだな。」
「エルフの姫を助けたんだから当然よ。ティアーナの森で櫓君達に感謝していないエルフはいないと思うわよ。」
メリーも同じエルフだからティアーナの森のエルフ達の気持ちが分かるのだろう。
「皆さん大人しく待っているでしょうか?」
「藍が見てくれてるんだし大丈夫よ。」
櫓達は馬車に戻って扉を開ける。
「どう言う状態だこれは?」
紗蔽が寝かせられているソファベッドの近くの椅子に紐で何重にも縛られている藍が項垂れている。
「あっ、お帰りなさい皆さん。これ解いてもらってもいいですか?」
「大丈夫?何があったの?」
そう言ってメリーが藍を縛り付けている紐を解く。
かなりキツく何重にも縛られているので、解くだけでも一苦労だ。
「待っているのが退屈だとユスギが言い出しまして、ミズナさんもその言葉に賛成したんです。私とネオンさんは勝手な行動はダメだと止めたのですが、私は縛られネオンさんは拉致されました。」
藍が拘束された段階で勝ち目の無くなったネオンは、されるがままに引っ張られて行ってしまったらしい。
「つまり今はエルフの村を観光しているって事か。」
「そうなりますね、申し訳ありませんフェリンさん、勝手な行動をとらせてしまい。」
藍が悪い訳でも無いのにフェリンに頭を下げて謝罪している。
真面目な藍は止められなかった自分に多少なりとも罪悪感を抱いているのだろう。
「いえいえ、村の人達には櫓様達の事が伝わっていますので心配ありませんから。」
フロッドの部下達に先に戻って村の人達に櫓達の事を言ってもらった甲斐があった。
そうしていなければトラブルは避けられなかっただろう。
「まあネオンが一応付いているんだし、危険な事はしないだろう。それよりも紗蔽の治療をさっさと済ましてしまおう。」
メリーの呪いのお陰で紗蔽に掛かっている呪いの進行は防げているが、それもその場しのぎでしか無い。
毎回大量の魔力を消費してやっと呪いの進行を抑えられているが、メリーはそれだけで一日の魔力を使い果たしてしまう程なのだ。
それでは戦闘面で役に立たなくなってしまい、いつまでもこの状態でいるわけにはいかない。
「使い方は普通のポーションと同じでよろしいんですの?」
「はい、呪い程度であれば振りかけるだけで充分だと思います。」
櫓はフェリンの言葉を聞いてボックスリングから取り出した木箱を開け、万能薬を紗蔽に振りかける。
ポーションは液体状ではあるが、厳密に言うと魔力の塊の様な物だ。
そしてポーションは人の治療に使う為に作り出された物であり、他の物に対して効果を発揮し無い。
なので衣服等の上から振り掛けたとしても染みる事は無く、通り抜けて身体に吸い込まれて行き効果を発揮するのだ。
万能薬を振り掛けた紗蔽の身体が淡く光り、少しすると収まった。
万能薬の効果で光ったのだろうと思い調査の魔眼で視てみる。
名前 紗蔽
種族 人間
年齢 二十歳
スキル なし
状態 なし
状態の欄にあった呪いは全て綺麗に消え去っていた。
そして呪いのせいで見るからに体調が悪そうだった紗蔽の顔も血色が良くなっている。
「呪いは全部消えているな。」
「良かったですわ、これで一安心ですわね。」
「それならば私はお灸を据える為に捕獲に行って来ます。」
藍は立ち上がり静かに言い放つ。
不当な扱いを受けて流石に怒っている様だ。
「あちゃー、こうなった藍は怖いから逆らわない方がいいわよ。」
メリーは経験済みなのか小声で櫓に耳打ちをする。
「メリー、シルヴィーさん手伝って頂けますか?」
静かだが迫力のある声に呼ばれた二人は従うしか無い。
「良いわよ、行きましょうか。」
「そうですわね、万が一にもエルフとの関係が悪化してしまっては困りますし。」
藍が馬車から出て行き、その後ろをメリーとシルヴィーが仕方無くと行った感じで付いて行った。
残された櫓とフェリンは雑談をしながら紗蔽が起きるのを待つ。
起きた時に突然知らない馬車に乗っており、知らない場所にいたら混乱してしまうだろうと判断した。
少しすると紗蔽が軽く身じろぎをして、目を覚まして起き上がる。
「目が覚めたか。」
「・・お主は誰じゃ?」
「俺は櫓と言う、こっちはフェリンだ。気を失う前の事覚えているか?」
「・・気を失う前の事・・。・・確か妾は黒服の者達と・・。」
紗蔽は寝起きで頭が働いていないらしく、思い出しながらポツリポツリと話して行く。
「やっぱりあの黒尽くめと戦っていたか。その時に受けた呪いで気を失ったんだ。」
櫓は紗蔽が気を失ってからの事について順番に話聞かせていった。
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